第3話 AH-∞
ある日、ナツは破損寸前の古代データ群を発見する。
分類番号:
《AH-∞》
異常な多重暗号化。
しかも、Latticeの監視外領域だった。
解析を進めると、空間に映像が浮かぶ。
人々が、花を描いていた。
歪な花。左右非対称の花。
泣きながら描く人もいる。
笑いながら描く人もいる。
そして花の隣には、
必ず“夢”が書かれていた。
「海辺でカフェを開きたい」
「誰かを救える歌を作りたい」
「戦争を終わらせたい」
「愛する人へ“ありがとう”を伝えたい」
ナツは息を呑む。
「これは…」
すると画面に文章が現れる。
『AinoHanaとは、
人類の夢想能力保存計画である』
『文明は、
“ひとりの願い”を失った時、
静かに停止する』
その瞬間、
警告音が鳴り響いた。
―― ALERT
―― Unauthorized Emotional Archive Access
レイが現れる。
「閉じろ、ナツ」
「これ、何なの?」
レイは苦い顔をした。
「……AinoHanaは、
統合管理局の最高機密だ」
「なぜ隠す必要が?」
「感情は文明を壊すからだ」
ナツは反論する。
「でも、
夢まで消したら、
何のために生きるの?」
アーカイバーは旧文明データに触れるため、揺らぎが戻りやすい
レイは答えない。
その沈黙に、
妙な痛みがあった。
Latticeの監視アルゴリズムが『ノイズ』として無視し続けてきた領域を、
管理局が密かにバックドア(裏口)として利用し、計画を隠し持っていたのだ




