VSスノードラゴン3
>>アカネ視点
私はアカネだ。
このゲームを始めたらなんか勝手に処理が始まって強制的に魔術師の職業に就いた。
それだけならまだ良かったんだが、なぜか炎属性の魔法しか使えなくなってしまった。
あの時の私は本当にイラついていたのを覚えている。
「【ファイアーランス】」
だけど、今となってはそんなのは笑い話。
人一倍努力をして、今はトッププレイヤーと呼ばれるようになった。
・・・いや、言うほど努力してないな?縛りを課したことによってめちゃくちゃ炎魔法強くなってたしな。
ま、まあそれは良い。
とにかく私は今強くなった。
「グルア?」
そして今対峙しているのはスノードラゴン。この雪山に来てからと言うものの何度も負け越している正真正銘の化け物だ。
今回もバルドが死にそうになり、私も助けようと全力で走ったのだが間に合わなかった。
だが、ここで新たに入隊したメンバーであるジンが大活躍した。
「おいおい!どうした!私はまだ生きているぞ!」
そんな立役者である彼を襲おうとしているドラゴンのヘイトをなんとかこちらに向かわせようと、私は声を張り上げて自分の存在を誇張する。
「グルア!」
食いついた。
ドラゴンは目の前の獲物から、こちらに標的を変える。
「【ファイアーボール】」
私はできるだけMPを温存するべく、牽制として魔術としては最下級のファイアーボールを放つ。
最下級と言っても侮ってはいけない。私の炎魔術は度重なるバフと、スキルや称号による威力・範囲の強化によって野球ボールサイズから、バランスボールくらいまで大きくなっている。
「グルア!」
だが、ドラゴンはその攻撃を首を軽く振るだけでかき消してしまった。
化け物かよ。
「はっはっは!面白い!当然この程度じゃダメージは喰らわないよな!」
ドラゴンに魔術を打ち込み、その尽くがかき消されるたび、テンションが上がっていく。
「グルア!」
有効打を打ち込めないままドラゴンはぐんぐんと距離を詰めてくる。
「【ファイア・・・いや、いいか」
私はここでほぼ無意味に見える魔術を打つのをやめる。
残り距離、50m、30m・・・。
まだだ。まだ引きつけろ。
15m、10m、8m・・・。
まだ。
7m、6m、5m・・・。
ここ!
「【灼熱の大地】!」
ゴウッ!ゴボボボ!
途端、私の足元から大量のマグマが噴き出す。
残っているすべてのMPのほとんどを注ぎ込んだ魔術だ。
ここで勝負を決める。
それがさっきバルドを介抱している時に取り決めた約束。
「ここで倒すぞ!バルド!」
◇◇◇◇◇
「グルア!?」
ドラゴンは彼女のことを舐めていた。
魔術師のくせして自分に有効打を与えられていないからだ。
だから、一番危険な剣士を最優先で倒す標的として置いておき、彼女は最も優先度が低い目標としていた。
今回はそんな邪魔者を簡単に倒せる絶好の機会。
そう判断したはずだったのだ。
だから迷いもなく、ただ直進的に、避けるはずがないだろうと信じて自身の出せる最高速までペースを上げていた。
だが、それは大きな間違いだった。
今までの攻撃はブラフだったのだ。それは目の前の全てを溶かし、蒸発させる赤黒いマグマが渦巻いている大地を見れば明らか。
ドラゴンは今日初めて命の危険を感じた。
あれだけは触れてはならない。あれに触れたら死ぬ。
頭の中ではそんな危険信号を告げるベルが何度も鳴っている。
「グルアァァァ!」
だが、あまりにも気づくのが遅すぎ、さらには速度を出しすぎた。
ドラゴンはブレーキを全力でかけようとするが、間に合わずマグマの大地に足を踏み入れる。
途端。
ジュッ。
足の裏に激痛が走ったかと思うと、一瞬で足が焼けこげる。
辺りに肉が焼けこげる匂いが充満する。
「グガアァァァ!!」
絶叫が辺りに響きわたる。
ドラゴンは生まれてこの方、死にかけたことなど一度もなかった。
当然、死ぬほどの痛みも受けたことがない。
そのため、戦闘をよくする種族なのに痛みへの耐性があまりにも少なかった。
とにかく激痛と危険信号を伝えてくる大地から離れようと、ドラゴンはほぼ感覚がなくなった足でその場を蹴り上げる。
「【ファイアーチェーン】」
だが、そんな見えすいた逃亡を術者は許さない。
術者は自分の全てを使ってでもその大地に縛りつけるべく、地面から燃え上がる鎖を出現させる。
「グガ!?」
そしてその鎖たちは、跳び上がってその場を離れようとするドラゴンに絡め付きもう一度燃え盛る大地に戻さんと、物凄い力でひきずりこんでいく。
「ゲホッ!ゲホッ!捕えたぞ、クソトカゲ!」
MPを使い切った術者は咳き込み、視界が霞みながらもその焦点はしっかりとドラゴンに向けられていた。
「グガアァァ!」
ドラゴンはもう一度燃やされてなるものかと、全力で抵抗する。が、焦げつき、もはや取れそうになっているような足では力を入れる事はできなかった。
結局ドラゴンは力のままに動かされ、灼熱の大地に四つん這いの状態で拘束されてしまった。
生きたまま焼かれる苦しみ、自分の肉が焼ける匂い。
そんなものを味わい、絶叫を上げている時、頭上から声が聞こえた。
「チェックメイトだ」




