幸せな結婚(6)
ここまでが、物語全体の第6章になります
年が明けた、レオナルド国王歴4年。ミアとウェイドの結婚式は、桜が咲き始めた春に執り行われた。
父から結婚を認められてから、ミアは毎日ウェイドの家に通い、熱心に怪我の手当てをし続けた。その甲斐あってか、年明けにはウェイドの怪我は完治し、再び衛兵の仕事ができるようになった。
2人の結婚式は、城下の教会で行われた。ミアが纏っているドレスは、この日のためにジャンヌとマリアが手作りした物である。飾りとして美しく咲いた花々が使われたが、その花は全て、ミアとウェイドが育てたものであった。
「素敵よ、ミア」
式の直前、ジャンヌとマリアと共に花嫁のもとを訪れたカレンが、心から祝福の言葉をかけた。ミアも目を潤ませながら、カレンに感謝の言葉を告げた。
「ありがとう、カレンお姉ちゃん・・・!私・・・絶対、ウェイドと幸せになるから・・・!」
その言葉に、カレンは目を潤ませながらうなずいた。マリアとジャンヌも顔を見合わせると、旅立つ義妹に祝福の言葉をかける。
「ミアさん・・・本当に、綺麗だわ」
「ああ。・・・ミア殿、そなたが進む道、決して楽なことばかりではない。それでも・・・夫を信じ、共に進むのだぞ」
「うん・・・!ありがとう、お義姉様たち・・・!」
式には、アルフォード家の盟友であるバルデッタ家の者たちや、カールを始めとするネルソンの腹心たちも招待された。それだけなく、ダンとエミル、そしてカイルといった、エレンの幼馴染たちも参列を許された。普段はアルフォード家との繋がりを悟られぬため、ダンたちは距離を置いて接していたが、故郷の幼馴染の祝いの席ということで、ネルソンが特別に許可したのだった。
「ウェイド・レスト。あなたは、これなるミアを妻とし、生涯共に歩むことを誓いますか?」
「はい。誓います」
「ミア・アルフォード。あなたは、これなるウェイドを夫とし、健やかなる時も病める時も、生涯を共にすることを誓いますか?」
「はい・・・誓います・・・!」
指輪が交換され、2人は誓いのキスを交わした。参列者全員に祝福されながら、2人の結婚式は幕を閉じた。
「ミア・・・本当に、おめでとう」
式が終わり、ミアがアルフォード家の者たちと交わす最後の時間で、エレンは妹に改めて祝いの言葉をかけた。
「うん・・・!ありがとう、お兄様!」
「ウェイド殿・・・どうか、妹をよろしくお願いします」
「はい・・・義兄上・・・!」
義兄弟となったエレンとウェイドが、互いに熱い視線を向けて言葉を交わし合う。最後に父のネルソンが、ミアに餞の言葉をかけた。
「ミア・・・この先何があったとしても、ウェイド殿を放してはならぬ。お前が決めた道・・・最後まで、ウェイド殿共に歩むのじゃ」
「はい・・・!ありがとう・・・お父様・・・!」
――こうして、ミアはウェイドの家で共に住むこととなり、アルフォード家を去っていった。マリアがリーフの体を抱きながら、息子のアランの肩を抱くジャンヌに声をかける。
「行ってしまわれましたね・・・寂しくなりますわ・・・」
「ああ。なれど、これはミア殿が選んだ道。我らはそれを、見守ることしかできぬ」
義姉の言葉に、マリアは小さくうなずいた。それと時を同じくして、エレンもまた、父と言葉を交わしていた。
「ミアは・・・幸せになれるでしょうか・・・」
「分からぬ。だが・・・わしはできる限り、あの2人の幸せを守っていきたい。大したことはできぬが、あの2人が歩む道、少しでも整えてやりたいものじゃ」
「ええ・・・私も、そう思います」
父に小さく頭を下げると、エレンは彼のもとを辞した。すると廊下で仕事をしていたカレンが、エレンに声をかけてきた。
「ミア・・・本当に、幸せそうだったわね」
「ああ・・・あいつが幸せなら、俺はそれだけでいい」
「・・・ねえ・・・私たちも、いつか・・・あんな風に・・・」
エレンの手に、カレンがそっと自身の手を重ねた。エレンはその手を優しくとると、温かい微笑みを向けながら言った。
「ああ・・・俺たちも・・・いつかは・・・・・・」
数時間後。ウェイドの自宅に辿り着くと、ミアは花畑を見つめながら夫に声をかけた。
「ウェイド・・・私たち、絶対に幸せになりましょう」
「ああ・・・私が、そなたを絶対に幸せにする」
ミアの体を抱き寄せると、ウェイドは暖かい微笑みと共に言った。
「だから・・・ついてきてくれ、ミア」
「ええ・・・!どこまでも・・・ついて行くわ・・・!」
互いの体を強く抱きしめると、2人は熱い口づけを交わした。たとえこの先、どんな障害が待っていようとも、必ず2人で乗り越えてみせる。ミアとウェイドは、それぞれの胸の内でそう誓っていた。
「・・・ふん。あのじゃじゃ馬娘が、衛兵風情に嫁いだか。はっ。貰う側も貰われる側も、互いに物好きなことよ」
その夜。娘のイリアの酌で酒を飲みながら、文官筆頭のバリーが吐き捨てるように言った。
「お父様・・・悪口はおやめください。他所の家のこととはいえ、今日はめでたい日なのですから」
「ふん。めでたいのはあやつらの頭の中じゃ。宰相ともあろう者が、たかが衛兵に娘をやるとは・・・」
酒を一気に飲み干すと、バリーは暗い表情の娘に視線を向けた。
「そなたにふさわしい男も、いずれ見つけねばならぬな。・・・だがその前に・・・あの目障りな成り上がり、そろそろどうにかせねばならぬ・・・」
「お・・・お父様・・・?」
――不穏の雲が、広がり始めている。それも、エレンが住む家の、すぐ隣の屋敷から。
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