60・次の目的地は
ギルドを出て適当な宿を探す。
以前泊まった、客を金づる呼ばわりする親子の宿屋は出来れば避けたい。どんなに宿として当たりだとしても避けたい。
だが門の近くの宿屋に寄り聞いてみても、どこも満員でなかなか見つからない。
あの宿屋なら空いてるかもしれない、あの親子だし、高級宿だしと偏見を混ぜて考え、最後に目に入った宿屋に聞いて空いてなかったら行こうと瑠華は諦めた。
けれど運は瑠華に味方した。
やっぱり毎日の祈りのお陰だね!
若干“小さい”感が否めなかったが、そこは華麗にスルーする。
少し古い感じの見た目だが、中は綺麗だった。
入り口から入ると、おっとりとした見た目の優しそうな女性が対応してくれた。
「いらっしゃいませ、お泊まりでよろしいですか?」
「はい、一泊の朝食付きでお願いします」
「では銀貨一枚と銅貨三枚になります」
瑠華はアイテムボックスからお金を出して、女将さんに渡す。女将さんの案内で部屋まで行き、鍵を貰って中に入る。
部屋の中も清潔で良かった。
いつも通りフードから出たマリアとムツキが、ベッドに飛び乗り寝そべった。
二頭が出たのでフードを頭の後ろにずらす。
「ふぅ、この街では失敗ばかりだな」
影から出たテトに愚痴ってしまう。それほどにこの街での全てが失敗に終わっている。
「ランクのことか?」
「それもだけど、あの親子の宿屋も魔物の素材を売却して戻ってこなくちゃいけなかったことも」
「確かに魔物の売却はサランヴィーネの方が良かったとは思うな」
そうなんだよね。本当に失敗ばかり。
ランクXの依頼、ヒカエルの鱗を一枚。
ヒカエルの生息域で大量の普通サイズとデカガエルの鱗、一枚を手に入れている。
だから普通サイズを五枚納品した。流石にデカガエルの鱗は出せなかったが。
EランクからDランクに上がるポイントを考えると、それでもDランクにはならないと思ったんだけど。
失敗ばっかり。
「付き合わせて悪かったな」
「何を今更。それにこんなことは謝られるようなことじゃないさ。我等は主と一緒なら何処にいても、何をしていても楽しいのだから」
「そうね。私達の為に謝らないでほしいわ!」
「きゅうきゅう!」
テト、マリアの言葉と同意するようなムツキの鳴き声に嬉しくなり、心からの笑みが浮かぶ。
「ただし文句は言わせてもらう」
「それも当然ね!」
あ、それは言うのね。
「甘んじて聞かせて頂きます」
従魔達がいなければ、旅が楽しいものだって気づけなかっただろうからね。
「そういえばここを出た後は、真っ直ぐサランヴィーネに行くのか?」
「そのつもりだよ。サピセスから見ると右側になるから、手前の国境を抜けないとね。サランヴィーネでリトと合流だね」
ヴァルザ火山から出たならコッシュトーの街になるけど、サピセスからだとサランヴィーネの方が手前になるからね。
「時間を考えるとシン達はコッシュトーの街で一夜を明かしてるだろうね」
「なんだ、気になるのか?」
「……………………かも、ね」
自分でも不思議だけど、シンの事が頭の片隅に引っ掛かってる。どうやら自分でも気付かない内に、“興味がわいた”ってことかな?
「まぁ、今更言っても遅いけどね。次に逢うのは当分先だろうしね」
「分からないぞ?案外、サランヴィーネでリトと一緒に待ってるかもしれないな」
それは旗を立ててるの?
「今日はもう寝る」
ローブなどの服を脱いで『清潔』の魔法をかけて畳み、寝間着用の簡素なシャツとズボンに着替える。
「主が食べないならいらない」
マリアが寝そべったまま答えた。
いつもは食欲旺盛なのに、僕が食べないと食べないんだよね。僕のことは気にしなくていいのにね。
寝る準備を整えてベッドに入る。夜の祈りを捧げて横になり、寄り添いながら眠るマリア達を撫でる。
「おやすみ」
ふにっ。
右目が押される感覚に目が覚めた。痛くはないが気にはなる。左目を開けて見てみると、マリアの足が右目に当たっていた。
どういう寝相しているんだ、君は?
もしや昨日夕食を食べなかった腹いせか⁉などとマリアの足をぺいっと退かしながら心の中で突っ込み、上半身を起こす。
ゆっくり深呼吸をしながら朝の祈りを捧げてから、ベッドを出てテトに声をかける。
「おはよう、テト。鍛練に行ってくるから二人をよろしくね」
「ああ」
目を閉じたまま返事をしたテトを撫で、部屋を出る。裏にちょっと狭いけど場所があったので、そこでいつもの鍛練をする。
いい汗をかいたので拭きつつ部屋に戻ると、テトがベッドに乗って丸くなりその上にマリアとムツキが寄り添っていた。
なんだ⁉あの幸せ空間は⁉
飛び付きたい衝動にかられゆっくり近付いていったら、察したのか三頭が顔を上げ体を起こした。ちっ‼
「おっと、そうだ…………ステータスオープン」
ヴァルザ火山でダンジョンの“核”を破壊した時、身体に変化があったのを思い出したので、確認してみることにした。
「やっぱり。ステータスが変わってる」
具体的にレベル、職業、称号に変化があった。
レベル 301
職業 普通冒険者(微笑)
称号 『ダンジョン破壊者』‥‥ダンジョンを消滅させた者に贈る称号 能力 空間魔法取得 空間魔法能力向上大
いよっしゃあああ‼職業が微笑になった‼やった‼見たか、セラ‼
といけない、いけない。冷静に、ね。
レベルが三百の大台に乗った。
この世界のレベルには上限はないらしい。修行をしたり魔物を倒すなりすると、上がっていく。
一般人なら十前後。冒険者なら大体五十前後が普通。Sランク以上になると百を越えるけれど、ここまでくる者は極端に数を減らす。
二百を越える者など一握りだ。
それを踏まえると、瑠華の三百台がどれだけ異常なのか分かるというもの。
職業が普通冒険者になっている。Dランクになったからかな。(微笑)は凄く嬉しい!いや、普通はこんな表示ないからおかしいんだけど、(嘲笑)よりはねぇ……………
称号の『ダンジョン破壊者』はそのままか。能力の空間魔法取得ってもう持ってるしね。でも向上大は役に立つね、きっと。
ダンジョンで空間魔法を使うと便利だって書物で読んだことがあるのを、すっかり忘れてたよ。
魔法は使えないのが当たり前だったから、まだ慣れないな。
「何かあったのか?」
「うん、ステータスが変わってたよ」
「それは良かったな」
本当に良かった。特に職業がね。
嬉しくて口元が緩んでしまう。
「さて、では朝食を食べて出発しよう」
いい気分のまま出発したいね、ホント。
読んでいただいてありがとうございました。
中途半端です。すみません…………




