城への帰還(2)
「カレン!・・・待ってくれ、カレン!」
カレンの後を追いかけるうちに、エレンは以前、彼女に助けられた林の入り口にやって来た。カレンはそこで足を止めると、うずくまって嗚咽を漏らし始めた。
「カレン・・・なぜ・・・泣いてるんだ?」
「分からない・・・分からないわよ、私にも!」
エレンに視線を向けることなく、カレンは泣き続けながら叫ぶように言った。
「でも・・・あんたが、可哀想で・・・・・・あんたは・・・お城の窮屈な暮らしが嫌で・・・ここでの暮らしを取り戻したくて、戻ってきてくれたんでしょ・・・?それなのに・・・お兄さん2人が亡くなったばっかりに、またあのお城に戻ろうとしてる・・・・・・それが本当の気持ちじゃないことくらい、私にだって・・・分かるわよ・・・!」
「カレン・・・」
「それに・・・悔しいの。まるで・・・あんたに必要とされてないみたいで・・・・・・あんたは・・・一緒に来るも来ないも自由って、そう言ったけど・・・・・・それってまるで・・・私はいてもいなくてもいいって、そう言われたみたいで・・・・・・あんたが・・・そんなつもりじゃないのは分かってる。・・・分かってるけど・・・それが少し・・・悔しくて・・・!」
カレンは涙に濡れた顔を上げると、作り笑いをエレンに向けた。
「駄目ね・・・もう、何が何だか分かんなくなっちゃった。・・・私ね、たまにこうなっちゃうの。あんたの前では、なるべく見せないようにしてたけど・・・」
――もう、自分を抑えることはできなかった。エレンはカレンのもとに歩み寄ると、かがみこんでその体を強く抱きしめた。
「すまない・・・すまない、カレン・・・!」
自身もその目から涙を流しながら、エレンはカレンに謝罪の言葉を述べた。
「お前を・・・傷つけるつもりはなかった・・・・・・だが・・・城に戻ると決めたのは、他でもない俺自身だ。・・・そこに・・・みんなを無理やり巻き込むことだけは、どうしても避けたくて・・・・・・みんなに決断を任せたのは、それが理由で・・・・・・!」
言葉が、うまく出てこない。それでもエレンは、自身の本音をカレンに伝えたかった。
「本音を言えば・・・・・・カレンにも・・・城に来てほしい・・・・・・前にも言ったが・・・・・・俺はもう・・・お前のいない暮らしなど考えられない・・・・・・ダンもそうだ。俺はもう・・・2人とは離れたくない・・・」
「エレン・・・」
「しかし・・・あの城は、決して楽しい場所ではない・・・・・・むしろ・・・ここでの暮らしが好きな者からしたら、あまりにも窮屈で・・・醜い場所だと思う・・・・・・そこに・・・お前やダンを無理やり連れて行くのも、俺は嫌だ・・・・・・いっそのこと・・・お前とダンと、3人でどこかに・・・」
と、その時であった。近くの茂みから、ガサッという音が聞こえた。そこから感じる気配に、エレンの涙は止まることになった。――あの男だ。護衛という名目で、城から共にやって来た、あの男。もしこれ以上言葉を続ければ、自分だけでなく、カレンの身にも・・・もしかしたら、ダンにまで危害が及ぶかもしれない。
「・・・カレン。改めて言う。俺は・・・お前にも、共に城に来てほしい。・・・しかし、決めるのはカレン自身だ。俺に気を遣う必要はない。お前自身の意思で、共に来るかどうかを決めてくれ」
一瞬、両者の間に沈黙が流れた。その静寂を破ったのは、笑みを浮かべたカレンの言葉であった。
「もう・・・変に気を遣ってるのはどっちよ。来てほしいなら来てほしいって、素直にそう言えばいいのよ」
「カレン・・・」
エレンの目を見つめながら、カレンは力強く宣言した。
「行くわ、私も。あんたと一緒に」
「・・・!カレン・・・!」
再び涙を流しながら、エレンはカレンの体を強く抱きしめた。カレンの目を潤ませながら、エレンの体を強く抱き返す。
「カレン!よく言った!!よく言ったぞ!!」
次の瞬間、近くの物陰から飛び出したダンが、エレンとカレンの肩を抱いてきた。突然の兄の登場に、カレンが驚きの声を上げる。
「ちょっ・・・!兄さん、いつから!?」
「2人の話、さっきからずっと聞いてたんだ!カレン、よく決断した!それとエレン、お前はもっと素直になれ!自分の本音を素直に言えない奴に、誰が味方したいと思う!?」
「そ、それは・・・あくまで、みんなの意思を尊重したくて・・・」
「そういう言い訳はいい!来てほしかったら来てほしいってそう言え!・・・2人のおかげで、俺も踏ん切りがついた。エレン、俺も一緒に行くぞ!俺にできることなんかたかが知れてるが、それでもお前のこと、全力で支えてやる!」
「ダン・・・!」
ダンの決意は、本物であった。エレンはさらに涙を流すと、カレンから手を離してダンの体に抱き着いた。
「ありがとう・・・!ありがとう・・・ダン・・・!」
「おいおい、抱き着く相手が違うだろ!ほらカレン、お前からも何とか言え!」
「ふふふっ・・・いいじゃない、こういうのも。男の友情って感じで」
「それはそうかもしれんが・・・おいエレン、いつまで泣いてる!?ああもう、涙と鼻水で服が汚れる・・・!」
ダンに文句を言われながらも、エレンは泣き笑いしながらダンの体を抱き続けた。自分が最も愛する2人が、故郷を捨ててまで自分を支えてくれる。今のエレンには、それがたまらなく嬉しかった。
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