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歴代勇者、昇天する ―人間の大地への到達―

――そして、一月半に渡るソルスター自由連合軍の帰路の旅路は終わりを迎えた。

 闇の領域ノクティルから、光の領域セプタリアへとたどり着いたのである。

 魔族の支配域から、人の住む地と、彼らは帰ってきた。その光あふれる大地を前にしてカリナは感動に打ち震えながら言葉を吐いた。

 

「やっと帰ってきた――」


 エルリックも思わずカリナの肩を叩く。

 

「あぁ、ようやくだ」

「はい!」


 ミリアは冷静さを失わず報告する。


「カリナ、帰路途中に負傷者は出たけど、死亡者はほぼほぼ皆無よ」

「えっ? 本当?」


 カリナは損失を嫌う。無事に生還できたという事実にカリナはその顔をほころばせた。

 

「よかった! せっかく魔王を倒したのに帰り道で倒れた人が居たら流石に嫌だから」

「あなたならそう言うと思ったわ」

「コレもすべて、力を貸してくれた歴代英霊の皆様のおかげだわ」

 

 喜ぶカリナだったが、幸せだけではない。残酷な現実が待っていたのだ。その残酷な現実をソフィアが語る。

 

「その英霊の皆さんだけど、そろそろ限界のようよ?」


 ふるさとであるセプタリアの光の大地――、そこを前にして歴代勇者の英霊たちは、セプタリアを見渡す高台の際の崖の上に並んで佇んでいた。そこにソフィアに事実を告げられたカリナが慌てて駆けてくる。

 

「みなさん!」


 カリナの声に、黒い剣士のブレイズが振り向いた。

 

『来たな? カリナ』


 風魔導師のエアリスも振り向いた。

 

『カリナ、無事に帰還できたようで何よりだ』

「はい! 損失無く、全軍帰還できました」


 それは喜びの言葉だった。だが、もう一つの事実をカリナは気づいていた。

 

「天界にお還りになられるのですね」

『あぁ、頃合いだ』


 それには理由が有る。エアリスは語る。

 

『歴代竜皇の霊力が効力を発揮するのは、旧ドラゴン族の領地だったノクティルの領土内のみ。セプタリアには影響を及ぼせないそうだ』


 そしてレギオンブレイドの中のエリュシオが告げた。

 

『現世滞在のためのマナ(理力)が限界を迎えます。英霊諸衆の皆様方、ご帰還のご準備を』


 そう――、大ドラゴンの巨大な霊の恩恵が終わることで、英霊たちも帰還することになるのだ。だからこそだ――

 巨大なバトルアックスを抱えた髭面のドワーフの戦士が語る。


『せめて、ふるさとが見晴らせる場所を思ってな。ここに集まった』


 まだ少年といって差し支えないあどけない容姿の若い勇者が語る。


『ここは思い出の場所なんだ。朝日がさすときに、ここにたどり着けたのはかえって幸運だよ』


 腰にバスタードソードを帯びた、いかにも剣士風の麗女が語った。


『帰りの道中、諸国の方々との語らい合い、生前を思い出しました』


 全身総鎧の騎士勇者が語る。


『故郷の空に戦火の炎がない――、それが見れただけでも満足だ!』


 そして、風魔導師のエアリスはカリナに告げた。


『僕たちは天界へと還る。魔王との戦いがなくなれば、英霊召喚も行われなくなるだろう』


 さらにブレイズも告げる。


『それでいいのさ、死者は眠りにつくのが筋ってもんさ』


 その言葉に英霊たちはだれもが頷いた。悲しくもそれは世界の理なのだ。

 最後に、いにしえの魔導士風の姿の麗しき老女の勇者がカリナに語りかけた。


『勇者カリナよ――、これからの平和の訪れを見守るのは貴方の役目』

「はい――」

『あとは、頼みましたよ』

「おまかせを」


 そして、エリュシオは告げた。

 

『英霊諸衆の皆様方、天界へとご帰還となられます』


 ならばそれを送り出すのはカリナの役目だ。

 

『お名残惜しいとは存じますが、天界へとご帰還になられる時がやってまいりました。旅立ちのご準備をお願いいたします』


 エリュシオがそう告げると、カリナは聖剣を天空へと掲げた。そして、レギオンブレイドから光の柱が伸びて、その光の柱は広がり、巨大な門を生み出す。

 天界と地上をつなぐ、〝光の命の門〟である。

 570年前の女性剣士が叫ぶが告げる。

 

『それじゃ、参りましょう』

 

 ブレイズも告げた。


『達者でな! 勇者カリナ』


 そして、200柱の歴代の英霊たちは光の門をくぐっていき、最後の一人が門の向こうへと姿を消し、光の門は音もなく閉じた。

 こうして、一つの戦いは完全に終わりを告げた。

 カリナは大空を見上げてつぶやく。

 

「本当に、ありがとうございました」


 そののちレギオンブレイドを鞘に納めると、気持ちを引き締めて歩き出す。

 

「さぁ、参りましょう! 私たちの故郷の街へと!」

「はっ!」


 カリナはエルリックと共に、仲間たちのもとへと向ったのだった。

 


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