決着
「グルア!」
足を完全に焼ききられ機動力を失ったドラゴンはなんとかその鎖を解き、灼熱の大地から抜け出せないか、無闇矢鱈に暴れ回る。
が、そんな最後の悪あがき程度では炎の鎖は解けない。
「残念だが、ここで終わりだ」
そんな時にドラゴンは穏やかな、だが、決意のこもった声が頭上から聞こえてきた。
何事かと上を見上げると、そこにいたのは剣を今にも振り下ろさんと構える男。
「じゃあな」
男は恐怖と苦痛に顔を歪ませているドラゴンに太刀を振るう。
そこでドラゴンの意識は暗転。2度と覚めることはなかった。
◇◇◇◇◇
「・・・終わったのか?」
戦闘の終始を見ていた俺はポツリとそう呟く。
「っ、あぁ!終わった!」
その言葉でマナ不足で意識が朦朧としていたアカネの意識が戻ってくる。
嬉しいのだろう。その目には溜め続けていた涙が溜まっていた。
「「「よっしゃー!!」」」
ドラゴンがぴくりとも動かなくなったことを確認した俺たちは、3人で抱き合って喜ぶ。
長かった。
新参者の俺ですらそう思うのに、長い間ドラゴンと戦い続けてきた彼らはそのレベルではないだろう。
明らかに俺とは喜び方のスケールが違う。
俺は、『なんとか勝てた!やったぜ!』くらいの喜びを味わっているのに、バルド達はその比ではないくらいの喜び方をしている。
なんてったって、見てみろよ。
「うおぉぉ!やった、やったぞバルド!」
「あぁ、やったな、っ、なんとか、っ、やってやったぞ」
あの2人、俺がいることも忘れて号泣しながら抱き合いながら喜んでいるぞ。顔もぐしゃぐしゃだし、さっきまでの威厳溢れる2人とは真反対の姿を曝け出している。
まあ、そんなものか。俺とはレベルの違う時間戦い続けてきていたんだものな。
とはいえ、なんか喜んでいる2人を見ていると、なんか喜びが冷めてしまったな。
《レベルが上がりました》
《大量のスキル・称号を入手しました》
《特殊ボスを討伐しました》
《これより、フィールドの開放を行います》
《討伐情報をワールドアナウンスで伝えてもよろしいですか?》
《ワールドアナウンスで伝える場合、全てのプレイヤーに討伐情報(プレイヤー名、討伐されたモンスター名)が公開されます》
そんなことを思ってぼーっとしていると、アナウンスが頭の中に響いてくる。
なんか最近スキルと称号のアナウンス省略しすぎじゃね?
最初期以来、スキルとかを獲得した時のアナウンスを真面目に聞いていないのだが。
運営の職務怠慢か?
プレイヤーにアナウンスを長時間聴かせないための配慮だとしても、もう少しいい方法があっただろうに。
え?文句を言うならお前が作れって?
断じて拒否する。なんでこっちが楽しむ側なのに、楽しませる側にならないといけないんだよ。
そういうのはRPGじゃなくて都市開発ゲームとかでやればいいじゃないか。
俺はあくまでプレイヤー。作った側に意見を提示して、より良い関係を築くための立場だ。
別に俺自身が調整とかをやる意味はないのだ。
と言うわけで、頑張ってくれ運営。
ゲームプログラマーってブラックなイメージしかないが、ここはどうなのだろうか?
どちらにせよ大変なのは変わらないだろう。南無。
おっと、閑話休題。
ワールドアナウンスってなんだ?
今までそんなの聞いたこともなければ、言わせたこともないぞ。
密かに追加された新機能なのか?
俺だけに聞こえたものではなさそうで、バルド達も抱き合いながらも不思議そうな顔で俺の方を見てくる。
「え?ワールドアナウンスってなんなんだ?」
「まあ別に言っていいんじゃねぇか?特に名前を隠したいとかはないし」
「そうだな!私はむしろどんどん伝えていきたい派だし、私も良いぞ!」
「じゃあ、俺も別にいいか。言っても特に何もしてないしな」
《パーティ全員の許可が降りたため、ワールドアナウンスを始めます》
《ワールドアナウンスが発生しました》
《このアナウンスは全てのプレイヤーに伝えられています》
《プレイヤー名:ジン、アカネ、バルドによって初めての龍種が討伐されました》
《また、フィールドボスが討伐されたため新たなフィールドが開放されました》
《今後もこのゲームをよろしくお願いします》
途端、俺たちにもワールドアナウンスが流れる。
なるほど?
最初のボスであるが故に特殊ボスというカテゴリに分類されていたのか。しかも新フィールド開放の鍵にもなっていると来た。
通りでめちゃくちゃに強いわけだ。
化け物みたいに強くして新マップ解放を遅らせようという姑息な方法をとっているのだろう。
まあ確かに最初に討伐するのを遅くするのは良いのだが、最初だけ強くするというのはあまり好きではない方法だ。
もっと良いやり方があっただろうにpart2だ。
本当にこの運営はいいのか、よくないのか分からないな。
とはいえ、このまま闘技場にいるままでは何も進まない。
俺たちはとりあえずドラゴンの素材を回収し、倒した時に現れた中央の魔法陣の上に移動する。
「はあ、疲れた。拠点に戻るぞ」
「そうだな!疲れたな!」
流石にもう抱きつく事はなく、ただげっそりとした顔で俺たちは転移するのであった。
・・・アカネはげっそりしていたか???




