第二十一話 狙われた街歩き
帝都の街を歩くレイナは、次々と並ぶ店に目を奪われていた。
服屋。
装飾品の店。
食べ物を売る屋台。
どれも公爵家にいた頃には、自由に見ることすらできなかったものだった。
(普通に街を歩くって、こんなに楽しいんだ。)
「普通に街を歩くって、こんなに楽しいんだ。」
カイゼルは隣を歩くレイナを見る。
「今まで自由に出歩くことはなかったのか。」
レイナは少し間を置いた。
「……あんまり。」
「そうか。」
短い返事。
しかし、カイゼルの表情は少しだけ曇った。
レイナは慌てて笑う。
「でも今は違うじゃん。」
「だから大丈夫。」
カイゼルはレイナを見つめる。
「そうか。」
それ以上は聞かなかった。
レイナが話したくないことを無理に聞くつもりはなかった。
その時。
近くの屋台から大きな声が聞こえた。
「焼きたてのパンはいかがですか!」
レイナが足を止める。
(また美味しそうなものが……。)
「また美味しそうなものが……。」
カイゼルはすぐに気づいた。
「食べるか。」
「え、いいの?」
「ああ。」
レイナは少し笑う。
「アンタ、意外と甘いよね。」
カイゼルは首を傾げる。
「そうか?」
「うん。」
「もっと怖い人だと思ってた。」
その言葉に、カイゼルは少し黙った。
「……そう言われることは多い。」
レイナはパンを受け取りながら言う。
「でも、アタシにはそんな感じしない。」
その瞬間。
カイゼルの胸がわずかに揺れた。
今まで誰も、自分をそんな風に見なかった。
恐れるか。
利用しようとするか。
そのどちらかだった。
しかし、この娘は違う。
◇ ◇ ◇
その頃。
二人を尾行していた男たちは、路地裏で話していた。
「護衛の数が多すぎる。」
「正面からは無理だ。」
「ならば、混乱を起こす。」
男は小瓶を取り出した。
「人混みに紛れて騒ぎを起こせ。」
「その隙に近づく。」
計画は決まった。
◇ ◇ ◇
レイナたちは広場へ向かっていた。
多くの人が集まり、露店が並ぶ場所だった。
レイナは楽しそうに周囲を見る。
「帝都って本当に人が多いんだね。」
カイゼルは頷く。
「ああ。」
「だからこそ、注意が必要だ。」
レイナは苦笑する。
「やっぱり警戒してるじゃん。」
カイゼルは真剣な顔で答えた。
「当然だ。」
「お前に何かあれば困る。」
レイナは一瞬だけ目を丸くする。
(この人、さらっとこういうこと言うんだよな……。)
「この人、さらっとこういうこと言うんだよな……。」
その瞬間。
広場の中央で、大きな爆発音が響いた。
「きゃあああ!」
人々の悲鳴が上がる。
煙が広がる。
混乱した人々が一斉に逃げ始めた。
カイゼルはすぐにレイナの前へ立つ。
「動くな。」
低い声。
いつもの穏やかな雰囲気は消えていた。
「誰だ。」
「余の前で騒ぎを起こした者は。」
煙の向こう。
複数の影が動いた。




