↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宰相殿のご決断  作者: 髙橋貴一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

77/126

新たなる宰相(6)

カルドの聞き取りを終えた翌日。エレンはダンに、ある指示を出した。


「すまんが、このまま衛兵と共に城に戻ってくれ。俺はもう少し先に進み、テネスの村まで行く」

「1人でか?大丈夫なのか?護衛もつけずに」

「いや・・・これは1人で行かねばならんのだ。衛兵たちには、適当に言っておく。わがままなのは百も承知だが・・・」

「それでも、行かねばならん理由があるんだろ?なら、深くは聞かないさ」


笑みを向けて言ったダンに、エレンは小さく頭を下げた。


「ありがとう・・・やはり、お前がいてくれてよかった」


こうして、ダンは衛兵と共に、一足先に城へと戻り始めた。エレンは馬を半日ほど走らせ、テネス村まで辿り着いた。


(ここがテネス・・・穏やかな場所だな・・・)


農民たちが畑仕事にいそしみ、子供たちが無邪気に駆けまわっている。どこかカルドを思わせる雰囲気に、エレンは心が温かくなるのを感じた。


しばらく馬に乗って進むと、エレンは1軒の館に辿り着いた。そこでは1人の若い女性が、村の子供たちに剣の稽古をつけていた。


「ジャンヌ様、お客人でございます」


稽古をつけていた女性に、若い侍女が歩み寄って告げた。女性――ジャンヌが目を向けると、そこには馬から降りたエレンの姿があった。


「あっ・・・おじうえ!!」


木の剣を握りしめたアランが、無邪気な笑みを浮かべてエレンのもとに駆け寄った。その体を抱き上げながら、エレンも笑顔で言葉を返した。


「アラン・・・元気にしていたか?」

「はい!いまははうえから、けんをならっておりました!」

「そうか。さすがは、アランの母上だ」


アランを下したエレンは、そこでジャンヌと視線を交わした。笑顔を向けるエレンとは対照的に、ジャンヌは複雑な表情を浮かべていた。




その頃。買い物で城下を訪れていたカレンは、そこで思わぬ人物と出会うことになった。


「あっ・・・サラ・・・さん・・・」


サラが苦手なカレンにとって、ここでの再会はあまり望ましいものではなかった。一方のサラも緊張したような表情で、カレンに言葉を投げかけた。


「カレンさん・・・エレンのこと・・・好き?」

「えっ?」


突然の問いかけに、カレンは思わず戸惑った。彼女は返す言葉に困り、逆にサラに問いかけた。


「ど・・・どうして、そんなこと訊くんです?」

「お願い。正直に答えて。あなた・・・エレンのこと・・・好きなの?」


表情こそ硬かったが、サラの目は本気であった。カレンは唾をごくりと飲むと、正直に己の気持ちを口にした。


「ええ・・・好きです。子供の頃から、エレンのことが好きでした」

「・・・・・・そう」


カレンの言葉に、サラの表情が暗くなった。それでもサラは自分を励まし、続けてカレンに問いかけた。


「エレンは・・・あなたのこと・・・好き・・・なの・・・?」

「ええ。エレンは私のこと、好きでいてくれてます。いつかは、結婚したいとも思っていますから」

「け・・・結婚・・・!」


カレンの言葉に、さすがのサラも衝撃を覚えた。まさかこんなにも自信満々に、結婚などという言葉をカレンが口にするとは、完全に予想外であった。


「・・・もしかして、サラさんもエレンのこと・・・好き・・・なんですか?」


そんなサラの反応を見て察したのか、今度はカレンがサラの気持ちを尋ねた。サラは戸惑ったような表情を浮かべつつ、小さくこくりとうなずいた。


「そうですか・・・・・・そのこと、エレンには伝えましたか?」


その問いかけに、サラは小さく首を横に振った。そんな彼女に、カレンははっきりとした口調で言った。


「そうですか・・・・・・サラさん。エレンはかなり鈍感な男です。好きなら好きとはっきり言わないと、エレンに気持ちは届きませんよ」

「そ・・・それは・・・」

「私は、あなたの恋路を応援することはできません。けれどこれだけは言わせてください。あなたのエレンを想う気持ち・・・一度はっきり、本人に伝えてみてください。そうじゃなきゃ、あなたきっと後悔します」


カレンの言葉に完全に圧倒されながら、サラは小さくうなずいた。


「う・・・うん・・・・・・」

「エレンは今、巡視でカルドに行っています。戻ってきたら、私がサラさんと話すように言ってみますから」

「本当・・・?ありがとう、カレンさん・・・!」


カレンに小さく頭を下げると、サラはその場から去っていった。カレンはその背中を見送ると、誰に言うともなく呟いた。


「あーあ。何やってるんだろ、私。恋敵を応援しちゃうなんて・・・」


一方。カレンのもとから去ったサラは、屋敷の自室で歓喜の声を上げていた。


「エレンに・・・会える・・・・・・気持ちを・・・伝えられる・・・!」


だが同時に、ある恐怖が彼女の中に巣食った。もし気持ちを伝えたとして、エレンに断られてしまったら・・・・・・そんな彼女の恐怖を、先ほどのカレンの言葉がさらに煽った。


――エレンは私のこと、好きでいてくれてます。いつかは、結婚したいとも思っていますから――


「エレン・・・やっぱり、カレンさんと結婚しちゃうの・・・?嫌・・・私、エレンの奥さんになりたいの・・・!」


サラの胸に、熱い炎が燃え始めた。これまで自分でも感じたこともないほどの、燃え滾った熱い炎が。

ご覧いただきありがとうございます。

評価や感想をいただけると、とても励みになります。よろしければ、ぜひお願いいたします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。