罪(第五部)
日々は過ぎていった。
だが、状況は良くならなかった。
むしろ、悪くなる一方だった。
噂はもう小声では語られなかった。
本人の前で、平然と口にされるようになった。
「ほら、あの子が言ってた子だよ。」
「ミカリにつきまとってたらしいよ。」
「気持ち悪い…」
時には、子どもを迎えに来た母親たちのささやきも耳に入った。
「あの子じゃない?話に出てたの。」
「そうよ…問題児らしいわ。」
「かわいそうに、あの子…」
イツキは聞こえていないふりをした。
だが、その一つ一つの言葉が、心に突き刺さっていった。
校長は自分を信じてくれた。
それでも、何も変わらなかった。
子どもの世界では――
噂は、すぐに“真実”になる。
そして、誰も彼の言葉に耳を傾けようとはしなかった。
一方で――
ミカリは変わらず学校に通い続けていた。
時折、偶然に視線が重なることがあっても――
彼女は必ず目を逸らした。
噂を止めることはなかった。
誤解だったと伝えることもなかった。
彼が悪い人間ではないと、言うこともなかった。
そしてイツキにとって――
その沈黙は、どんな言葉よりも痛かった。
日々は、ゆっくりと過ぎていった。
そしてついに――
学年最後の日がやってきた。
小学校は終わりを迎えた。
生徒たちは喜び合い、
抱き合い、
中学生活への期待を語り合っていた。
だが、イツキにとって――
その日は決して“幸せな終わり”ではなかった。
ミカリは、別の町へ引っ越すことになっていた。
何人かのクラスメイトは、駅まで見送りに行くことにした。
イツキは行きたくなかった。
それでも――
結局、足を運んでいた。
きっと心のどこかで――
この物語に、終わりをつけたかったから。
駅に着くと、そこは別れの言葉で満ちていた。
「忘れないでね!」
「連絡してね!」
「元気でね!」
ミカリは笑顔で、一人一人に別れを告げていた。
まるで――
何もなかったかのように。
イツキは少し離れた場所から、それを見ていた。
ポケットに手を入れたまま、
体が重く感じた。
近づくことはできた。
何かを言うこともできた。
別れを告げることもできた。
それでも――
足は動かなかった。
怖かった。
また、あの視線を向けられるのが。
本当に、自分が彼女を苦しめていたと、確かめてしまうのが。
やがて、乗り物が到着した。
扉が開く。
最後の別れが交わされる。
ミカリは乗り込んだ。
そして、その直前――
一人の少女が走ってきた。
他の子よりも少し背が低く、
風に揺れる髪。
明るい雰囲気を持つ少女だった。
ミカリは笑顔で彼女を迎えた。
友達なのかもしれない。
イツキは遠くからその様子を見ていた。
その時――
少女がふと顔を上げた。
その視線が、イツキとぶつかった。
ほんの一瞬。
それでも――
彼にとっては、不思議な感覚だった。
少女の瞳は、透き通るような青。
その瞳は――
彼を見ていた。
軽蔑でもなく、
疑いでもなく、
ただ――
興味を持つように。
イツキはその場で動けなかった。
だが、一つだけ確かなことがあった。
その瞳は――
とても綺麗だった。
少女はもう一度だけ彼を見て――
ミカリと一緒に乗り物へと乗り込んだ。
扉が閉まる。
エンジンが動き出す。
乗り物は、ゆっくりと離れていった。
イツキは、それが見えなくなるまで見つめ続けた。
やがて、音も消え――
駅には、静けさだけが残った。
いつもこの物語を読んでくださって、本当にありがとうございます。
今、個人的な事情により、次の章を書くまでに少し時間がかかってしまいます。
楽しみに待っていてくださる方々には、申し訳ない気持ちでいっぱいです。
でも、この物語を諦めるつもりは、これっぽっちもありません。
むしろ、大切だからこそ――中途半端な形で届けたくないと思っています。
一つ一つの言葉に、想いを込めて。
登場人物たちの気持ちを、もっと丁寧に描けるように。
これまで以上に、自分のすべてを込めて書き続けていきます。
少しだけ、待っていてもらえたら嬉しいです。
そしてまた、この物語で会いましょう。
本当に、ありがとうございます。




