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暴君陛下は人の心が読める~本音しか言わない元ヤン令嬢を溺愛中~  作者: S@Y@


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第四十六話 迫る選定の時

 数日後。


 帝城では、いつもとは少し違う空気が流れていた。


 朝食を終えたレイナが廊下を歩いていると、侍女たちが何やら忙しそうに動いている。


「何かあったの?」


 レイナが尋ねると、侍女が振り返った。


「はい。」


「近日中に、皇后候補となる令嬢たちが帝城へ招かれる予定なのです。」


「皇后候補?」


 レイナは足を止めた。


「そうなの?」


「はい。」


「正式な選定に向けて、陛下が候補者たちとお会いになることになっております。」


 レイナは少し考える。


「なるほど。」


(そういえば、皇帝なんだから皇后を決めないといけないんだよね。)


「そういえば、そういう話だったね。」


 侍女は少し困ったように笑った。


「レイナ様も候補のお一人ですので。」


「え?」


 レイナは目を丸くする。


「アタシも?」


「はい。」


「知らなかった。」


「陛下から正式にお話があったわけではないのですか?」


「聞いてない。」


 レイナは頬を掻く。


「そもそも、アタシが皇后になるとか考えたことないし。」


 その時。


「余は考えている。」


 背後から声がした。


「うわっ!」


 レイナが振り返る。


「いつからいたの!?」


「今来たところだ。」


「絶対嘘。」


「本当だ。」


 カイゼルは真顔だった。


 レイナは呆れたように息を吐く。


「で。」


「アタシを皇后候補にするって話、本当?」


「ああ。」


「なんで?」


 カイゼルは少し考えてから答える。


「お前がいいと思っているからだ。」


「……。」


 レイナが固まる。


「え?」


「何か問題があるか。」


「いや。」


「そういうの、そんな普通の顔で言う?」


「普通のことだからな。」


「だからアンタは変なんだって。」


 レイナが顔を赤くしながら視線を逸らす。


 カイゼルはそんなレイナを見て、わずかに笑った。


◇ ◇ ◇


 その日の午後。


 皇后候補として名を挙げられた令嬢たちへ、正式な招待状が届けられた。


 その中には。


 アルフォード公爵家のクラリスとエレノアの名前もあった。


「皇后選定……。」


 クラリスは書状を握りしめる。


「ついに来たわ。」


 エレノアも隣で書状を見つめる。


「レイナも候補なんでしょう?」


「ああ。」


 公爵が答える。


「だが、心配するな。」


「お前たちには公爵家の名がある。」


「必ずどちらかを皇后にする。」


 クラリスは小さく笑う。


「なら、レイナさえいなければいいのね。」


「そうだ。」


 公爵の目が冷たくなる。


「だが、今度は下手な真似をするな。」


「陛下はレイナを守っている。」


「正面から手を出せば、今度こそ公爵家そのものが危うい。」


 エレノアが不安そうに尋ねる。


「では、どうするの?」


 公爵はしばらく黙った。


 そして。


「皇后候補としての評価を落とせばいい。」


「レイナ自身に問題があると思わせるのだ。」


 クラリスが目を細める。


「悪い噂を流す?」


「それだけでは足りん。」


「皇后に相応しくないと思わせる必要がある。」


 二人は顔を見合わせた。


「……なるほど。」


◇ ◇ ◇


 翌日。


 帝都では、ある噂が広がり始めていた。


「皇帝陛下の新しい皇后候補は、平民同然の暮らしをしていたらしい。」


「礼儀作法もまともに知らないとか。」


「そんな女性が皇后になって大丈夫なのか?」


「公爵令嬢なのに、社交界にもほとんど出ていなかったそうだ。」


 噂は少しずつ広がっていく。


 レイナ本人は、そのことをまだ知らない。


 帝城の庭園で。


「これ、美味しい。」


「もっと食べるか。」


「うん。」


 カイゼルと並んで菓子を食べていた。


「ねえ。」


「何だ。」


「皇后候補って、何するの?」


「しばらく候補者たちと会うことになる。」


「面倒くさそう。」


「嫌か?」


「うーん。」


 レイナは少し考える。


「面倒だけど。」


「アンタがやれって言うなら、やるよ。」


 カイゼルは静かにレイナを見る。


「余が決めるのではない。」


「最後に決めるのは、お前自身だ。」


「……え?」


「皇后になるかどうか。」


「お前が望まないなら、無理にさせるつもりはない。」


 レイナは少し驚いた。


「そっか。」


 そして。


 ふっと笑う。


「じゃあ、考えてみる。」


「ああ。」


 二人の間に穏やかな空気が流れる。


 しかし。


 その裏では。


 レイナを皇后にさせまいとする者たちが、着々と動き始めていた。


 そして数日後。


 皇后候補たちが、帝城へ集まる。


 レイナにとって初めての、本格的な皇后選定が始まろうとしていた。

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