やっぱりフラグだったか…
俺はコボル。第二の街イルンから馬車を使って移動するやつから金を巻き上げている。
冒険者ギルドは弱い方が悪いという方針で、俺がやってることには基本介入はしてこない。
おかげで毎日毎日儲かってるし、絶望する初心者の顔も見れるから、一石二鳥だ。
いるんだよなぁ。最初の街を抜け出したからもう俺は最強の一角だと勘違いしてるやつ。
お、丁度良い所に馬車を待ち始めた明らかに初心者っぽいプレイヤーがいるじゃねぇか。
俺は両隣にいる子分に目で合図を送る。
同時に俺たちは、逃げられないように囲って、少年に話しかける。
「おいおい、お前。ビーチに行くのか?」
「・・・」
俺が話しかけると、少年は心底面倒くさそうな顔でこちらを見上げる。
「行くって言ったらどうするんだ?」
「いやいや、あそこは危険だからやめた方が良いと思ってな」
「あいにく俺は強いんで。心配なさらず」
少年はあっけらかんと言い放つと、俺のことなど眼中にないような雰囲気でまた座り直す。
「あ゛?熟練プレイヤーのコボルさんがやめとけって言ってるんだぞ?ここは真面目に従うのが初心者だろうが!」
「そうだぞ!舐めるのも大概にしろよ!」
そんな興味なさげな雰囲気に俺の子分の堪忍袋の緒が切れたのか、イライラとした様子で怒鳴りつける。
こいつら、確かにそこそこ強いんだが、短気なのが欠点なんだよな。
とはいえ、この対応がむかつくのは事実。
「そうだぞ、三次転職も近いこの俺がやめとけって言ってるんだ。ここは素直に辞めたらどうだ?」
「・・・もし辞めるって言ったら?」
彼は相変わらずこちらに目を向けず、そう聞く。
「それなら俺が良い訓練場所を知ってるから教えてやる」
「へー、そんな訓練場があるのか」
「あぁ、お前も強くなりたいんだろ?ついてくるか?」
「・・・わかった。どうせ馬車が来るまで暇なんだ。見に行くだけくらいなら」
食いついた。
彼が俺たちに案内されて向かう先は俺たちのアジト。数十人の仲間たちが、獲物を叩き潰すべく待ち構えている。
「あ゛?なんでお前そんな、っ!すいません」
と、彼がずっと敬語を使わないのが気に食わないのか、子分が怒鳴りつけようとするが、それを手で制す。
はあ、獲物を持ってきたいならもっと人付き合いのいいやつを連れてくれればいいのに。
俺たちは借金取りじゃないんだから。
「分かった。それじゃあ早速行こうか」
「あぁ」
そんな軽い挨拶を交わして、俺たちは出発する。
この後、俺たちが圧倒的恐怖に怯えることになるなんて想像もしていなかった。
そして、俺たちはここで彼を目標に定めたことを一生後悔することになる。
◇◇◇◇◇
>>ジン視点
俺は今、絡んできたチンピラの後ろを歩いている。
絡まれた時は軽く流そうといていたのだが、途中でこいつら利用できると思って言いなりになっている。
正直、こいつらの強さなんてしれてるからな。
リーダー格の男でもまだ三次転職すら終わってないらしい。
論外だ。
トッププレイヤーの実力を見た今、こいつらなんて恐るるに足らない。
つまり、騙されるなら正面から叩き潰し、言ってることが本当ならありがたく使わせてもらおう、というわけだ。
まあほぼ確実に騙されてるだろう。
なにげ、テンプレフラグを初めてやったからワクワクしている自分がいる。
冒険者ギルドと言ったら舐めたチンピラが絡んでくる、というのがお約束だ。
まあやってるやつがプレイヤーだから、運営が想定しているイベントではないのだろう。
これで運営が想定しているイベントだったら面白いが、どちらにせよ全てパワーで叩き潰せば良い。
今回手に入れたハウスサンタビートルに変身するスキルも使えないままだったから、今回で試させてもらうとしよう。
それにしても、彼らがPKだった場合街中でどうやってプレイヤーを倒すのだろうか。
街中に戦闘可能な場所があったりするのだろうか。もしくは、無理やり決闘を挑むのだろうか?
俺はコボルと呼ばれたプレイヤーの背中を見ながらそんなことを考える。
ちなみに今はコボルが先頭で、俺の両脇に取り巻きがいる。
逃げようと思っても取り押さえられるような配置だ。
コバルかいうやつ、なかなかやるかもしれないな。
感覚が麻痺しつつあるが、三次転職間近というのは、このゲームの期間で言うと普通にすごい部類なのだ。
俺は流石に舐めすぎていたことを理解して、彼らに対する警戒を一段階引き上げる。
え?警戒を引き上げたからなんなのって?お前のプレイスタイルだと攻撃されないとどうにもならないだろって?
うるせー!
とりあえず警戒を強めたんだよ!
警戒を強めることによって不測の事態に対応できるのかは不問とする。
「そろそろ着くぞ」
ふと、コボルが後ろを振り返ってそう呟く。
「へぇ、こんな裏通りに。誰にもバレてないのか?」
「あぁ、お前が騙されてるってことに気づかないバカでよかったよ。お前ら、やるぞ!」
「「「おう!」」」
途端。
周囲の空気が震えるほどの怒声が、裏通りに鳴り響く。
「ん?気づいてたぞ?」
「「「え?」」」
そしてまた空気が固まり、静まり返る。
いや、そこは攻撃してこいよ・・・。




