7. 「役目」
「なぁ·····まだ来ないんだけど」
「うーん···」
ついに魔術師になったアヴィスとアベル、そして、同じく魔術師になった村の子供──、「セド」は、何度目になるか分からぬ話題を再び持ち出し、頭を抱えて地面に突っ伏した。
「どうしよう·····」
鼻の先に突き刺さる芝生の先っぽを至近距離で睨みながら、アヴィスは呟いた──。
「1ヶ月経ったのに〝役目〟が分からない·····」
大抵の魔術師は二日、最長でも1ヶ月が経つ頃には自分の〝役目〟に気付く。
「なんかないの?ほら····今したい事とか」
〝地の魔術師〟であるセドの言葉に、自分の胸の内を探ってみる。
「したい事·····。旅には出たいけど、違う。他には·····」
声にならないうめき声を上げて頭を振るアヴィスを、アベルが呆れた目で眺める。
「フリッツさんも行っちゃったしなぁ····」
唯一、状況を解決できそうな〝導道の魔術師〟は、ほんの少し前に村を出たばかりである。恐らく今頃は、アヴィス達が行ったこともない所を歩いているのだろう。
───胸を焦がす旅への渇望と、謎の焦燥感に苛立つが、残念ながらこの村に魔術師に特別詳しい人間はいない。
つまり、どうしようもないのである。
「〝役目〟。かぁー·····。」
大きなため息をついて、アヴィスは芝生に寝転んだ───。
春の明るい光が、村を照らしていた。
◇◇◇
「そういえばアヴィス、そろそろあれ、──」
「ん?」
夕食の野菜炒めのもやしを噛みながら、アヴィスは母の言葉に顔を上げた。
「そう、〝天空の巨人〟!」
「····なんだっけ、それ」
どこかで聞いた事のある言葉だ。
「20年に一度、この村の上を通るんでしょ」
「でしょって言われても····そうなの?」
20年に一度、この村の上空を通る巨大な物がある。
岩と太古の魔法でできたその建造物は、恐れと敬意──、そして、人間の飽くなき探究心を込めて、───【天空の巨人】───と、そう呼ばれる。
いつだったか、絵を見た事がある。
村の友達の誰か──、「ランダ」だったか···の祖父が描いたものだったか····。
人間を象った土偶のような、奇妙な形をしたものだった。
巨大な····本当に巨大な岩を組み合わせてできているのか、絵を通して伝わるその不気味な重量が、今は、はっきりと思い出せる。
「見に行くでしょ、皆も来るらしいから」
「うん。お母さんは見たことあんの?」
「昔一回ね、」
〝天空の巨人〟·····。面白そうだ。
若干、楽しみに飛び跳ね始めた胸の奥にスープを流し込んで、アヴィスは空になった食器を重ねた。




