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熱界の魔術師  作者: 鰹会
1. 《熱界の魔術師》
8/14

7. 「役目」



 「なぁ·····まだ来ないんだけど」


「うーん···」


 ついに魔術師になったアヴィスとアベル、そして、同じく魔術師になった村の子供──、「セド」は、何度目になるか分からぬ話題を再び持ち出し、頭を抱えて地面に突っ伏した。


「どうしよう·····」


 鼻の先に突き刺さる芝生の先っぽを至近距離で睨みながら、アヴィスは呟いた──。


「1ヶ月経ったのに〝役目〟が分からない·····」







 大抵の魔術師は二日、最長でも1ヶ月が経つ頃には自分の〝役目〟に気付く。


「なんかないの?ほら····今したい事とか」


〝地の魔術師〟であるセドの言葉に、自分の胸の内を探ってみる。


 「したい事·····。旅には出たいけど、違う。他には·····」


声にならないうめき声を上げて頭を振るアヴィスを、アベルが呆れた目で眺める。


「フリッツさんも行っちゃったしなぁ····」


 唯一、状況を解決できそうな〝導道の魔術師〟は、ほんの少し前に村を出たばかりである。恐らく今頃は、アヴィス達が行ったこともない所を歩いているのだろう。


───胸を焦がす旅への渇望と、謎の焦燥感に苛立つが、残念ながらこの村に魔術師に特別詳しい人間はいない。


 つまり、どうしようもないのである。


「〝役目〟。かぁー·····。」


大きなため息をついて、アヴィスは芝生に寝転んだ───。

春の明るい光が、村を照らしていた。




◇◇◇



 「そういえばアヴィス、そろそろあれ、──」


「ん?」


夕食の野菜炒めのもやしを噛みながら、アヴィスは母の言葉に顔を上げた。


 「そう、〝天空の巨人〟!」


「····なんだっけ、それ」


どこかで聞いた事のある言葉だ。



 「20年に一度、この村の上を通るんでしょ」


「でしょって言われても····そうなの?」




 20年に一度、この村の上空を通る巨大な物がある。

岩と太古の魔法でできたその建造物は、恐れと敬意──、そして、人間の飽くなき探究心を込めて、───【天空の巨人】───と、そう呼ばれる。



いつだったか、絵を見た事がある。

村の友達の誰か──、「ランダ」だったか···の祖父が描いたものだったか····。


 人間を象った土偶のような、奇妙な形をしたものだった。

巨大な····本当に巨大な岩を組み合わせてできているのか、絵を通して伝わるその不気味な重量が、今は、はっきりと思い出せる。



 「見に行くでしょ、皆も来るらしいから」


「うん。お母さんは見たことあんの?」


「昔一回ね、」


 〝天空の巨人〟·····。面白そうだ。


 若干、楽しみに飛び跳ね始めた胸の奥にスープを流し込んで、アヴィスは空になった食器を重ねた。




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