79・道中にて
門をくぐって外に出て、街道を少し進んだところでテトとリトが影から出てきた。
だが瑠華はテトには乗らず、シンとサラにも歩くように促した。
「歩いていくんですか?」
「ああ、どうせ今日は野宿になるからね。例の魔物の縄張りに入る前で、休もうと思ってる」
「例の……サランヴィーネに行く街道に出るという魔物のことですね?」
「え?なんの話?」
サラが首を傾げていたので、シンが軽く説明をした。
それを聞きつつ、瑠華はちらりと後方を見て、ため息を吐いた。
ああ~面倒くせぇ………
今瑠華達は横一列に並んで、街道をゆっくり歩いている。
魔物のせいで、街道には人がいなかった。普段は商人や冒険者達がよく利用している街道だけに、もの悲しい雰囲気である。
「そんな魔物がこの先にいるんですね。ちょっと怖いな………」
「これからはこんなことばかりだ。慣れないとな」
「…………はい」
安心させるように頭を撫でてやれば、はにかんだようにサラは笑う。
「ところでサラは料理は出来るのか?」
「母の手伝いをしてしたので少しなら」
「そう。じゃあ、魔法はなにが使える?」
「私は地と風が使えます。魔力はCの緑です」
兄妹で魔法の資質が高いのか。
基本的に二人共、後衛だな。前衛は僕とテトで十分だろう。
けれど万が一、別行動になった時のことを考えると、シンに接近戦の術を教えておこう。
リトだけでは危ないだろうし。
でも一番大切なのは。
「………シン、サラ、今なにか感じないか?なんでもいい、違和感とか妙な気配とか」
瑠華に言われたシンとサラは、きょろきょろと辺りを見回すが、特になにも感じず困ったように瑠華を見る。
「……例の魔物、ですか?」
「残念。お前達もこれからは気配がよめるようにならないとな。人間相手でも、魔物相手でも、有利に立つためには」
「「はい」」
力強く返事をした二人に、瑠華は笑みを見せる。
「実はな、噴水広場からずっとつけてくる気配があるんだよ。それも複数ね。コッシュトーの街を出たら襲ってくると思ったんだけど、まさか夜まで待つ気かな……」
「成る程。だからテト達で行かなかったんですね」
「なんの目的でしょう?伯爵の手下でしょうか?」
「それは分からないけど、相手の気配は知っているんだよね」
なんか知ってるな~って思って記憶を探ったら、思い出したんだよね。
「え?お知り合いなんですか?」
「いいや、全く。でも一度会ったことがあるんだよ」
瑠華はルッシャートに入ってからコッシュトーの街に行くまで出逢った商人、ソロウと娘のスフィール、そして護衛の男達について話した。
後ろの気配は、その護衛達の気配だ。
「へぇ、そんなことがあったんですね。でもなんで後をつけてくるんでしょうか?」
「さあなぁ、最後まで随分睨んでいたし、悪意を持っているとは思うけどね」
「迷惑な話ですね」
サラが嫌そうな顔をしかめている。それをシンが頭を撫でて落ち着かせる。
「というわけで彼奴等はどうやらこのままついてくるみたいだし、気配を読む練習をする。先ずは人間と自然、魔物の気配くらい分かるようになれ」
「「分かりました」」
シンとサラって双子みたいな時があるな、と瑠華は面白そうに二人を見る。
男達は付かず離れずで一定距離でついてくる。
修行には丁度いい。
その後数時間歩き続け、空が茜色に染まり始めてから休むことにした。林を背にマジックテントを置き、その側で調理の準備をする。時間もあるし、人数もいるからと、瑠華が料理を作ろうと思ったからだ。
アイテムボックスの料理は基本的に、ダンジョン攻略中などの直ぐに食べられて動けるようにしたい時など用のものだ。
今までは作るのがめんどくせ……気が乗らなかったので食べていたけれど、作れる時は作らなければ。
ということで、サラに大きな鍋に具材たっぷりのスープを作ってもらう横で、シンには瑠華が捌いた魔物の肉を焼いてもらうことにした。
疲れた顔をして立っている二人に向かって、アイテムボックスから取り出した調理道具と、様々な食材を示しながら話す。
シンもサラもずっとうんうん唸りながら気配を感じようとしていたので、頭が少し痛いようだ。米神をもみもみしている。
「サラはここにある物使ってスープを作ってね。味付けは君に任せよう」
「……はい」
「シンは僕が捌いたやつを片っ端から焼いていって。焼けたらこの葉っぱの上に」
「………大きいですね」
火から少し離れた場所に五メートル程の葉を置く。その葉に包んでアイテムボックスに入れておけば、いつでも食べられるからね。
「………さて奴等をどうするかな」
瑠華は、未だにこちらを窺っているが動く気配がない男達がいる方向を見て呟いた。
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