78・コッシュトーの街 その二
コッシュトーの街の門を過ぎて、挨拶をしたい人が居るというシンとサラと別れて、瑠華は宿屋を探していた。
と言っても雀の涙ほどの希望しか抱いていなかったが。
コッシュトーとサランヴィーネとの間の街道に陣取っているという魔物のせいで、コッシュトーの街には人が溢れている。
恐らく商人や冒険者が立ち往生しているようなので、宿屋も期待は出来ないだろう。
瑠華としては野宿でもいっこうに構わないが、シンはともかくサラのことを考え、一応宿屋を探しているということだ。
だが案の定、二軒程聞いてみたがどちらも満室だった。というか食堂で寝泊まりしている者もいる始末。
瑠華は早々に宿屋は諦め、昼食にしようと屋台が立ち並ぶ方へと歩を進めた。
さてなにがいいかなと、悩みながら歩いていると、マリアとムツキが串焼きの屋台を差したので、そちらに向かう。
店のおじさんに注文して焼き上がるのを待ちながら周りを眺めていたら、直ぐ近くにシン達の気配を感じた。
姿を見付けて声を掛けたら近付いてきた。
話を聞いてから、待ち合わせ場所を決めて二人から離れる。
特にこの街に用事なんてなかったが、どうやらサラは瑠華といると緊張するらしくぎこちないので、二人きりにしようと思っただけだ。
「主、お腹空いたわ」
「きゅう」
「了解。適当にぶらついて、その後冒険者ギルドにでも行きますかね」
面倒くさいけど、と呟いたらマリアに後頭部を叩かれた。
暴力は~んた~い!
相変わらずの食欲を発揮したマリアとムツキが満足するまで屋台を回り、その後冒険者ギルドへとやってきた。
ギルドの中も昼時だというのに、冒険者達が大勢隣接している酒場で騒いでいた。
速攻で帰りたくなった瑠華だが、マリアがちっちゃい手でタシタシ後頭部を叩くので、仕方なく空いている受付に行き、人族の女性に話しかける。
「すみません、Dランクの依頼ってありますか?ボードに無いんですが?」
何故か普通依頼が貼ってある筈のボードに、なにも貼っていなかったのだ。
E以下の依頼なら貼ってあるけれど(それも常時受け付けているようなものだったが)、D以上が貼ってない。
Aランク以上なら少し貼ってあったが、流石にDランクでは受けられない。
「すみません、今は冒険者の数が増えすぎて、需要が間に合わないのです。サランヴィーネへは大きく迂回しなければ行けないので、皆様困っているんです。
街道の魔物さえ討伐できれば………」
「強いんですか?」
「はい、もう何人も討伐に行きましたが未だに……」
ここまで来たらもう完璧に旗立ってますよね?出会っちゃう前振りですよね?
どなたか違うと言って?
「……魔物の情報お願いします」
「あ、はい。魔物はロックタートルで地属性、固い甲羅と強靭な顎を持っており、普通の装備では歯がたちません。
動きも俊敏らしく、接近戦は難しいかと」
「成る程。ありがとうございました」
「いえ、気を付けて下さい」
冒険者ギルドを出て、瑠華はシン達と待ち合わせをした噴水広場までやってきた。
中央の噴水の前にシン達は座っていた。
「お待たせ」
「ルカ様、このくらいで良かったですか?」
シンとサラが両手に抱えていた料理を受け取り、然り気無くアイテムボックスにしまう。
「あれ、食べないんですか?」
「後で食べるよ。ありがとうな。それよりもう街を出ようと思うけど、やり残したことないか?」
「え?もう出るんですか?俺は大丈夫ですけど」
「私も大丈夫です」
シンとサラ、それぞれに視線をやり確認すれば、ふたりとも頷いたので瑠華も頷き返す。
「なら、出発しよう」
瑠華を先頭に人混みを掻き分けて、サランヴィーネの港街に続く街道へと出る門に向けて歩き出す。
その三人の背後を数人の影が追いかけていた―――
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