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51・二十階層

 一九階層の草原は本当に広大で、二十階層への階段がある扉を見つけるのに苦労していた。

 しかも魔物達も今までのようにかなりの数がいて、囲まれぬように立ち回るにも骨が折れる。


 魔物達を(さば)きつつ周りに目を凝らすが、いっこうに見つからない。


 「ふぅ、参ったな。見通しが良いから早々に見つかると思ったけど、楽観だったか」

 「ここはダンジョンだから必ず壁があるはずなのに、それすら見つからないなんて…………」

 「外の世界の草原だと勘違いしてしまいそうだな」


 六人で探しているというのに。


 「はぁぁ……………面倒くさい…………」

 「マズイな、主がダメモードになりそうだ」

 「それはいけないわね。シン、早く扉を見つけなさい」

 「えっと、はい!」


 ダメモードまでカウントダウン開始!


 なんつって。





 …………………すみません、冗談でも言ってないと本当にだらけそうで。


 「あっ!ルカさん、右ななめ前方見てください!」


 突然シンに名を呼ばれ示された方に視線を向けると、まだ遠くだが小さく扉が見えていた。


 「やっとか。でかしたよ、シン!」

 「やれやれ、なんとか抜けられそうだな」


 周りに群がる魔物達を一掃して扉を目指す。





 その後は特に問題なく一九階層を抜けた。


 そして二十階層。この階層は普通の洞窟だった。


 「さて、二十階層にはボス部屋があるはずだ」

 「そうですね、今度はどんなボスでしょうか?」

 「ボスらしいボスであることを切に願う」





 二十階層は入り口の部屋から三本の道に別れており、その全てから濃い魔物の気配がする。

 ボス部屋にも簡単に辿りつけそうにない。


 とりあえず比較的に気配が一番少ない真ん中から行くことにする。

 ダンジョンは下に行くほどに広く複雑になっていくから、迷いやすい。

 一歩間違えるとダンジョンから出られなくなるので、地図を作ったり目印を付けたりしながら進む。



 瑠華は非常に迷路が得意で、目印等を置いたりしながら頭の中に地図を作っていく。

 ダンジョンで迷ったことはほとんどない。




 余談だが“(トゥーラ)大陸”には、混迷という名が付けられたダンジョンが存在する。

 文字通りダンジョンの中は一階層から迷路のようになっており、抜けるのも大変に困難になっている。


 混迷のダンジョンで攻略出来ずに死ぬ冒険者があまりにも多かったので、国とギルドが立ち入りを制限した。

 入れるのは国とギルドが定めた試験に合格した者のみとなる。


 【カイン】は試験に合格し、混迷のダンジョンを攻略している。




 くねくねと交差し複雑に絡む道を進み、漸くボス部屋に辿り着いたのは体感的に数時間は経った時だった。


 「お、あったあった」

 「ここで少し休みましょう」



 ここまでも戦い続けだったので、ボスに挑む前に態勢を整える為休憩を取ることにする。

 魔物の気配は遠くに感じるが、ここまでの道中で粗方(あらかた)倒しているので少しなら大丈夫だろう。


 「はい、シン、リト。魔力の方はまだ大丈夫か?」

 「ありがとうございます。魔力はまだBの赤なので余裕です」


 二人に中級体力回復薬を渡しながらシンに問いかける。


 以前ヤカサルの村でシンのステータスを見た時はBの青だったが、本来のシンの魔力の最大値はSの緑なんだそうだ。


 魔力がSの緑なんて一流と呼ばれる魔法使いでも滅多にいない。本当に商人にするには勿体ないとは思うけど、それは絶対に口に出してはいけないこと。



 扉の横の壁から少し離れた場所に、瑠華以外の者達が座り込む。瑠華は立ったままだ。

 床を含む洞窟の壁全体が、ほんわか熱を持っている。ほんわかなので全然耐えられるのだが、身体が熱をもった状態だとその“ほんわか”がウザったい。


 だったら立っていた方がマシ、ということだ。


 テトに寄りかかるという手もあるけれど、〔万年雪の雫〕の効果で逆に凍死しそうなので止めておく。


 アイテムボックスから〔細雪〕と普通のミスリルの長剣を取り出して、今まで使っていたミスリルの長剣をしまう。


 ここまでの戦闘で酷使しすぎていたので、刃こぼれをしていた。ミスリルの剣でも手入れ無しで使い続ければ当たり前だが。





 立ったまま目を閉じ、身体の力を抜く。気持ちを落ち着かせるように深くゆっくりと意識して深呼吸をする。

 身体に満ちる“気”と魔力。


 戦闘態勢を整える。




 「よし、皆いい?」

 「ああ」「ええ」「はい」




 全員の顔を見て一つ頷き、ボス部屋の扉に手を添える。


 ギィ、と重い音を立てて扉が開いていく―――









読んでいただいてありがとうございました。

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