怒りの矛先(2)
カルドが襲われた――その報せは、城に戻る途中だったエレンたちの耳にも届いた。
「何!?カルドが・・・!」
その報せを受け、エレンの顔は真っ青になった。同じくカルドが故郷のダンとカレンも、青ざめた表情でエレンを見た。
「それで、ザメク将軍は?」
「はっ!関所の兵が駆けつけると同時に、軍を率いて逃げ去っておられます!!」
「何という・・・!皆、このままカルドに向かう!!ここからなら、数時間もあれば着く!!」
こうして、一行は城から進路を変え、カルドに急行した。辿り着いた彼らが目にしたのは、荒れ果てた田畑や家々、そして憔悴した表情を浮かべる村人たちだった。
「これは・・・ひどい・・・!」
荒らされた故郷の姿に、エレンは馬から降りて呆然と声を上げた。すると彼らの到着を知ったジョセフが、マミヤと共に声をかけてきた。
「エレン!カレンに・・・ダンも・・・!」
「村長様!ザメク殿が、ここを襲ったと報せが入り・・・!」
「ああ・・・その通りだ・・・・・・あいつらを止めようとして・・・デインが・・・死んだ・・・!」
その言葉にエレンたち3人は、後頭部が殴られたような衝撃を覚えた。
「そんな・・・デインさんが・・・!?」
カレンが震える声で呟くと、マミヤが目を潤ませながらうなずいた。
「ええ・・・あの人は、最後まで勇敢だったわ・・・・・・どうか・・・あの人に、会ってあげて・・・・・・」
エレンたちはすぐ、デインの自宅を訪れた。そこではデインの両親や兄弟たちが、彼のあまりにも早すぎる死を悼んでいた。
「宰相様・・・・・・おいデイン、宰相様が来てくださったぞ・・・・・・」
年老いたデインの父親が、息子の亡骸に優しく語りかけた。エレンたちはデインの家族たちに小さく頭を下げると、デインの遺体と対面した。
「デイン・・・殿・・・・・・!」
眠っているかのようなデインの遺体を見て、エレンの目から涙が流れ始めた。カレンとダンも身を寄せ合合いながら、幼い頃から面倒を見てくれた兄貴分の死を悼んだ。
「息子は・・・ザメク様の乱暴な行いを、許せなかったそうです・・・・・・兵隊の乱暴を止めようとして、このような目に・・・!」
デインの母親が涙を流しながら、絞り出したような声でエレンに訴えかけた。デインの兄弟たちの悲痛な泣き声が、エレンの耳と胸を突き刺す。
「・・・許さぬ」
気が付けば、エレンは震える拳を握りしめていた。彼は低い声で呟くと、穏やかな表情をデインの遺族に向けた。
「皆様・・・心より、お悔やみ申し上げます・・・・・・デイン殿の死は・・・決して・・・無駄には致しませぬ・・・!」
「エレン・・・?お前、何をする気だ・・・?」
ダンがそう尋ねたが、エレンはその問いに答えなかった。彼はダンとカレンを連れてデインの家を後にすると、村の入り口で待機していたトール、そして100人の兵士たちに叫びかけた。
「このような蛮行、断じて見過ごすことはできぬ!!ザメク・ルアとその一党は、もはや我が国の軍にあらず!!力を恃み、罪なき者たちの命を奪った、逆賊である!!」
涙に濡れた目でそう言うと、エレンは馬に飛び乗った。
「誰ぞ、ルシウス将軍のもとへ行け!我らはこれより、逆賊たちを追討する!城には戻らず、我らに速やかに合流するように伝えるのじゃ!!」
「こ・・・このまま追いかけるのか!?無謀だぞ、エレン!!」
トールがエレンを諫めようとしたが、もはやエレンの耳にその言葉は届いていなかった。
「ダン、今すぐ城に向かい、陛下に告げてまいれ!ザメク・ルアは義姉上の乱に乗じ、さらなる乱を引き起こした!新たな逆賊を討ち取る旨、陛下にしかとお伝えするのじゃ!!」
「・・・分かった!カレン、トール殿、エレンを頼んだ!!」
ダンはすぐに馬を走らせ、エルドラ城を目指し始めた。同時に兵士の1人が伝令となり、ルシウスのもとに向かい始める。
「行くぞ!!何としてもザメク・ルアに追いつき、その首を挙げるのだ!!」
「おお!!」
こうして、100人足らずのエレンの部隊が、ザメクを追跡し始めた。一方、それを知る由もないザメクも、船に向かって兵を急がせていた。
「おら、急げ!!あのガキのことだ、すぐに俺たちを逆賊扱いして追ってくる!!その前に所領に戻って、戦の準備だ!!」
「おお!!」
ザメクが兵士たちに叫びかけていたのと、まさに同時刻。ついに、ザメクの所領で動きがあった。
「みんな!これ以上、ザメク様の横暴な行いを許すのか!?」
町の角に立ったマイスが、大声で人々に叫びかけた。
「あの将軍は、俺たちのことなんて何も考えちゃいない!!このままじゃ俺たちは、あの将軍に骨の髄まで搾り取られて、ついには命を奪われる!!あの男の理不尽を、これ以上許しちゃいけない!!」
「あーあ、マイスの奴、やっちまったな・・・・・・」
そんな友人の姿を、ジェイルは苦々しく見つめていた。しかし彼の予想に反して、人々はマイスを支持する声を上げた。
「そうだ!!俺たちは、あいつの奴隷じゃない!!」
「このままあの海賊に従ったところで、いいことなんか何もない!!」
「そうよ!!これ以上、あの人に従うなんて御免だわ!!」
人々が次々と、ザメクに対する憤りの声を上げる。マイスは驚くジェイルに笑みを向けると、人々に向き直って叫びかけた。
「よーしみんな!今こそ武器を取れ!!ザメク将軍がいない今こそ絶好の機会!!あの男を・・・この地から追い出すんだ!!」
「おお!!」
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