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暴君陛下は人の心が読める~本音しか言わない元ヤン令嬢を溺愛中~  作者: S@Y@


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第30話 皇帝の隣にいる者


帝城。


夜。


静かな廊下を、一人の近衛兵が歩いていた。


手には書類。


表情は真剣だった。


「陛下へ報告を――。」


そう呟きながら、執務室へ向かう。


しかし。


角を曲がった瞬間。


「遅かったな。」


低い声が響いた。


近衛兵が足を止める。


「……誰だ。」


振り返る。


そこにいたのは、黒い外套を纏った男。


「残念だが。」


「ここから先へは行かせない。」


近衛兵が剣へ手を伸ばす。


だが。


次の瞬間。


男の姿が揺らいだ。


「っ……!」


気づいた時には。


近衛兵は壁へ押さえつけられていた。


「安心しろ。」


「殺すつもりはない。」


「聞きたいことがあるだけだ。」


男は低い声で問いかける。


「皇帝の側にいる女。」


「どこにいる。」


近衛兵は睨みつける。


「……誰が答えるか。」


男は小さく笑った。


「忠誠心か。」


「結構なことだ。」


「だが。」


「心の中までは隠せない。」


その言葉に、近衛兵の表情が変わる。


◇ ◇ ◇


同じ頃。


レイナの部屋。


「……。」


レイナは窓の外を見る。


なぜか。


妙な違和感があった。


「嫌な感じ。」


侍女が心配そうに尋ねる。


「どうかなさいましたか?」


「いや。」


「なんとなく。」


レイナは首を傾げる。


前世から。


危険が近づいた時だけ感じる感覚。


理由は分からない。


でも。


体が警戒していた。


その時。


コンコン。


扉が叩かれる。


「レイナ。」


聞き慣れた声。


「カイゼル?」


扉が開く。


そこには、いつもより険しい表情のカイゼルが立っていた。


「今から余の近くにいろ。」


レイナは目を瞬く。


「急にどうしたの。」


カイゼルは答える前に、周囲を確認する。


「帝城内で不審な動きがあった。」


「……また?」


「ああ。」


レイナはため息をつく。


「アタシ、帝城に来てまだそんなに経ってないんだけど。」


「なんでこんなに命狙われるの。」


カイゼルは少し黙る。


そして。


「お前が悪いわけではない。」


「分かってる。」


レイナは笑う。


「でも、狙われる理由が多すぎない?」


その言葉に、カイゼルは何も言えなかった。


本当なら。


もっと早く気づくべきだった。


レイナは公爵家にいた頃から。


ずっと一人で耐えていた。


そして今。


皇帝の側にいることで。


さらに危険に晒されている。


「レイナ。」


「ん?」


「余の側から離れるな。」


真剣な声。


レイナは少し驚く。


「そんなに危ないの?」


「ああ。」


カイゼルは迷わず答えた。


「お前を狙う者は、次は必ず失敗しないよう準備してくる。」


レイナは少し考える。


「……分かった。」


「でも。」


「アンタも無茶しないでよ。」


カイゼルが目を見開く。


「余を心配しているのか。」


「そりゃするでしょ。」


「皇帝なんだから。」


「倒れたら国が困るじゃん。」


レイナらしい理由。


しかし。


その心の声には。


『死なれたら嫌だ。』


その想いが混じっていた。


カイゼルは一瞬、言葉を失う。


そして。


小さく頷いた。


「ああ。」


「気をつける。」


◇ ◇ ◇


その夜。


帝城の地下牢。


捕らえられた刺客の一人が、静かに笑っていた。


「無駄だ……。」


「何がだ。」


尋問官が睨む。


男は口元を歪めた。


「公爵家はもう動いている。」


「次は……。」


「必ず成功する。」


その言葉を聞いた瞬間。


尋問官の背後から声が響いた。


「次、だと?」


冷たい声。


そこに立っていたのは。


カイゼルだった。


「誰が。」


「何をする。」


男は震えながら顔を上げる。


皇帝の瞳には。


静かな怒りが宿っていた。

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