第二十二話 襲撃
煙が広場を包む。
人々は悲鳴を上げながら逃げ惑っていた。
「逃げろ!」
「子どもを連れて来い!」
怒号が飛び交う。
カイゼルはレイナを背中へかばう。
「余の後ろにいろ。」
レイナは煙の向こうを見つめる。
(……違う。)
「……違う。」
カイゼルが横目で見る。
「何がだ。」
「狙いはアンタじゃない。」
「アタシだ。」
その瞬間。
煙の中から黒装束の男が飛び出した。
短剣が一直線にレイナへ向かう。
しかし。
レイナは一歩だけ体をずらした。
短剣は空を切る。
「なっ!」
男が驚いた隙に、レイナは男の手首を掴む。
そのまま勢いよく投げ飛ばした。
男の体が石畳へ叩きつけられる。
「ぐあっ!」
レイナは男を見下ろした。
「喧嘩売る相手、間違えたね。」
さらに二人目が飛びかかる。
レイナは身を低くして懐へ潜り込む。
男のみぞおちへ拳を叩き込んだ。
「がはっ!」
男はその場に崩れ落ちる。
周囲の近衛兵たちが目を見開いた。
「つ、強い……。」
カイゼルも驚いていた。
(これほどとは……。)
その時だった。
三人目の男が屋根の上から飛び降りる。
狙いはレイナの背中。
カイゼルの瞳が鋭く光る。
「レイナ!」
レイナが振り返る。
だが、間に合わない。
カイゼルは右手を前へ突き出した。
「凍てつけ。」
次の瞬間。
地面から巨大な氷柱が突き上がる。
男の目の前で氷の壁となり、行く手を塞いだ。
「なっ……!」
男の動きが止まる。
その隙をレイナは見逃さなかった。
勢いよく踏み込み、回し蹴りを叩き込む。
男は数メートル吹き飛び、気を失った。
広場は静まり返る。
近衛兵たちでさえ言葉を失っていた。
レイナは軽く手を払う。
「終わり?」
その瞬間だった。
カイゼルがレイナの肩を掴む。
「まだだ。」
低い声だった。
その声と同時に。
カイゼルは周囲を見回す。
(まだ一人いる。)
心の声が聞こえた。
人混みの中。
殺意だけが、はっきりと響いていた。




