死の遊戯(4)
エレンたちと別れたダンは、息も絶え絶えになりながら必死に陣所に駆け込んだ。
「ダン殿・・・!いかがなさいました!?」
陣所の警護に当たっていたエレンの義弟のウェイドが、走ってくるダンに驚きの声で問いかけた。
「ウェイド殿・・・大変じゃ!エレンたちが・・・曲者に襲われた!!」
「曲者に!?・・・して、義兄上たちは!?」
「何とか逃れたが、護衛の兵は全滅じゃ!!カレンが敵を2人仕留めたが、少なくとも、あと6、7人はいる!!すぐ・・・すぐこのことを陛下に!!」
「分かりました!しばし、お待ちを!!」
ウェイドはすぐに陣所に駆け込むと、レオナルドにダンから聞いた話を報告した。
「何!?宰相とその妻が!?」
レオナルドは驚いた表情で叫び、サイラスも驚いた風を装った。
「はっ!ダン殿の話では、曲者はまだ複数いるとのこと!・・・陛下、宰相殿は、我が妻の兄にあたる方でございます!死なせては、妻に顔向けができませぬ!!どうか、宰相殿を救うために、兵をお動かしくだされ!!」
「無論じゃ。衛兵たちは、すぐに宰相たちを助けに向かえ!!」
「はっ!!」
レオナルドの命令で、ウェイドを始めとする衛兵たちが、一斉にエレンたちを救出するために馬を走らせた。突然の事態にアレックスは怯えたのか、マミヤの腕の中で火が付いたように泣き始めた。
「大丈夫でございますよ、アレックス様。きっとウェイド殿たちが、宰相殿たちを救ってくださいます」
一方。何とか追っ手を撒いたエレンとカレンは、ひとまず森の入り口に身を潜めていた。
「まさか、このようなことになろうとは・・・・・・すまぬカレン。お前を、巻き込んでしまった」
「今更何言ってるのよ。私たちは夫婦、一蓮托生よ」
周囲を警戒しながらも、カレンは精一杯の笑みをエレンに向けた。そんな妻の姿が、今のエレンにはこの上なく頼もしく、またいじらしく感じられた。
「とにかく、早く陣所に向かいましょ。多分兄さんは、とっくに辿り着いてるとは思うけど」
「ああ。おそらく、陛下は衛兵を回してくださるはず。彼らと、何とか合流しなければ・・・」
と、その時。カレンは周囲に、激しい殺気を感じた。
「エレン、危ない!」
カレンがとっさにエレンの体にのしかかり、夫もろとも地面に倒れ込んだ。次の瞬間、2人が身を隠していた太い木に、1本の矢が突き刺さった。
「いたぞ!こっちだ!!」
「まずい・・・!カレン、走るぞ!!」
エレンは追っ手が近くに来ていることを悟り、カレンと共にすぐその場を逃げ出した。しかし相手もすぐに2人を見つけ、剣を手にしながら勢いよく走ってくる。
「ふんっ!!」
「ぐあっ!!」
カレンが走りながら弓に矢をつがえ、一旦立ち止まって矢を放った。その矢は追っ手の1人を射抜いたが、まだ相手は7人もいる。
「カレン、急げ!!」
エレンも矢を放ってカレンを援護したが、その矢は敵に当たることなく地面に刺さった。2人は必死に逃げたものの、相手はこちらを取り囲む隊形を作り、左右からも圧迫感を強めている。
「くっ・・・ここまでか・・・!?」
気づけば、2人は完全に包囲されていた。――もはや、逃げ切れない。そう覚悟した、その時であった。
「いたぞ!!急げ!!」
聞き覚えのある声が、遠くから聞こえてきた。エレンがそちらに視線を向けると、そこには馬に乗ってこちらに走ってくる、ウェイドとその仲間たちの姿があった。
「ウェイド殿!!こっちだ!!」
「良かった・・・!助かった・・・!」
ウェイドは馬を走らせながら、弓の弦を引き絞って勢いよく矢を放った。その矢はエレンたちの背後を取っていた敵に見事に命中し、これで敵の隊形が崩れた。
「義兄上!!義姉上!!」
ウェイドが剣を振り回しながら、エレンたちを狙う敵に切り込んだ。その剣が敵の1人を斬り倒すと同時に、ウェイドの仲間たちが馬に乗ったまま一斉に敵に突っ込み、エレンとカレンから引きはがすことに成功した。
「ウェイドさん・・・ありがとう!!助かったわ!!」
「礼には及びませぬ。お2人とも、お怪我は!?」
「いえ、幸い怪我はありませぬ。・・・それよりも、敵は数人、生かして捕えてください!!この襲撃の背景を知りたいのです!!」
「分かりました!!・・・皆、敵は数人生かして捕えよ!!」
ウェイドの指示で、敵と交戦していた衛兵たちの何人かが、敵の武器を叩き落として無力化させることに専念した。こうして襲撃者の大半は討ち取られ、2人の男を生け捕りにすることに成功した。
「皆、よくやってくれた。・・・そなたら、一体何者だ?なぜ私の命を狙った!?」
衛兵たちにねぎらいの言葉をかけると、エレンは厳しい表情を2人の襲撃者に向けた。
「我らは、ギル・スティーク様、及びザメク・ルア殿の遺臣じゃ!」
「我らが主を滅ぼした貴様に、復讐しようと狙っておった!しかし・・・このままでは、お2人に合わす顔がないわ!!」
2人は迷うことなく、同時に舌を噛み切って絶命した。エレンは複雑な表情を浮かべながらも、改めてウェイドに礼を述べた。
「ウェイド殿・・・本当に、ありがとうございました!」
「いいえ、私は当然のことをしたまで。陛下や王妃様も心配しておられます、一旦陣所に戻りましょう」
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