↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暴君陛下は人の心が読める~本音しか言わない元ヤン令嬢を溺愛中~  作者: S@Y@


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
38/62

第三十八話 公爵家の思惑


 帝城へ戻った直後。


 カイゼルはレイナを自室まで送った。


「今日はもう、部屋から出るな。」


「えー。」


 レイナが不満そうに頬を膨らませる。


「せっかく街まで行ったのに。」


「誘拐された人間が言うことではない。」


「でも、助かったじゃん。」


「今回はな。」


 カイゼルは真剣な顔でレイナを見る。


「次も助かるとは限らない。」


 レイナは少し黙った。


「……分かった。」


「今日は大人しくしてる。」


「ああ。」


 カイゼルはそれだけ言うと、部屋を出ていった。


◇ ◇ ◇


 執務室。


 アルベルトが捕らえた男たちの尋問結果を報告していた。


「陛下。」


「今回の誘拐についてですが。」


「アルフォード公爵家からの指示だったことは間違いありません。」


 カイゼルは目を細める。


「目的は。」


「レイナ様を生きたまま連れてくること。」


「それ以外の指示は?」


「特にありませんでした。」


 カイゼルはしばらく黙った。


「……やはりか。」


「何か気になる点が?」


「なぜ殺さず、連れ戻そうとするのか。」


 アルベルトは少し考える。


「公爵家としては、レイナ様を手元に置いておきたいのではないでしょうか。」


「だが、皇后候補から外したいのであれば、むしろ帝城にいる方が都合がいいのでは?」


「いいえ。」


 カイゼルは静かに答えた。


「違う。」


「公爵家が欲しいのは、皇后候補としてのレイナではない。」


「……と、申しますと?」


 カイゼルの脳裏に、これまで見てきた公爵家の姿が浮かぶ。


 使用人同然の扱い。


 質素な部屋。


 少ない衣服。


 そして。


 レイナが屋敷にいた頃、当然のように雑用を押し付けていた家族。


「働かせるためだ。」


 アルベルトが目を瞬く。


「働かせる……?」


「あの家にとって、レイナは娘ではない。」


「便利な働き手だ。」


 カイゼルの声が冷たくなる。


「だから取り戻したい。」


「皇后候補としてではなく、今まで通り使うために。」


「……なるほど。」


 アルベルトも表情を曇らせる。


「そして、皇后候補にはクラリス様とエレノア様を推したい。」


「ああ。」


「レイナが帝城にいる限り、その二人にとって邪魔になる。」


 カイゼルは机の上へ手を置く。


「だから連れ戻そうとした。」


「自分たちの都合のためにな。」


 怒りが静かに滲む。


「……愚かな家だ。」


◇ ◇ ◇


 その頃。


 アルフォード公爵家。


 執務室には、公爵とクラリス、エレノアが集まっていた。


「失敗しただと……?」


 公爵が苛立たしげに机を叩く。


「はい。」


 報告に来た男が震えながら答える。


「皇帝陛下が現れ、レイナを奪い返しました。」


「くそっ……!」


 公爵は歯を食いしばる。


「なぜ陛下があそこまでレイナを守る!」


 クラリスが不安そうに口を開く。


「お父様。」


「このままでは、本当にレイナが皇后になってしまうのでは?」


「そんなことはさせん!」


 公爵は即座に否定した。


「レイナに皇后など務まるはずがない!」


 エレノアも唇を噛む。


「でも……陛下はレイナを気に入っているように見えます。」


「それが問題なのだ。」


 公爵は二人を見る。


「レイナが帝城にいる限り、お前たちが皇后になる可能性が下がる。」


「それに。」


「レイナが戻ってくれば、また屋敷の仕事をさせられる。」


 クラリスとエレノアの目がわずかに輝く。


「……そうですね。」


「今まで通りなら。」


「私たちは何も困らない。」


 公爵は頷いた。


「そうだ。」


「レイナは屋敷に戻す。」


「そして、今まで通り働かせる。」


「皇后候補になるなど、絶対に認めん。」


 クラリスが小さく笑う。


「レイナさえいなければ。」


「皇后になれるのは私。」


 エレノアも続く。


「私だって負けない。」


 二人の間に、再び嫌な空気が流れる。


 しかし。


 公爵はまだ知らない。


 レイナを取り戻そうとすればするほど。


 皇帝の怒りを買うことになるということを。


◇ ◇ ◇


 その夜。


 レイナは自室でのんびりしていた。


「……明日は何しようかな。」


 ベッドへ寝転びながら呟く。


 公爵家へ戻る気など、もう一切ない。


 ここでの生活は快適だった。


 食事も美味しい。


 自由に過ごせる。


 そして。


 何より。


「……カイゼル、変な人だけど。」


 思い出すと、自然に笑みが浮かぶ。


「悪い人じゃないんだよな。」


 その頃。


 執務室では、カイゼルが一人で書類を読んでいた。


 ふと。


 レイナの顔が頭に浮かぶ。


「……。」


 小さく息を吐く。


「明日は、あの娘を連れ出すか。」


 仕事ばかりでは退屈だろう。


 そう思っただけだった。


 ――まだ二人は知らない。


 アルフォード公爵家が。


 もう一度レイナを取り戻すため、次の手を打とうとしていることを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。