第六十四話 結界の本当の目的
クラリスとエレノアが部屋を出ていく。
扉が閉まる。
再び、二人だけになった。
「……腹立つ。」
レイナが腕を組む。
「昔と何も変わってない。」
カイゼルはレイナを見る。
「お前は、昔からあのような扱いを受けていたのか。」
「まあね。」
「だが。」
カイゼルの声が低くなる。
「今は違う。」
「アタシもそう思ってる。」
レイナは小さく笑う。
「だから、こんなところで大人しくしてるつもりはないよ。」
「ああ。」
カイゼルは結界を見上げる。
「必ず出る。」
その時。
カイゼルの表情が変わった。
「……待て。」
「どうしたの?」
「結界の魔力が変化している。」
レイナも周囲を見る。
「さっきより強くなってない?」
「ああ。」
「余が魔力を使ったからだと思っていたが……。」
カイゼルは目を細める。
「違う。」
「この結界は、余の魔力だけを封じているわけではない。」
「じゃあ何を?」
「お前だ。」
「アタシ?」
カイゼルはレイナへ近づく。
「この結界は、お前の魔力にも反応している。」
「でも、アタシそんなに魔力使ってないよ?」
「だから妙なんだ。」
カイゼルがペンダントを見る。
「母親の形見。」
「そして、この結界。」
「偶然とは思えない。」
レイナはペンダントを握る。
「……どういうこと?」
その瞬間。
ペンダントが淡く光った。
「え?」
カイゼルが目を見開く。
「レイナ。」
「それを離せ。」
「え?」
「早く!」
レイナが慌ててペンダントを外そうとする。
しかし。
ペンダントは外れない。
「外れない!」
光がさらに強くなる。
部屋の中を魔力が走る。
「レイナ!」
カイゼルが手を伸ばす。
その瞬間。
結界が大きく揺れた。
「っ……!」
二人の身体が吹き飛ばされる。
レイナは床へ倒れ込む。
「痛っ……。」
「レイナ!」
カイゼルがすぐに駆け寄る。
「大丈夫か。」
「うん……。」
レイナが顔を上げる。
「カイゼルは?」
「問題ない。」
だが。
カイゼルは結界を睨んでいた。
「……分かった。」
「何が?」
「この結界の目的だ。」
カイゼルは静かに言う。
「公爵家は、余を閉じ込めるためだけに、この部屋を用意したわけではない。」
「じゃあ……。」
「お前の魔力を暴走させるつもりだ。」
「……!」
レイナの顔から笑みが消える。
「アタシの?」
「ああ。」
「だが、なぜ?」
カイゼルはペンダントを見る。
「それを利用するためだ。」
「公爵家は、お前の中にある何かを知っている。」
レイナは息を呑む。
「……何かって?」
「まだ分からない。」
カイゼルはレイナの手を握る。
「だが。」
「一つだけ確かなことがある。」
「何?」
「この結界が完成すれば。」
カイゼルの目が鋭くなる。
「お前は危険な状態になる。」
「……。」
「だから。」
カイゼルはレイナをまっすぐ見つめる。
「絶対に、余から離れるな。」
レイナは少し驚いた。
「……うん。」
しかし。
二人が気づかない場所で。
壁の向こうにある魔法陣が、ゆっくりと光り始めていた。
そして。
公爵家が本当に狙っているものが。
少しずつ姿を現し始めていた。




