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暴君陛下は人の心が読める~本音しか言わない元ヤン令嬢を溺愛中~  作者: S@Y@


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第六十八話 連れていかれたレイナ


 レイナは、兵士たちに両腕を掴まれたまま、屋敷の奥へと連れていかれていた。


「離せって言ってるでしょ!」


「暴れるな!」


「誰が大人しくするか!」


 レイナは必死に身体を捻る。


 だが。


 先ほどの結界で消耗した身体は、思うように動かなかった。


「……くっ……!」


 悔しい。


 こんな奴らに捕まるなんて。


 いつもなら、この程度の兵士なら振り払える。


 なのに。


 今は力が入らない。


 そのまま長い廊下を進み――。


 重そうな扉の前で止まった。


 ギィィ……。


 扉が開かれる。


 その先には。


 何もない、殺風景な部屋があった。


 窓はない。


 机と椅子。


 そして、床には簡素な寝台が一つ置かれている。


 レイナは部屋の中へ押し込まれた。


「ここで大人しくしていろ」


「……は?」


 レイナが振り返る。


「ここって……」


「今日からお前の部屋だ」


「ふざけんな!」


 レイナが扉へ駆け寄る。


 だが。


 バタン!!


 目の前で扉が閉められた。


「開けろ!!」


 ドンドン!!


 レイナが扉を叩く。


「アタシは絶対ここでは働かないから!」


 返事はない。


 外から鍵を掛ける音だけが聞こえた。


 カチャリ。


「……っ」


 レイナは扉を睨みつける。


 そして。


 ゆっくり拳を握った。


「……また、この家は……」


 昔と同じだ。


 何も変わっていない。


 レイナを一人の人間としてではなく。


 都合よく使える存在として扱っている。


 その時。


 扉の向こうから声が聞こえた。


「レイナ」


「……!」


 聞き慣れた声。


「クラリス……?」


 扉が開く。


 そこに立っていたのは、クラリスとエレノアだった。


 二人とも、どこか満足そうな顔をしている。


「久しぶりね、レイナ」


「……何しに来たの?」


「もちろん、あなたに仕事をしてもらうためよ」


「嫌だ」


 即答。


 クラリスの眉が動く。


「あなたに拒否する権利なんてないでしょう?」


「あるよ」


 レイナは真っ直ぐ二人を見る。


「アタシはもう、この家の人間じゃない」


「……!」


 クラリスの顔から笑みが消える。


「何を言っているの?」


「もう公爵家の命令には従わないってこと」


「生意気ね……!」


 クラリスが一歩近づく。


 しかし。


 レイナは一歩も引かなかった。


「昔みたいに、掃除も洗濯も料理も全部やらせるつもりなんでしょ?」


「当然でしょう?」


 エレノアが笑う。


「あなたには、それくらいしか価値がないもの」


「……」


 レイナの拳が震えた。


 昔なら。


 その言葉を聞いて、何も言えなかった。


 でも。


 今は違う。


「……ふざけないで」


 小さな声。


「え?」


「アタシは、アンタたちの奴隷じゃない」


 レイナが顔を上げる。


「絶対に、ここでは働かない」


 クラリスとエレノアが顔を見合わせる。


「……お父様に報告しましょう」


「そうね」


 二人が部屋を出ようとした。


 その瞬間。


「待って」


 レイナが呼び止める。


 二人が振り返る。


「カイゼルは?」


「……」


「どこにいるの?」


 クラリスが口元を歪めた。


「まだ廊下にいるわよ」


「……!」


「あなたを助けようとして、兵士たちと戦っているみたいね」


 レイナの表情が変わった。


「……カイゼル」


 クラリスはそれを見て笑った。


「心配?」


「当たり前でしょ!」


「なら、余計なことはしないことね」


 クラリスが扉を閉める。


 再び。


 鍵が掛かる。


 静寂。


 レイナは扉を見つめた。


「……カイゼル、大丈夫かな」


 自分より。


 彼のことが心配だった。


 一方――。


 屋敷の別の場所。


 カイゼルは、未だ鉄格子の前に立っていた。


 周囲には倒れた兵士たち。


 しかし。


 その先には、さらに多くの兵士が集まっていた。


「……なるほど」


 カイゼルが周囲を見渡す。


 この屋敷は。


 最初から二人を分断するために作戦を組んでいた。


 レイナを奥へ連れていく間。


 自分をここで足止めする。


「だが――」


 カイゼルが静かに手を上げる。


 床一面が凍りついた。


「余を止められると思うな」


 そして。


 カイゼルは、レイナが連れていかれた方向へ向かって歩き始めた。

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