馬車待ちはフラグなのか?
「それじゃあ、今度こそお別れだな」
なんか変な研究者に絡まれて忘れていたが、今はちょうど拠点から出ていく時だったのだ。
出鼻をくじかれて、若干苦い顔をしているアカネに俺は別れを告げる。
「お、おう!また会おうな!」
彼女たちと攻略をしていたのはたった三日ほどだったが、かなり濃い冒険をさせてもらった。
いつも俺の周囲は変なイベントに溢れているが、それに比べてもなお非常に濃い三日間だった。
「あぁ、またな」
俺はアカネに手を振って、最初の街に転移する。
イルンに行ってもよかったのだが、一応新素材をミルさんにも見せておこうと思って最初の街に転移することにした。
転移先が同じで気まずい雰囲気になるみたいなことがなくてよかった。
可能性としては考えていたのだが、流石にそんな奇跡的なことは起きなかった。
そんなしょうもないことを考えながら、俺はミルさんの装備屋に向かう。
◇◇◇◇◇
「あぁ、散々な目にあった」
俺は装備屋から出て早々、そんなことを呟いていた。
何があったかはなんとなく察せられるだろう。
オタクの話を延々と聞かされたのだ。
攻略隊の時は逃げ出せたからよかったものの、ミルさんは基本的1対1で話すから逃げようにも逃げられなかった。
おかげで、なけなしの新素材の素晴らしさを小1時間ほど聞かされた。
ためになる情報も一応聞けはしたが、当然それよりも圧倒的に興味がない話の方が多い。
毎回行くたびにげっそりするんだよな。
はあ、とりあえずイルンに移動するか。
「とりあえず次にやりたいのはユニーククエストの攻略か」
ダンジョン攻略もしてみたいのだが、そっちは時間制限がないし、別にいつ行っても完全攻略は難しそうだから先により強くなれそうなユニーククエストをやるべきだ。
ほぼ情報がないから、どんなクエストなのかどんな人が依頼人なのかもよく分かってないんだよな。
一応図書館で極南に関しては調べてみたんだが、どれも信憑性に欠ける情報だったんだよな。
なんか魔境になっていて強すぎる魔物がうじゃうじゃいる大陸がある、みたいなことを言ってる研究者もいたし。
まあこれは行ってみないと分からないだろう。
一応今の情報でいうと南はビーチになっているらしい。
海に入らなければヤドカリやカニなどの魔物が出てきて、海に入ると魚系の魔物が出てくる。
水中での動きがないと攻略は絶望的ということらしい。
AGIが0でかなりゆっくりとした攻略になるのは分かっているので、とりあえずどうするかは進みながら考えることにしよう。
・・・というか、徒歩で行けるのだろうか?
距離までは調べていないから分からないから、一旦聞き込みしてみるか。
俺はとりあえず聞き込みをするために冒険者ギルドに向かった。
◇◇◇◇◇
結果として、海は徒歩ではよほどAGIが高くないと話にならないということが分かった。
危なかった。最初は徒歩で行けるんじゃないかと思ってゆっくり進んでいこうとしていたが、それは相当な地雷選択肢だった。
というわけで、南に行くなら馬車か自分の乗り物を用意するしかないらしい。
んー、アルベリオンにおんぶしてもらうか馬車に乗るかか。
アルベリオンはあまり他人に見せたくないし、お金にもそんなに困ってないから馬車でいいか。
またエナみたいに知り合いに会うことがなければいいんだが。
というか、馬車に乗ると変人を見るような目が突き刺さるんだよな。
うーむ。
まあ情報を見せたくないから馬車に乗るのは確定してるか。
次の馬車は2時間後らしい。
特にすることがないんだよな。
そういえば、ユニーククエストと出会った時も馬車待ちだったんだよな。
馬車待ちはなんらかのフラグだったりするのだろうか。
もうこれ以上変なことはならなくていいから。
正直お腹いっぱいだ。他のプレイヤーも俺みたいに毎日のようにイベントに遭遇していたりするんだろうか。
絶対してないよな。
俺の何が原因でこんなにイベントに遭遇するようになってるんだ?隠しステータスみたいなのがあるのか?
この運営のことだから何かそういうステータスを仕込んでいたりしててもおかしくないんだよな。
もしくは、俺のHP極振りのプレイスタイルが悪かったりするのだろうか。
例えばLCKとか。
これが0だと死にイベントとか、高難易度イベントに遭遇しやすくなるんだろうか。
・・・なんか確信をついてる感触があるな。
極振りはそういう部分でも不遇なのか。
ここの運営は自由なゲームプレイを謳いながらも、極振りを許さないのか。
なんだこの運営。
そんな運営に愚痴をこぼしながら、俺はなんらかのフラグに遭遇したくないので真面目に馬車をギルドで待つことにした。
「はぁ」
できればなぜか体力が回復するベンチに座りたいのだが、それすらもなんか危険な気がするのでギルドのベンチに座る。
強くなれるとはいっても、厄介事には出来るだけ巻き込まれたくないのだ。
え?今更そんなこというのか?って?
・・・それはそうなんだが、だからと言って厄介事に巻き込まれたいとは思わない。
「おいおい、お前。ビーチに行くのか?」
と、そんなことを考えているとニヤニヤと下卑た笑みを浮かべる男3人が俺に絡んできた。
えぇ、もうやめてくれよ。




