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宰相殿のご決断  作者: 髙橋貴一


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穏やかな日々(3)

カルドに2日滞在した後、エレンたちは城に戻ることとなった。


「みんな・・・どうか、元気でな」


別れを告げに来たエレンたちに、ジョセフが微笑みと共に言葉をかけた。


「はい・・・村長(むらおさ)殿も、どうかお元気で・・・」

「あはは、俺はもう60を超えたからな。ま、生きられるだけ生きてみるさ」


カルドを去る直前、エレンたちはカイルとデインの墓を訪れた。そして2人の墓に、村で摘んだ花の束を供えた。


(カイル・・・デイン殿・・・・・・俺はこれからも、この国のために生きてまいります。どうか・・・見守っていてくだされ・・・・・・)


カレンは目を潤ませて祈りを捧げ、ダンとエミルも厳かな表情で2人の墓を見つめた。サラはデインを知らず、リサはカイルのことも知らなかったが、エレンたちの姿に感じるところがあったのか、共に2人の墓に祈りを捧げた。


城に戻って1週間ほど経った後、エレンはカレンと共に、巡回としてヤヌイの地を訪れた。ヤヌイの地に着いた途端、色とりどりの美しい花々が、エレンとカレンを出迎えた。


「わあ・・・すごい・・・!」

「きっと、ウェイド殿とミアが植えたな。それにしても、見事なものだ・・・!」


領民たちの表情も明るく、町や村には活気が満ち溢れていた。彼らの姿を見るだけで、いかにウェイドがこの地で善政を敷いているかを、エレンは理解させられた。


「義兄上、義姉上・・・お待ちしておりました!」


ヤヌイ城に辿り着いたエレンとカレンを、城門で待っていたウェイドが笑顔で出迎えた。その隣には、同じく笑みを浮かべるミアの姿もある。


「ここに来る途中、領民たちの明るい姿を見ました。この地を、よく治められているようですな、ウェイド殿」

「いえ・・・私など、まだまだです。どうしたらこの地の民たちに、より良い暮らしをさせられるか・・・この2年間、ずっとそれを考えています」

「立派だわ、ウェイドさん。ミアも、ますます綺麗になって・・・」

「ありがとう、カレンお姉ちゃん。さあ、2人とも来て!せっかく来てくれたんだもの、どうしても見せたいものがあるの!!」


ミアは得意げな笑みを浮かべると、ウェイドと共にエレンとカレンをある場所に案内した。やがて一行が辿り着いたのは、ヤヌイ城のバルコニーであった。


「すごい・・・!綺麗・・・!」


バルコニーを飾る美しい花々に、カレンが思わず声を上げた。エレンもその花々に見とれながら、ウェイドとミアに問いかけた。


「これは見事・・・!すべて、ウェイド殿とミアが植えたのですか?」

「ええ。2年前に来たときは、ここは殺風景な場所でした。ミアが言ったのです。ここを、私たちの花でいっぱいにしようと」

「ヤヌイの皆も、領内に花を植えて育てることに賛成してくれたの!今ではこのヤヌイ一帯に、綺麗な花が咲き誇ってるわ!!」

「ええ、そうみたいね。・・・ここも、カルドと同じくらい、温かくて、優しい場所だわ」


カレンが目を細めながら、ウェイドとミアが作り上げた新たなヤヌイを褒めたたえた。エレンもそれにうなずくと、ウェイドに視線を向けて言った。


「ウェイド殿・・・あなたにこの地を託したこと、間違いではありませんでした。どうか・・・これからもこの地を、温かく、優しい場所としてお治め下さいませ」

「はっ!!義兄上のため、この国のために、この地の民とともに生きてまいりまする!!」

「ウェイド、私のためってことも忘れてない?」

「ああ。もちろん、そなたのためでもあるぞ、ミア」

「ミア、あまり調子に乗って、ウェイド殿を困らせるな」

「うふふっ。分かってるわ。冗談よ、ウェイド」



数日後。屋敷に戻ったエレンとカレンは、サラと遊ぶリサを見つめながら言葉を交わした。


「あの日・・・ゴール様とルーカス様が亡くなったと聞いた時から、私たちの全てが変わった。いろんな出来事があって、辛すぎる思い出もたくさんあるけど・・・・・・私たちの選んだ道、間違ってなかったって実感できたわ」


カレンの言葉に応えるように、エレンは感慨深そうな声で言った。


「そうだな・・・あれから、もう6年が経った・・・・・・失ったものは多いが、それでも俺たちは、この国で前を向いて生きるしかない」


カルドから戻って来たときは、まだ19歳の若造であった。しかし今や、エレンは25歳。父の後を継いで宰相になってから、もう4年の月日が経っている。


「お前の言う通り、変わったものはたくさんある。だが・・・今も変わらずに、残っているものも多い。その1つが・・・お前への想いだ」

「エレン・・・」

「カレン・・・子を産めないことで、お前が悩んでいることは知っている。だが・・・俺にはもう、リサがいる。お前との間に、どうしても子供を作ろうとは思わん。俺はただ、お前が隣にいてくれればいい」


その言葉に、カレンが目を潤ませながらエレンに微笑みかけた。


「もう・・・余計なお世話よ・・・・・・だけど・・・ありがとう、エレン」


エレンの手を強く握りながら、カレンが感謝の言葉を述べた。エレンはそれに応えるように、カレンの手を強く握り返した。

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