表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
親父が魔王で何が悪い!〜七光り転生した俺は、実家のコネと権力をフル活用して異世界最強のスローライフを謳歌する〜  作者: 小林一咲


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
17/20

ep.17

 魔王城の謁見の間は、かつてないほどの緊張感というよりは、もはや次元そのものが悲鳴を上げるような重圧に包まれていた。窓の外では、エカテリーナが植えた「永劫のラベンダー」の香りが漂っているはずだが、その芳香さえも、空から降りてきた巨大な黄金の門が放つ「威厳」によってかき消されている。

 空間を割って現れたのは、ユハトに敗北した「因果の執行者」たちのさらに上位に位置する存在、宇宙の理を司る最高機関の一人「因果の神判官」だった。

「ユハト・ガラム。貴様の存在は、この宇宙という巨大な演算機において、修復不可能な致命的バグと化した。親の権力を不正に利用し、神々の秩序を乱し、挙句の果てには魔女や勇者をニートの介護係に仕立て上げるとは、言語道断である」

 神判官は、白銀の法衣を纏い、背後には巨大な天秤を浮かせている。その声は城の石壁を震わせ、リナリアやアリアの動きを封じるほどの絶対的な強制力を伴っていた。

「……また因果の話? 最近、それ流行ってるの? 俺、さっきエカテリーナが作った特製の苔ベッドで、ようやく眠りにつこうとしてたところなんだけど」

 ユハトはソファーに横たわったまま、薄目を開けて神判官を眺めた。

「貴様の意志など聞いていない。我ら神判官の合議により、ユハト・ガラム。貴様の魂をこの宇宙のタイムラインから永久に削除し、すべての『コネ』を初期化することを決定した。抵抗は無意味だ。貴様の周囲にいる者たちも、バグの付随物として共に消去される」

 神判官が右手を上げると、天秤が激しく揺れ動き、城全体を包み込むような巨大な消去魔法陣が展開された。

 アリアは聖剣を抜こうとしたが、その力が吸い取られるように消えていく。リナリアも魔力を封じられ、歯噛みしながらユハトの前に立ちはだかるのが精一杯だった。

「……あー、もう。本当にしつこいな。リナリア、親父を呼んで。あとセラフィム、ルミナリス様に繋いで」

「ユハト様、申し訳ございません。この神判官の結界により、外部との通信が遮断されております……!」

「遮断? そんなの、俺の寝室にある『神魔共用Wi-Fi』なら関係ないでしょ。神様がメンテナンスしたばっかりなんだから」

 ユハトは枕元に置いてあった「インフラ管理用タブレット(神界・魔界共同開発モデル)」を手に取り、慣れた手つきでグループ通話を開始した。

「あ、もしもし親父? うん、今ちょっと変なのが来て、俺を消すとか言ってる。あと神様も入ってる? 繋がった。うん、なんか『宇宙のバグ』だってさ。俺のこと」

 次の瞬間、神判官が張っていた「絶対結界」が、内側から爆発するように霧散した。

 ホログラムどころではない。ユハトのタブレットを通じて、神界と魔界の「意志」が直接この場に具現化したのだ。

「誰だぁぁぁ! 我が息子の存在を否定する不届き者はぁぁぁ! 因果だと? 摂理だと? そんなものは我が拳一つで粉砕してくれるわ!」

 魔王ガラムの巨大な幻影が謁見の間に現れ、神判官を見下ろして咆哮する。同時に、空からは眩い光と共にルミナリスの声が降り注いだ。

「ちょっと! 私のユハトくんを削除するなんて、誰が許可したのよ! 彼がいなくなったら、誰が私の愚痴を聞いてくれるの!? 誰に最新の安眠BGMを聴かせればいいのよ! 因果の管理なんて後回しでいいから、今すぐその天秤を畳みなさい!」

 神判官は絶句した。

「……ば、馬鹿な。魔王と創世神が、一人の人間のためにこれほどまで露骨に介入してくるなど……。これはもはや、宇宙のルールそのものが私情によって汚染されている!」

「うるさいな。私情で何が悪いんだよ。俺のコネは、あんたたちの理屈よりもずっと根が深いんだ」

 ユハトは寝そべったまま、タブレットの画面を神判官に向けた。

「ほら、親父と神様が直接話したいって。あんた、自分の上司……というか、この世界のオーナーとスポンサーに文句があるなら、直接言いなよ」

 そこからは、宇宙規模の「圧迫面接」が始まった。

 魔王ガラムは物理的な破壊の恐怖を突きつけ、ルミナリスは神としての権限をフル活用して「神判官の予算と有給休暇の剥奪」をチラつかせた。

 宇宙の絶対者であるはずの神判官は、魔王の罵声と神の小言を同時に浴びせられ、次第にその威厳を失い、肩を落として小さくなっていった。

「……分かった、分かりました。ユハト・ガラムの存在を例外として認めます。ですので、どうか、私の神位を剥奪するのはお辞めください……。あと、魔王様、私の実家の次元を燃やすのも勘弁してください……」

 数時間に及ぶ「交渉」の結果、神判官は完全に戦意を喪失した。

「……あー、やっと終わった? じゃあ、神判官さん。あんた、責任取って俺の世話を手伝ってよ。因果を操れるなら、俺の周りの時間をちょうど良く調整して、常に『寝るのに最適な温度と暗さ』を維持できるだろ?」

「……えっ? 私が、そのような雑用を?」

「嫌なら、また親父と神様に繋ぐけど」

「……謹んでお引き受けいたします、ユハト様。今日より私、因果の神判官改め、ユハト様専用の『時空環境調整係』として、貴方の肩叩きと寝床の温度管理に邁進いたします……」

 かつて宇宙の秩序を守っていた神判官が、ついにユハトの「肩叩き係」としてコネの軍団に加わった瞬間だった。

 リナリアは感心したように頷き、アリアはもはや突っ込む気力もなく聖剣(栓抜き)を眺めている。エカテリーナは庭からその様子を見て、「あいつ、神様までパシリにしたわね」と笑っていた。

「……よし。神判官、さっそく右肩を三万年分くらいの熟練の技術で叩いて。ルミナリス様、工事の続き、よろしく。親父、壁の修理は魔王軍の経費で落としておいてね」

 ユハトは再び、完璧な静寂と、神判官の手による「因果レベルで調整された絶妙な指圧」の中で眠りに落ちた。

 敵対者は、戦う前にコネで丸め込む。

 それがユハトの提唱する、宇宙で最も効率的な生存戦略だった。

 因果の神判官という最強のセキュリティを得たことで、ユハトの安眠はもはや、宇宙の崩壊さえも寄せ付けない絶対の領域へと昇華されたのである。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ