勇者の演説 ―八大諸国軍集結―
そして、そこに魔導通信兵が駆けつける。
「報告!」
「話しなさい!」
「はっ!」
ミリアの言葉に通信兵は地面に片膝を付き、うやうやしく述べ始める。
「八大国諸軍団、および十代種族兵軍! 作戦通り、本日未明に決戦地到着とのよし!」
その言葉にカリナが湧いた。
「来た!」
「いよいよね、カリナ!」
「えぇ!」
ソフィアの言葉にカリナは不敵な笑みを浮かべて告げた。
「諸軍団・諸兵軍に、想定通りにアルカナヴァンガードに同期して突撃と伝えなさい!」
「はっ!」
カリナのこの言葉は大軍団全てへと一斉に伝達される。そして――
「今こそ、ときは来たり!」
カリナは左腰からレギオンブレイドを抜刀した。
「アルカナヴァンガード! ソルスター自由連合軍! 現時刻を持って攻撃を開始する!」
その言葉にアルカナヴァンガード千数百名が一斉に踵を返し動きを揃える。
カリナは裂帛の気合いをもって、軍団員たちに告げる。戦いの経緯、倒すべき敵、守るべき世界――それらを言葉にして告げることで、皆の戦意を強力に鼓舞するのだ。
「このソルスター世界――、光の領域セプタリアは数千年にわたり、闇の領域ノクティスとの戦いに明け暮れてきた。
世界に魔王は現れ、闇の戦力を率いて戦いを起こす。それを時の勇者が立ち上がり、傷つき苦しみながらも、時の魔王を倒してつかの間の平和をもたらした。それが脈々と繰り返されてきた!
そして、今から300年前に現れたのが現世魔王ヴァルガリアス! 奴が、史上始めて魔族の完全統一を成し遂げたことで、勃発したのが今なお続く〝魔族大戦〟だ!」
カリナは左腰に下げている聖剣を抜刀し天に掲げた。
「だが! 我らにこそ天命あり! 魔族以外の種族に生存をみとめぬ現世魔王に鉄槌を下す時! 地上に生きるすべての命に平和と自由をもたらすのは紛れもなく我らだ!」
カリナの叫びが戦場に残響を残し、一瞬の静寂に吸い込まれていく。全ての戦力の担い手が固唾をのんでいた。
勇者カリナは今こそ、レギオンブレイドを魔王の軍勢めがけて振り下ろすと叫んだ。
「いざ! すべての命の自由を!」
「すべての命に自由を!」
カリナの声に全軍が轟き答えた。
カリナは胸に息を大きく吸い込むと、轟くように叫んだ。
「全軍! 吶喊!」
「おおおおぉぉぉぉぉっ!」
魔王城周辺領域にカリナ率いるソルスター自由連合軍の総兵数万人が様々な進軍路を突破し、この地に集った。
そして、カリナの号令のもとで一斉に突撃を開始した。無論、魔王城側も死にものぐるいで抵抗するだろう。
まさに、この魔王城の地に〝死山血河〟を築きながら……
「行くぞ!」
カリナは軍馬を駆り、戦場を駆け抜ける。その視線の先には魔王城がそびえたつ。
「ここまで――、ここまで戦いの日々を積み上げてきた! 多くの血を流し、戦友が倒れ、命が失われた! だがそれも今宵限り!」
その瞬間、眼前からランスを備えた魔族騎兵が突撃してくる。
「勇者カリナ覚悟ぉ!」
「舐めるなぁ!」
カリナは右手に握る聖剣レギオンブレイドを振るい、ランスを弾き返し馬上の魔族騎兵を鎧ごと斬り伏せた。
「我に続け! 魔王は私が討つ!」
「はっ!」
戦場を先頭を切ってカリナが駆け抜け、アルカナヴァンガードの全軍がその後に続いた。向かう先は魔王城ダークフォージ、その軍門に向けて突撃を開始する。
ここに歴史に残る、魔王城決戦は、ついに始まった。
カリナは全身の血が、魔王との決戦に向けて燃え上がるのを感じずには居られなかったのである。




