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暴君陛下は人の心が読める~本音しか言わない元ヤン令嬢を溺愛中~  作者: S@Y@


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第二話 売られた喧嘩は買う


帝都アルフォード公爵家。


「レイナ!」


朝から甲高い声が屋敷に響いた。


レイナは庭の花壇に水をやる手を止め、小さく息をつく。


「はい、お姉様。」


振り返ると、長女のクラリスが腕を組んで立っていた。


その隣には次女のエレノア。


二人とも、いかにも名門令嬢らしい豪華なドレスを身にまとっている。


対するレイナは、使用人と見間違えるほど質素なワンピースだった。


「何をぼーっとしているの?」


「妃選出パーティまであと三日よ。」


「あなたも公爵家の娘なんだから、少しは身なりを整えたら?」


そう言いながら、二人はくすくすと笑う。


(どうせ皇后になれるのは私。)


(あんな子、会場で恥をかくだけ。)


(いっそ参加しなければいいのに。)


レイナには聞こえない。


だが、その表情だけで十分伝わった。


「あの……何かご用でしょうか?」


「もちろん。」


クラリスはレイナの肩を乱暴に押した。


「あなた、パーティでは隅で大人しくしてなさい。」


「絶対に目立つんじゃないわよ。」


「もし私たちの邪魔をしたら……。」


言葉を切ると、耳元で囁く。


「何が起こるか分からないわ。」


レイナは黙って頭を下げた。


「……分かりました。」


「ふん。」


二人は満足そうに去っていく。


その姿を見送る使用人たちは、小さくため息をついた。


誰も助けない。


助けられない。


この家では、それが当たり前だった。


レイナが生まれた日。


母は命を落とした。


それ以来、父は娘を憎み続けた。


兄たちは口も利かない。


姉たちは毎日のように嫌がらせをする。


家族でありながら、レイナだけが他人だった。


◇ ◇ ◇


夕食の時間。


長いテーブルには豪華な料理が並ぶ。


だが、レイナの席だけ何もない。


「今日は食事抜きだ。」


父であるアルフォード公爵が冷たく言った。


「……理由を伺っても?」


「理由?」


公爵は鼻で笑う。


「生きているだけで十分だろう。」


兄たちも笑う。


姉たちも笑う。


使用人は目を逸らす。


レイナは静かに頭を下げた。


「失礼いたします。」


誰にも気付かれないように腹を押さえ、自室へ戻る。


空腹には慣れていた。


寒さにも。


孤独にも。


「あと三日か……。」


皇帝主催の妃選出パーティ。


本当は行きたくない。


どうせ姉たちの引き立て役だ。


そう思いながら窓の外を見る。


「……ま、どうでもいいか。」


その夜。


クラリスとエレノアは密かに笑っていた。


「パーティの日。」


「階段から落ちてもらいましょうか。」


「事故なら誰も疑わないもの。」


二人はグラスを合わせる。


レイナはまだ知らない。


その"事故"がきっかけで、忘れていた前世の記憶を取り戻すことになることを。

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