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宰相殿のご決断  作者: 髙橋貴一


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不忠の男(4)

ランスとルシウスが言葉を交わした翌日。討伐軍と反乱軍は、正面からぶつかり合うこととなった。


「進め!!敵を突き崩すのだ!!」


ランスは自ら槍を持って陣頭に立ち、数で劣る味方を鼓舞した。一方の討伐軍は数の優位を活かし、反乱軍を包囲して殲滅する構えを取った。


「数はこちらが有利じゃ!行け!踏みつぶせ!!」


かつて五将軍の筆頭であったゴードンの息子・ジェイクが、声を張り上げて部下に命令を下した。討伐軍の兵士は我先にとランスに挑みかかったが、ランスの自慢の槍さばきで、次々に返り討ちにあっていく。


「やるじゃないか。さすがランスだ」


ランスの奮戦ぶりを本陣で見ていたルシウスが、かつての仲間に称賛の言葉をかけた。数では圧倒的に討伐軍が有利なはずだったが、ランスが最前線に立つ反乱軍の士気も高く、容易に攻略することができない。


「これは・・・少し、まずいかもしれぬ・・・!」


戦況を見つめていたウェイドが危機感を覚え、背後に控える部下たちに叫びかけた。


「我らも出るぞ!!続け!!」

「おお!!」


ウェイドが率いる軍勢が、討伐軍の後詰めとして出撃した。彼らの加勢により、一時は討伐軍が有利になったが、反乱軍も必死の抵抗を見せ、討伐軍を何度も押し返している。


「敵は弱兵ぞ!!行け!!突き進め!!」

「おお!!」


ランスが戦場に響き渡る大声で叫ぶと、配下の将兵が雄叫びを上げてそれに応えた。反乱軍は勢いに乗り、討伐軍の包囲網を崩し始めた。


「くっ・・・!一度下がれ!!体勢を立て直す!!」


語詰めとして駆けつけたウェイドの部隊も、少なからぬ損害を負うこととなった。ウェイドは一旦味方を撤退させ、陣を立て直すこととした。


「よし・・・勝機は今ぞ!!突き進め!!」


敵が下がったのを見て取ったランスが、ここが好機と一気に突撃命令を下した。反乱軍は討伐軍の包囲を突破し、みるみるその本陣まで迫っていく。


「将軍!!敵が迫っております!!」


ルシウスのもとにも、戦況の悪化を知らせる報告が何度も届いた。しかしルシウスは冷静な表情を崩さず、馬の上で戦場をじっと見つめている。


「将軍!!」

「焦るな。そろそろ頃合いだ」


焦れたように叫ぶ味方に、ルシウスは余裕の笑みすら浮かべて言った。そんな彼の目の前では、ランスが自ら陣頭に立ち、反乱軍を率いて討伐軍の本陣まで迫っている。


「ランス・・・お前は本当に、馬鹿真面目な奴だ」


こちらに突っ込んでくるランスの顔が、ルシウスの目にもはっきりと見えた。だがルシウスは笑みを浮かべたまま、余裕の態度を崩さずに呟いた。


「だからこそ、こういう手が使えるんだよ」


ルシウスがそう口にしたその時、反乱軍の側面から、突如して兵の一団が姿を現した。その兵たちに、剣を抜いたトールが大声で叫びかける。


「今だ、かかれえええええええええええっ!!」


トールの命令一下、新たに現れた一団が一気に反乱軍に迫り、その側面に攻撃を仕掛けた。突然の攻撃に反乱軍は混乱し、中には同士討ちを始める者まで出始めた。


「皆落ち着け!!敵の伏兵ぞ、落ち着いて対処せよ!!」


ランスが馬上から叫びかけたが、混乱の極みに陥った味方を制御することは叶わなかった。勝利を確信したルシウスが、剣を掲げながら大声で叫ぶ。


「敵は崩れたぞ!!今だ!!攻撃!!」

「おお!!」


本陣を守っていた討伐軍の残存部隊が、ランス達を討ち取るために突撃を開始した。さらに、先ほど反乱軍に突破されたジェイクや他の武将の隊も本陣に引き返し、その結果、討伐軍は再び反乱軍を包囲する形となった。


「ここが勝負所!我らも続け!!」


体勢を立て直したウェイドの部隊も、味方に負けじと攻撃を再開した。ランスは必死に槍を振るい、何人もの敵を倒したが、ついに体力の限界が訪れた。


「ここまでか・・・・・・陛下・・・・・・この不忠者を・・・お許しくだされ・・・・・・!」


天を見上げて声を上げたランスの体を、討伐軍の兵士の槍が貫いた。それを皮切りに何本もの槍がランスを貫き、その体が力なく地面に落ちた。


「敵将ランス・カロット、討ち取ったり――!!」


ランスの首を取った討伐軍の兵士が、その首を掲げて高らかに叫んだ。この瞬間、後の世に『ランス・カロットの乱』と呼ばれる反乱は、幕を閉じることとなった。


「よし!!勝鬨を上げろ!!」


ランスが味方の将兵に叫びかけると、一斉に鬨の声が上がった。ルシウスはランスの首のもとまで歩み寄ると、目を伏せて祈りを捧げた。


「父上!!」


そんな彼のもとに、トールが駆け寄って声をかけた。ルシウスは息子に視線を向けると、笑みを浮かべてその肩を叩いた。


「よくやったぞ、トール。さすがは、俺の息子だ」

「はっ・・・!ありがたい、お言葉でございます!!」


トールは満面の笑みを浮かべながら、ルシウスに深く頭を下げた。ルシウスは再びその肩を叩くと、表情を引き締めて味方に叫びかけた。


「皆!!隊を整えよ!!我らはこれよりノルドに向かい、敵の残党を討ち果たす!!」

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