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52・二十階層のボス

 扉を開け中に入ると、部屋の中央に粲然(さんぜん)として佇む姿があった。

 その姿を見て思わず口角がつり上がる。


 「ふふ」

 「…………あ~あ」


 テトも敵の姿を確認して、次いで瑠華を見て呆れた声を出した。やれやれという風に首振り付きで。



 そんなテトの様子など気にしない。だって今の僕は気分上々ですから。



 「シン、絶対にそこから動くなよ。リト、マリア、ムツキ、シンを守ってね」


 三頭から力強い返事が返ってきて、瑠華は満足したように頷き返す。


 「テトはサポートよろしくね?」


 瑠華がニッコリと満面の笑顔でお願いするが、それに対するテトの返しは冷たい一瞥のみだった。



 「あれって、なんていう魔物ですか?」

 「あれはバシリスク種よ」

 「……………あれが、バシリスク……………」




 バシリスク


 それは爬虫類種の中でも、上位種に分類される厄介な魔物である。

 牙、爪そしてブレスに「石化」効果を持つ魔物だからだ。

 「石化」を防ぐ装備も魔法も勿論あるにはある。けれど「石化」自体が強力な状態異常で、装備と魔法で防ぐことは出来てもそれは永遠ではないし、完全でもない。

 装備は着けている部分のみであるし、魔法にいたっては効果が切れればそれまで。


 スキルには「石化状態異常耐性」があるけれど、それを持っている者は極僅か。


 しかもだ、バシリスクと聞けば真っ先に「石化」が頭に浮かぶが、それ以外でも厄介な部分がある。


 バシリスクの体は鱗で覆われており、竜種のような堅さを誇る。並の武器では歯が立たない。

 古代では竜種の仲間だと本気で信じられていたくらいだ。


 バシリスクを倒すには速度を重視した身体能力、硬い鱗を破れる武器、「石化」を防げる防具か魔法が必要になる。


 出会ったらとりあえず逃げようか?、なんて思って回れ右しちゃうような魔物なのだ。



 そんな厄介な魔物相手に、どうして瑠華は嬉しそうなのか?


 それは単純に強い相手と戦えることへの歓喜である。


 一言で言うなら、戦闘バカ。テトが冷たい視線を向けるのも納得できる理由だ。



 瑠華には「完全状態異常耐性」のスキルがある。だからバシリスクの「石化」を恐れなくていいから、余裕ぶっこいて真正面から向かっていけるのだ。


 他の冒険者から見たら、ズルくね⁉って言われるだろう。





 キングバシリスク

 レベル70 爬虫類種 属性 焔

 HP S(緑)  MP S(赤)

 スキル (そう)攻術 噛み付き 焔のブレス 尻尾殴打

 魔法 焔属性魔法上級


 状態 気合い





 バシリスクの王、か。

 バシリスクの九割は火属性で焔属性は滅多にいない。流石王って感じかな。

 スキルも魔法も油断出来ない強力なものばかり。しかも状態の気合いが気になる。


 これは苦戦しちゃうかも!



 言葉とは裏腹に心は踊り、口元は緩みっぱなし。


 テトが冷たい気配を含んだ睨みを向けてきているが、そんなことは気にならないほどだ。


 けれど相手を舐めてるとか、そういうことはではないからテトは睨むだけで何も言わない。



 先ずはミスリルの剣でお相手しよう。

 「細雪」は硬い鱗相手には使いたくないんだ。マジで。


 バシリスクは瑠華を見据え、飛び掛かるように前足に体重を乗せ尻尾が大きくそそり立つ。

 瑠華もそれに合わせ、剣を握り構えをとる。


 左足に“気”を巡らせて身体強化して一速飛びに相手の眼前に躍り出る。


 ミスリルの剣とバシリスクの爪がぶつかり、耳に痛い甲高い音を奏でる。



 瑠華は心から楽しそうに笑う。











 約三十分程バシリスクと激闘(端から見たら)を繰り広げ、バシリスクを地に沈めた。


 「あー!楽しかった!」

 

 瑠華は身体を動かし程よく汗をかいて、至極ご満悦の様子で言った。



 戦闘についてはちょっと人には言えないので、自重させて頂きます。

 深い意味は全くないけれど、褒められた戦い方ではなかったことだけはお伝えしておきます。



 瑠華は今、いつも目深に被っているフードを外し布で汗を吹いている。


 「見ていて凄く楽しそうでした。全然危なげがなかったし。本当にルカさんって強いんですね」

 「シン、あまり褒めないでちょうだい」

 「そうだぞ。調子に乗るなんてことはないが、褒められる行為でもない。というか我は張り倒してやりたい!」



 ふっふっふ。本当に楽しかったよ。久しぶりにこんなに戦ったからね。鍛練もいいけれど、やっぱり相手がいた方が遣り甲斐はあるし。



 キングバシリスクの死体をアイテムボックスに入れ、代わりにマジックテントなど休む準備を始める。



 テトが何か言いたそうに見つめてきていたが、どうせ説教という名の小言だからあえて気付かないふりをする。



 テトもため息を吐いて首を振り、瑠華に近付く。シン達も近付いてくる。マリアとムツキが瑠華の肩の左右に飛び移った。

 十階層と同じく、出口の扉近くにマジックテントを張りテトとリトが左右に丸くなって寝そべる。

 シンとともに二頭におやすみを言いながら撫で、テントに入る。マリアとムツキが奥のベッドに飛び乗り体を伸ばす。

 今日は触れ合いが少なかったから、寝る前に存分に愛でよう。



 マジックテントの中は昨日のままにしてあるので、ベッドの間にテーブルがある。

 シンとそれぞれベッドに腰掛け、アイテムボックスから料理を出して皆で食べる。

 マリアとムツキは瑠華の膝に乗り食事を取る。瑠華も二頭を撫でながら料理を摘まんでいく。



 あぁ…………癒される……………



 シンはそんな三人を見ておかしそうに笑っていた。








読んでいただいてありがとうございました。

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