↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宰相殿のご決断  作者: 髙橋貴一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/126

側仕え(2)

エレンがレオナルドと対面を果たしていた、まさにその頃――


「もっと腰を入れろ!戦場では、誰も手加減などしてくれぬぞ!」


城の大きな庭に、1人の若者の声が響く。彼は五将軍の一員、ランス・カロット。その目の前では、何十人もの兵士見習いが剣の稽古に励んでおり、その中に、エレンの仲間であるカイルの姿もあった。


「はあっ、はあっ・・・これが・・・お城の稽古か・・・!」


カルドで自己流の稽古をしていたにすぎないカイルにとって、ランスの稽古は想像以上に過酷なものだった。しかし、負けてなるものか、絶対に将軍になるんだという強い思いが、カイルの疲れ切った体を奮い立たせる。


「・・・そなた、初めて見る顔だな。名はなんという?」


そんなカイルの奮闘ぶりに目を引かれたのか、彼のすぐそばを偶然通りかかったランスが声をかけてきた。


「はっ!カ・・・カイル・ブレントと申します!先日、カルドの村からやってまいりました!!」


頭からつま先までピンと張りつめさせながら、カイルが大声で言葉を返した。


「カルド・・・では、宰相殿とは同郷か」

「はい!宰相殿のことは、子供のころから知っておりまする!!」

「そうか・・・いい面構えだ。そなたの名、覚えておこう」


カイルに一瞬微笑みかけると、ランスはすぐさま鬼のような顔に戻り、見習いたちに大声を飛ばした。そんな彼を喜びとともに見送りながら、カイルは再び剣を振るい始めた。



「そなたが、宰相殿が仰っていた見習いか。私はカール・マリク。宰相殿のもとで、行政に関する仕事をしておる」


それと時を同じくして、エミルはネルソンに紹介された、カール・マリクと対面を果たしていた。国の要職を担う人物と会えたことで、エミルの胸は激しく高鳴っていた。


「はっ!わたくしは、エミル・サラザールと申します!若輩者ではございますが、カール様や皆様より、様々なことを学びとうございます!!」

「うむ。では、このお二方についても紹介しておこう」


そう言うと、カールは執務室にいた2人の役人をエミルに紹介した。


「まずは、ニール・フリント殿。主に、この国の財政に関わる仕事をしておられる」

「ニール・フリントじゃ。よろしく頼む」


カールより少し若い、中年間近のどこか気弱そうな男性が、エミルに笑顔で声をかけた。


「そして、ディエゴ・マッコイ殿。主に、司法に関する仕事をしておられる」

「ディエゴ・マッコイじゃ。・・・若いのに感心じゃな、役人になりたいとは」


白髪頭の老人であるディエゴが、感心したような表情で言った。エミルはカールとディエゴに順に頭を下げると、ディエゴの言葉に応えるように言った。


「わたくしは子供の頃より、物事の仕組みを考えるのが好きでございました。政も、いわばその延長線でございましょう」

「ほう・・・なかなか、口が達者な奴じゃな」


ディエゴの言葉に、ニールが思わず声を上げて笑った。カールはわずかに表情をほころばせたものの、すぐに隙のないまじめな表情に戻って言った。


「エミルとやら。我らの仕事は、決して生易しいものではない。先ほど、我らが主に取り組んでいる仕事を紹介したが、それ以外にも、教育や土木、そして宗教など、我らが携わるものは多岐にわたる。・・・その全てを、そなたの頭に叩き込めるか?」

「はっ・・・どこまでこの頭に収まるか、試してみとうございます!」



エミルがカールたちに力強く宣言した、まさにその頃。ダンの姿は、城の厩舎にあった。


「おい、聞いたか?首席顧問官様が、宰相殿を罷免すべしと国王様に上奏されたようじゃ」

「ああ、わしも聞いた。しかし陛下は、あくまで宰相殿を庇うおつもりだとか」

「陛下もお辛いであろうのう。身内からは宰相殿を切れと言われ、かといって宰相殿を切ってしまっては、この国のかじ取りはままならなくなるゆえな」


ネルソンの言葉通り、この厩舎では、様々な噂話を耳にした。兵士や武将、はたまた貴族や文官たちが、周りの目も気にせず好き放題に言葉を交わしている。まるで、厩舎で働く小者には、それらを聞かれても構わないとでも言わんばかりに。


(みな、不用心じゃな・・・・・・どこで誰が、耳をそばだてておるか分からぬというに・・・・・・)


今のところ、これと言ってめぼしい話はない。だが、いつそういう話が飛び込んでくるか分からない。ダンは馬の世話の仕事をしながら、注意深く聞き耳を立て続けた。



――そんな中、城の中で、ある動きがあった。


「所領に?」


執務室で書類を読んでいたネルソンが、書類から目を離してある人物に視線を向けた。その人物とは、ゴールとルーカスの葬儀でエレンに声をかけてきた、将軍のギル・スティークであった。


「はっ。先の敗戦がきっかけとなったのか、我が領内で騒がしい動きがあると、報せが参りました。直ちに所領に戻り、ことと次第によっては、兵を出して鎮圧したいと思っております」

「うむ・・・確かに、そういった動きがあってもおかしくはない。・・・だが惜しいな。そなたが今城にいてくれれば、わしも心強いのだが」


ネルソンがそう言うと、ギルはかしこまったように頭を下げた。


「そのように仰っていただけるとは、光栄の至り。なれど、我が領内で不穏な動きがあるとなれば、捨て置くことはできませぬ。・・・どうか、所領に戻ること、お許しくださりませ」

「・・・分かった。事が済み次第、すぐ城に戻ってまいれ。わしも今こんな立場じゃ、味方は1人でも多い方が良い」

「はっ。では、失礼いたします」


ネルソンに慇懃に頭を下げると、ギルは彼のもとを去っていった。ネルソンは小さくため息をつくと、再び書類の山に目を通し始めた。

ご覧いただきありがとうございます。

評価や感想をいただけると、本当に励みになります。よろしければ、ぜひお願いいたします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。