女たちの戦い(6)
ここまでが、物語全体の第17章になります
サラに子供が生まれたことは、その日の内に、ダンとトールにも知らされた。
「べろべろばあ!リサ、叔父上だぞ~!」
「いやいや、お前は叔父じゃないだろ。カレンとリサは血が繋がってないんだから」
「何を言うトール殿。この子はカレンの娘でもある、つまりは俺も叔父上じゃ。なあ、リサ」
「そ、そういうものか・・・・・・ああ、ダン、俺にも抱かせてくれ!俺だってもう1人の叔父上なんだぞ!」
ダンとトールがさっそくアルフォードの屋敷に駆けつけ、産まれたばかりの姪の体を抱いた。リサは全く2人を怖がることなく、屈託ない笑みを浮かべている。
「本当に、可愛らしい姫様だこと。・・・私たちも頑張らねばなりませんね、トール」
「ああ、そうだな、ニコル。あっ・・・みんなに紹介しよう。俺の妻のニコルだ」
「ニコル・バルデッタでございます。このような時に何ですが、お見知りおきを」
茶色い髪を腰まで伸ばした可愛らしい女性が、エレンたちに挨拶した。その一方で、孫を抱き上げたルシウスは笑みを浮かべつつも、少し複雑な表情を浮かべていた。
「可愛い子ではあるが、女の子だったか・・・・・・俺としてはぜひ、アルフォードの後を継ぐ男の子を産んでほしかったが・・・」
「舅殿、そのようなことは言わないでくださいませ。前にも言ったように、男の子でも女の子でも、我が家にとっては宝物でございます」
こうして、アルフォード家に新しい家族が1人増えた。エレンは早速、そのことを国王夫妻にも報告した。
「そうか・・・女の子であったか!」
「はい。おかげさまで、健やかな子が生まれました」
「おめでとうございます、宰相殿。子育ては大変でございましょうが、どうか、頑張ってくださいませ」
「はっ。時に・・・アレックス王子のご様子は、いかに?」
「気になるか。なら、自分の目で確かめるがよい。特別に、部屋に入ることを許そう」
レオナルドの許可を受け、エレンはアレックスの部屋に足を踏み入れた。そこには、穏やかな笑みを浮かべるアレックスと、彼を抱く乳母のマミヤの姿があった。
「宰相殿・・・お子が生まれたそうですね。おめでとうございます」
「宰相殿などと・・・おやめくだされ。今までのように、エレンで十分でございます」
「いいえ、あなたはこの国を動かす大切なお方。呼び捨てになどできませぬ。・・・して、今日は何用で?」
「陛下と王妃様のお許しを得て、王子のお顔を拝見しようと・・・」
「そうですか。・・・アレックス様。宰相殿でございますよ」
マミヤがアレックスにエレンを見せた瞬間、彼は火が付いたように泣き出してしまった。マミヤがすぐにあやし始めると、アレックスは彼女になついているのか、すぐ笑顔を取り戻した。
「どうやら、宰相殿のお顔は苦手なようでございます」
「あはは・・・どうやら、そのようですな・・・」
苦笑いするエレンの前で、マミヤはアレックスの頭を優しく撫でた。
「大丈夫でございますよ・・・この乳母めが、あなたをお守りいたしますゆえ・・・・・・」
そして、年が明けたレオナルド国王歴7年、春。アルフォード家に、大きな変化が起きた。
「そうですか・・・ダリオ殿のもとに、嫁ぐと・・・」
「ええ。あの方は、リーフにも好かれております。まるで本当の親子のよう・・・・・・あの方なら、きっとリーフの、2人目の父になってくれましょう」
昨年から、度々ダリオと顔を合わせていたマリア。次第に2人の距離は縮まり、サラがリサを産んだことを節目として、マリアは再婚を決めたのだった。
「寂しくなりますな・・・・・・なれど、義姉上がお決めになった道。私は・・・心から祝福いたします」
「ありがとう、エレン殿。・・・この家で過ごした思い出、絶対に忘れはいたしませぬ」
こうして、マリアはリーフを連れ、ダリオが当主を務めるモンティ家に嫁いでいった。彼女との最後の別れの際、ダリオがエレンに感謝の言葉を告げた。
「宰相殿・・・あなたのおかげで、長年の想いを成就させることができました・・・!本当に・・・ありがとうございます!!」
「いえ・・・ルーカス兄上も、きっと喜んでおりましょう。どうか・・・義姉上とリーフのこと、よろしくお願いいたします」
「ええ!必ずや、お2人は幸せにしてみせまする!!」
マリアが去り、ミアもウェイドのもとに戻ったことで、アルフォード家にはエレンとカレン、そしてサラとリサの4人のみとなった。義姉であるマリアが家を出たことで、エレンは名実共に、この家の主となったのだと実感した。
「我らの絆は、これからも変わらぬ。カレン・・・サラ・・・我ら3人で、共にリサを・・・この家を守っていこう!」
エレンの言葉に、カレンとサラは顔を見合わせ、笑みと共にうなずき合った。正室と側室の壁を越え、2人はエレンを愛する同志として、この家のために尽くすことを誓うのだった。
「うーん・・・可愛いのう、アレックスは」
一方。レオナルドは愛おしそうに抱く息子のアレックスに、窓の外の城下の景色を見せていた。
「大きくなった暁には、そなたがこの国を継ぐのじゃ。その日を迎えるまで、この父も、より精進していかねばならぬ」
息子にそう言葉をかけると、レオナルドはさっと冷たい表情になり、誰に言うともなく呟いた。
「そのためにも・・・・・・そろそろ、わしはわしの政がしたいのう・・・・・・」
その言葉が、どこまで本気かは誰にも分からない。しかし、この国の主が口にする言葉は、時に多くの者の運命を、大きく動かすことになる。
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