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暴君陛下は人の心が読める~本音しか言わない元ヤン令嬢を溺愛中~  作者: S@Y@


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第四十一話 皇帝からの書状


 翌朝。


 レイナが朝食を終え、部屋へ戻ろうとしていた時だった。


「レイナ様。」


 侍女が一礼する。


「陛下がお呼びです。」


「カイゼルが?」


「はい。」


「何かあったのかな。」


「執務室へお越しください、とのことです。」


「分かった。」


 レイナは侍女と共に廊下を歩き始めた。


 やがて。


 執務室の前へ到着する。


「レイナ様がお見えです。」


「入れ。」


 中からカイゼルの声が返ってきた。


 扉が開く。


「失礼するね。」


 レイナが入ると、カイゼルは机から顔を上げた。


「来たか。」


「呼んだ?」


「ああ。」


 カイゼルは一通の書状を手に取った。


「これを見せるためだ。」


「何それ。」


「アルフォード公爵家から届いた。」


「……父上から?」


「ああ。」


 レイナは少し警戒しながら書状を受け取る。


「読んでいい?」


「そのために呼んだ。」


 レイナは封を開け、内容へ目を通す。


 そこには。


『先日の件について、深く反省しております』


『レイナを心配するあまり、行き過ぎた行動を取ってしまいました』


『どうか一度、娘と話す機会をお与えください』


 そして最後には。


『皇后候補についても、改めて家族として話し合いたく存じます』


 そう書かれていた。


 レイナはしばらく黙っていた。


「……何これ。」


「どう思う。」


「嘘くさい。」


 即答だった。


 カイゼルの口元がわずかに緩む。


「余もそう思う。」


「だよね。」


 レイナは書状を机へ置いた。


「『心配するあまり』って。」


「今まで一度でも心配された記憶ないんだけど。」


 カイゼルの目が細くなる。


「やはりそうか。」


「うん。」


 レイナは書状を指差す。


「それに、皇后候補の話まで出してる。」


「アタシを心配してるなら、そんな話わざわざ書かないでしょ。」


「その通りだ。」


 カイゼルは書状を受け取る。


「この書状は、お前を帝城から戻すための口実だ。」


「そして、クラリスとエレノアを皇后候補として押し出すためのものだろう。」


「やっぱりそうなんだ。」


 レイナは小さく息を吐く。


「……まだ諦めてないんだね。」


「ああ。」


「お前を取り戻すつもりだ。」


 レイナは少し考える。


「でも、戻る気ないよ。」


「分かっている。」


「ならいいじゃん。」


「そう簡単にはいかない。」


 カイゼルの声が低くなる。


「公爵家は、レイナを諦めるつもりがない。」


「また何か仕掛けてくる可能性もある。」


「……そっか。」


 レイナは少しだけ表情を曇らせる。


 カイゼルはそれを見逃さなかった。


「怖いか。」


「ん?」


「公爵家のことだ。」


 レイナは少し考える。


「怖いっていうより……面倒。」


「また捕まったりしたら嫌だし。」


「そうか。」


 カイゼルは静かに頷く。


「なら、余が守る。」


「……え?」


「二度と連れて行かせない。」


 レイナは目を丸くする。


「そんなに断言して大丈夫?」


「ああ。」


「余が許さない。」


 あまりにも真剣な顔で言われ。


 レイナは思わず笑ってしまう。


「アンタ、本当に過保護だよね。」


「そうかもしれんな。」


「否定しないんだ。」


「お前のことだからな。」


 その言葉に。


 レイナの胸が少しだけ跳ねた。


(……こういうこと、さらっと言うんだよな。)


「……変な人。」


「またそれか。」


「だって本当だもん。」


 二人の間に、穏やかな空気が流れる。


 しかし。


 カイゼルの視線は、机の上の書状へ戻った。


「皇后候補については。」


「公爵家が決めることではない。」


「最終的に決めるのは余だ。」


 レイナは首を傾げる。


「ふーん。」


「まあ、アタシには関係ないけどね。」


 カイゼルはレイナを見る。


「……そうか。」


 その声には、わずかな不満が混じっていた。


 レイナは気づかない。


「じゃあ、もう戻っていい?」


「ああ。」


「じゃあね。」


 レイナが扉へ向かう。


 しかし。


「レイナ。」


「ん?」


「今日は一人で出歩くな。」


「分かった。」


「何かあれば、すぐに余を呼べ。」


「了解。」


 レイナは笑って部屋を出ていった。


 扉が閉まる。


 静かになった執務室。


 カイゼルは椅子へ深く座り直した。


 机の上には、公爵家からの書状。


 そこには。


 クラリスとエレノアを皇后候補として押し出す意図が、はっきりと記されている。


 だが。


 カイゼルには、もう興味がなかった。


 皇后候補として誰を推すか。


 公爵家が何を望むか。


 そんなことより。


 今、気になっているのは一人だけだった。


「……レイナ。」


 名前を口にする。


 それだけで、自然と表情が和らぐ。


 レイナが笑えば嬉しい。


 傷つけば腹が立つ。


 危険にさらされれば、何を差し置いてでも助けに行く。


 そして。


 自分の隣にいることを、当然のように望んでいる。


 そこまで分かっていても。


 カイゼルはまだ、その感情を言葉にしていなかった。


 ただ一つ。


 はっきりしていることがある。


 皇后を誰にするかを決める時。


 公爵家の意見など、最初から考慮するつもりはない。


「余が選ぶ。」


 静かに呟く。


 その答えは。


 もう、とっくに決まっていた。

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