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48・発見

 「さて、ちょうどいいから今日はここで休もう」

 「はい、分かりました」







 とりあえずボスについて結果だけを言うなら何もなかった。本当に何も。




 ちょっぴり一度気を抜いてしまったが、横から“怒気”という名の威圧を感じ直ぐに気を引き締めました。


 おっかないんですよ、うちの可愛いもふもふ従魔さんは。





 ただフレアスパイダーが全く動かないので、剣を左手に持って腰に構えたままこちらからゆっくり近づいて行くと、後十メートルというところでいきなり顔めがけて飛び掛かってきた。

 その速さは弾丸のようで驚いたが、抜刀の一閃で横に真っ二つにした。油断したまま近づけばやられていたかもしれない。


 普通の冒険者なら、ね。



 ボスはこんな感じで終わり。一応年の為に危惧していた罠なんかもなかった。


 というわけでこのボス部屋で休むことにした。



 ボス部屋は一度入ってボスを倒すと、その倒した者が部屋から出ない限り次が現れないという不思議空間である。


 次に待つ者の為にボスを倒したら直ぐに出るのがルールだけど、炎獄には次なんて居ないから気兼ねなく休める。



 「それにしても不思議な敵でしたね。目の前に敵がいるのに襲わないでじっとしてるなんて、初めて見ました」

 「魔物の中にはああいうのもいるよ。じっとして獲物が自分の領域に入るのを待つんだよ。自然界なら周りの環境に溶け込んでするものだけど、ここだと全くの無意味だよね」

 「成る程。確かに自然に紛れたら厄介ですよね。本当にいろんな魔物がいるんですね。今まであんまり見たことなかったから、なんか驚きです」




 ボス部屋の出口の扉の横で、壁を背に魔道具の“マジックテント”を出す。


 これはアイテムボックスと同じで、普通のテントに空間魔法をかけたもの。外からは普通のテントにしか見えないけど、中は部屋のように広い。

 広さは空間魔法をかけた術者によって変わるが、大体日本でいうと二十畳くらい?だと思われる。



 マジックテントはアイテムボックスと同様、フィンランディ公爵家の家宝で【カイン】の一度目の旅の時に渡された物。

 もう一度、心の中で両親に感謝の意を唱える。



 見張りは必要ないとは思うけど、テトとリトにお願いする。二頭が入り口の左右で丸くなったので、撫でながらおやすみを言いテントに入る。


 テントの中にはシングルベッドが二つ、テーブルと椅子二脚、小さい二段タンスが置いてある。どれもシンプルな作りで白で統一されている。

 これらは元々あった物で、ずっと使い続けている。



 マジックテントの中は外とは別空間だからか、暑さは感じず適温だった。


 マリアとムツキが瑠華のフードから出てきて入り口から見て奥のベッドの上に乗って寝そべった。



 なんだか拗ねているようにも見える。



 ずっと戦い続けでつまらなかったようだ。いつもはそれなりに会話したり構ってたりするけれど、今日は余裕がなかったから仕方ない。


 二つのベッドの間にテーブルを持ってきて、その上にアイテムボックスから適当に料理を出す。

 ベッドに座りマリアとムツキを撫でながら料理を摘まむ。


 行儀が悪いなんて言わないで?



 「ほらマリア、ムツキ、食べないのか?いつもの食欲旺盛さはどうした?」


 二頭はそっぽを向いていたが、元々怒ってはいなかったようで瑠華の膝に乗りもしょもしょ食べ始めた。


 それを見ていたシンがおかしそうに笑い、料理に手を伸ばす。


 「頂きます。それにしても貴重なマジックテントまであるなんて。もう何が出てきても不思議じゃないな」

 「あらシン、こんなので驚いていたら身が持たないわよ?主は非常識で規格外の化け物だもの。付き合うなら覚悟しなくちゃ!」

 「ええ⁉まだこんなものじゃないんですか?俺、大丈夫かな?」



 フム、失礼な会話が聞こえるね。



 「そして究極の面倒くさがりで時おりダメモードになっちゃうけど、世界で一番強くてカッコいい自慢の主よ!」

 「マリアはルカさんが大好きなんですね」

 「当然ね!私だけじゃなくて他の従魔達も、主の従魔であることを皆誇りに思っているわ!」


 けなしてからの誉め殺し?




 珍しくマリアが饒舌だ。いつもはほとんど話さず周りの会話を聞いていて、時おり会話に加わるくらいだ。


 瑠華と話をするときは、闇と月の魔法の一つ『心声しんせい』で話す。別に秘密の話をしているわけではないけれど。


 ムツキも料理を食べながら、うんうん頷いている。



 まぁ兎も角、機嫌は直ったようでなにより。




 「あっ、そういえば」


 瑠華はアイテムボックスから銀色の丸い物体を取り出す。


 「なんですか?それ」


 シンが瑠華の手元を覗き込み問いかける。


 「これはね、懐中時計。今12時になったところだから、この時計で8時くらいを目安に出発しようね」

 「えっ、時計まで持ってるんですか⁉ていうかあるなら使いましょうよ!」


 シンの尤もな言葉に苦笑が溢れた。


 「いや、街中だと鐘があるから使わないでしょ?だから買ったはいいけどどうも忘れがちになるんだ」

 「いやいや、街中でも時計があったら便利ですよ⁉普通あったら絶対に使いますよ⁉誰だって!」

 「そうかなぁ………鐘が鳴るんだから使わなくてもいいと思うんだよね。後は適当じゃん?」


 なんて言ったら、シンにそれはそれは大きなタメ息を吐かれた。


 「………………確かに究極の面倒くさがり……………」

 「でしょ?」


 シンとマリアが仲良しだ。良いことだね。





 話をしつつ食事をし、終わったら寝る準備をする。思いっきり水浴びをしたい気分だけど、『清潔クリーン』をかけて我慢する。

 マリアとムツキは食事を終えると直ぐに、ベッドの枕元に丸くなり規則正しい寝息を立てて既に夢の住人だ。


 シンは寝る準備が済むと、ベッドに座り真剣なそして不安で一杯の顔で俯いていた。


 瑠華が寝る準備を済ませベッドに腰掛けると、縋るように見つめた。


 「あの、ルカさん………………」


 瑠華は視線で続きを促す。不安の要因は分かるから余計な口は挟まない。


 「……………明日は見つかるでしょうか?」


 シンの質問には、瑠華は視線のみで返した。シンも明確な答えをほっしていないような雰囲気だったからだ。


 絶対にある、なんて無責任で気休めにもならない言葉など言いたくはなかった。


 「ここに来る前に言ったはずだよ。“行ってみなければ分からない”と」

 「………………」

 「僕に言えるのはそれだけだよ」

 「そう、ですね…………すみません…………」


 シンは小さな声で、おやすみなさいと呟き布団を頭から被ってしまった。



 ここに来るまで、ずっと普通に振る舞っていた。焦る気持ちを必死に抑えて。


 瑠華達はそれが分かっていたから、シンに合わせいつも通りに接していた。


 瑠華は出そうになったタメ息を寸前で抑え、夜の祈りを捧げてから横になった。





 瑠華は自然とゆっくり目を覚ました。時計を見ると6時を回ったところ。

 上半身を起こして朝の祈りを捧げて、ベッドから出る。そのまま外に出てテトとリトに挨拶をする。


 〔穏やかな風〕のローブを着ていないので、蒸し暑い。少しの間突っ立ってるだけで汗が流れてくる。その中で鍛練を始める。


 が、三十分もしないでギブアップした。汗が尋常じゃなかったので。脱水症状がでる前に水分補給してテントに戻る。


 その時、テトとリトが若干呆れたような視線を向けてきていたが、特に何も言わなかったので見逃してくれるらしい。


 ベッドではまだシンが寝ていたので、静かにマリアとムツキを愛でてまったりしていた。

 時計で7時半になったところで、シンを起こす。



 その後、皆でゆっくり食事をしてから出発の準備を整えて外に出る。


 「すみませんでした、ルカさん。今日もよろしくお願いします」

 「なんで謝るのか分からないけど、まぁ今日もよろしくね」

 「気にするなよ、シン。主についてこれるだけで立派だからな」

 「そうそう」

 「ふふ……………はい」


 そろそろ従魔さん達に抗議してもいいだろうか?







 ボス部屋を出ると、やはり昨日(かどうかは分からないけど)魔物がわんさか襲ってきた。


 全員で連携して魔物を倒しつつ、階層を進んでいく。







 そして只今一八階層、とてつもなく熱いです‼



 一八階層に入ってすぐ、床に溶岩が流れていた。そして二キロ程先に下に続く階段がある扉が見えていた。

 扉までは所々に陸地があるので、飛び越えながら行けばなんとか行けるだろう。


 問題はこの熱さだ。

 〔穏やかな風〕のローブを着ていて尚、熱さを感じるということは人には耐えられない熱さだということ。


 シンを見れば、大量の汗を流し今にも倒れそうだった。

 瑠華は急いで〔穏やかな風〕のローブを脱ぎ、シンに着せる。ついでに上級体力回復薬を渡す。


 「着ていろ。この部屋を出るまで脱ぐなよ」


 シンは緩慢そうに頷き、ローブをしっかり着る。まだ熱そうだが先程よりはかなりマシになったようだ。

 フードに入っていたマリアとムツキも一緒に移動させておいた。二頭も熱そうでフードの中で丸まっている。


 瑠華は普通の人よりは熱さに強い為、少しの時間なら大丈夫だろうが長時間いたら恐らく死ねる。


 急いで渡ろうと前方の陸地の位置を確認しようと見回すと、部屋の(すみ)にあるモノが見えた。



 …………………できればここでは見つけたくなかった。





 “それ”はシンが心から探し求めているモノだった。






読んでいただいてありがとうございました。


急いで書くもんじゃありませんね。読み返したら酷かったので、加筆しました。


一度読んだ方、本当に申し訳ありません‼

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