↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
60/71

第60話 教えられる男と教える女達・後編

 真っ黒な壁に上下四方囲まれ、一刀は肩で息をし始める。


 黒い箱の中に閉じ込められること、そして、黒い壁からは武器の気配がすること、それらによって精神的なプレッシャーを与えられているのは勿論だが、それ以上に何かあると一刀は目を凝らす。



「きゃっきゃっきゃ! へ……いけセンセーの影箱ブラックボックスは圧縮された魔力の壁であると同時に魔力を溶け込ませる影の性質も持ってるからねい。そして、強力な魔力の壁に大気中の魔素が吸い寄せられていく。キミたちの魔素も同じように僅かずつではあるけれど吸われていっているんだ」



 来迎の言葉でハッと一刀は自分の身体に意識を巡らせる。強烈な魔力を放つ黒い壁に対し気を張っていたが故の疲労感だと思っていたが、来迎の言う通り体力ではなく魔力がゆっくりと抜け出ていく感覚に気付く。その正体を理解した一刀が顔を下げたと同時に環奈が叫ぶ。



「みんな足元に魔力を集中して! 足元から吸われてる!」


「気付いたか。これが私の【オリジナル】の一つ。影箱ブラックボックスだ。魔力の壁を創造し相手を閉じ込める。と、同時に壁と設置している面から相手の魔力を、そして、箱の中にある大気中の魔力を奪っていき相手を無力化させる。さらに……」



 平家の言葉を待っていた一刀が見たのは黒と同化し姿を消す平家だった。


(影に潜るのは平家先生の得意技! だけど……この箱全体が影だとすれば……!)



「そう」



 ひやりと首筋に魔力の刃の感触がしたと同時に平家の声が耳元で聞こえ、一刀は身体を硬直させる。じっと自分を見つめる平家が、いた。一刀は死んでいた。もし、平家が本気で殺すつもりならば。この空間において、何をすれば勝てるのか一刀には見当もつかない。



「これが私の最大の武器。相手の目を奪い、どこからでも現れることが出来、一瞬で命を奪う。相手は何が起きたか分からないまま死を迎える。これが私の、影箱ブラックボックスだ」



 どぷんと音がし、黒い壁が地面に溶け、広がっていた影の沼が平家の足元に集約されていく。環奈たちはようやく解放された安堵と脱力感で地面に座り込む。一刀もまた膝をつき荒い息を整えようと何度も深呼吸を繰り返す。


 近藤の時以上に感じた圧倒的な力の差に一刀は震えた。だが、それは恐怖や不安だけではなかった。もし、自分がこの力を持てるようになれば……そんな希望の光が僅かに自分に差し込んでいるのを感じ目を細める。



「ふぅー……さて、【オリジナル】を体感してもらったわけだが、本気でオリジナルについて学ぶ気があるのならばもう少しお前達向けに話をしようと思う。というわけで、来迎先生、どうぞ」



 平家が手で促すと、来迎が嬉しそうにぴょんと飛び出す。



「はいはーい、それではねい! オリジナルについて説明するねい! オリジナルはさっきも言った通り、自分で自分の魔法を作ると言う事! コレによって、何がイイのか? ど思う、厳島クン!」



 びしっと来迎に指をさされた一刀。女子達が見つめる中で必死に答えを探し、口を開く。



「え、えと……自分が、したいことが、できる?」


「う~ん……まあ、ヨシ! 自分の職業やポジションに合わせた魔法が使えるということだねい! 例えば、段原チャンの【感覚強化】! 罠や敵を探したりするのに便利な魔法だけど、これを……」



 来迎が両手の指をパーと開く。ふと一刀は自分の身体に糸が絡みついたような感覚に襲われる。抵抗があるわけではなく自由に動かせる。だが、自分の意思が誰かに盗まれているように思えて汗が溢れてくる。



「今、分かりやすくやってみたけど、相手の動きを魔力で敏感に察知し予知能力のような動きが出来るっていう近距離での戦闘に特化した魔法も作れるってわけ。もし、段原チャンが将来地下格闘家になりたいのならこういう魔法を作るのもアリだし、こう……」



 来迎が指をくるりと回すと、文字通り糸が切れた操り人形のように倒れ込む一刀。だが、周りに無数の魔力が漂っていることに気付き慌てて顔を上げると、魔力で出来た無数の蜂が一刀たちの周りでじいっと見つめながらホバリングしている。



「こういう風に魔力の蜂を作り出し、広いエリアを偵察できるようにすれば、防犯会社や自衛隊から引っ張りだこかもねい」



 パチリ、と来迎が指を鳴らすと心地よい風が一刀たちの頬を撫で、来迎の元に戻っていく。



「ま、こんな風に自分なりのカスタマイズが出来るのが一つ。だけど、それ以上に重要なのは、発動速度、威力が段違いに上がると言う事」


「な、なんでですか!?」



 最も知りたかったことを聞き一刀は思わず大声で尋ねてしまう。来迎はそんな一刀を見て笑うとトレーニングルームの床を楽しそうにリズミカルに飛びはね踏むとくるりと振り返る。



「理由は単純明快。【オリジナル】は自分だけの魔法であり、目的だけに特化した魔法。すぐさま魔法を使うならコレって決めちゃうんだ。これだけで魔法の威力も速度も段違いに上がる」


「そ、そんな単純なことで……?」



 玖須美がぽろりと心中の声を溢すと来迎は目を大きく見開いてぐるりと玖須美を見て笑う。その言葉を待っていたと大好物を食べる前の子どものように目をランランと輝かせる。



「そんな単純なことだからこそ大切なのさ。何故魔法で詠唱があるのか。それはそうすることでイメージが固まるのさ。スポーツ選手がルーティーンをおこなってベストなバッティングが出来るように順序を踏むことでより正確で強い魔法を放つ! コミックの主人公が必殺技を口に出すのは何故か!? まあ、読者の為もあるだろうけど、ワタシは自分の為だとも考えるねい! 魔法少女や仮面ライダーが特定の行動をとるのは何故か!? 高めているからだよ! 自分のイメージを! マンガにある無詠唱魔法があまり推奨されない理由は分かるかな? 人間の思考やイメージなんて簡単に崩れ去るからさ。九十九里チャン、キミなら無詠唱も出来るはずだ。金属の球を作り出してもらえるかな、硬い鉄球をワタシにぶつけに来な」



 興奮のあまり鼻息を荒くする来迎に気おされながらも玖須美は目を閉じ、金属の球体を生み出し、目を見開き来迎に放とうとしたその瞬間。


「キンタ○ーキラキラ―金曜日ー!!!」


 来迎の嬉しそうな声がトレーニングルームに木霊する。

 そして、玖須美の生み出した鉄球は下品な金ぴかの球に変わり光を放ち始める。



「な……な……な……!」


「と、まあ、こういう風に相手の妨害によって簡単に邪魔できる。何か別の想像を差し込めば簡単にね。だけど……自分のコレというものに名前を付けておけば全く話が変わってくる。名前ってのは怖いよ。魔法と名前を結びつけておけば……」


「一刀様の前でなんてことをさせるんですかー!? あと、今日は月曜日ですわ! 【鉄球】!」



 来迎の話の途中で顔を真っ赤にさせた玖須美が今度は素早い詠唱で生み出した鉄球を放つ。弾丸のように放たれた黒い鉄の塊が来迎を襲う。一刀であれば後ろに下がり反動で前に跳び反撃をおこなう場面。だが、来迎は口角を上げ叫ぶ。



「穿て、【晴天大星】」



 ヂっという音と共に黄色い糸のような閃光が奔り玖須美の放った鉄球を通り抜けると、鉄球は力なく落ちていく。地面に落ちたその鉄球には針の穴程の恐ろしいほどに美しい丸い穴が空いていた。

 全員がその穴が空いている鉄球を穴が空くほど見つめ、来迎の方に視線を向ける。そこには、笑う来迎の背後でふわりと浮かぶ白い光る猿が。



「と、このように一瞬で強力な魔法が使えるようになる。近藤センセイは教師陣でも飛び抜けた魔力を持っているわけじゃない。自分で何に特化させるか決めて名を与えたことで強力な魔法を作っただけだ。キミたちにも大人程ではないとはいえ、力が手に入る。さあ、始めようか。君達の望む魔法を作り、名を授ける楽しい時間を」

お読みくださりありがとうございます。

また、評価やブックマーク登録してくれた方ありがとうございます。


少しでも面白い、続きが気になると思って頂けたなら有難いです……。


よければ、☆評価や感想で応援していただけると執筆に励む力になりなお有難いです……。

今まで好きだった話によければ『いいね』頂けると今後の参考になりますのでよろしくお願いします!


また、作者お気に入り登録も是非!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。