49・魔力の正しい使い方?
「あ~……………マジかぁ……………」
本当に、できれば別の場所で見つけたかった。
「何をしている!急がないと身体が持たないぞ⁉」
「ルカさん?早く行きましょう!」
テトとシンが先を促すが、瑠華は二人に視線を送ってから“それ”に注意が向くように首を動かす。
「「「………………!」」」
テトとシン、リトが瑠華の視線を辿って漸く“それ”に気付いた。シンが目を大きく見開き“それ”を凝視する。
炎晶石‥‥火の魔素の結晶体。純度が高く最高級品に分類される。
紅晶石‥‥焔の魔素の結晶体。純度が高く最高級品に分類される。
スキル「完全解析」で見ると間違いなかった。漸く見つけた。
「本当に炎晶石ですか?」
「ああ、間違いないよ」
シンが今にも飛び出しそうなので、肩を掴んで留めておく。
「でもどうするの?あそこまでの道はないし、足をつく場所もない。しかもこの熱さ。早くしないと死ぬわよ?」
リトもシンが飛び出さないように、シンの前に回り込みながら瑠華に問いかける。
瑠華はしばし考え込む。
その間にも大量の汗が流れていく。
「…………とある魔女っ子が言っていた…………」
「魔女っ子?」
突然不思議なことを呟きだした瑠華を、全員が注視する。
「困ったことに直面したならば……………」
「主よ、大丈夫か?」
テトがおっかなびっくり声をかける。
「とりあえず魔法をぶっぱなせばいいのだと!」
「うん!とりあえずなんか危険なことだけは分かりました‼」
何かする気だと、全員が後ろに下がり瑠華から距離を取る。
『ここは我以外、何人も生が赦されぬ死の世界。ここにあるは我が孤独のみ。我は孤独を受け入れその先に訪れる死を甘受する。故に我は全てを拒絶する。我が為に穢れなき白き死の世界を』
莫大な魔力の渦が瑠華の周りで荒れ狂う。瑠華は目を閉じて詠唱し魔力を解き放つ。
『絶対なる死と氷の世界』
瞬間、パキィィンという音が辺りに響き一面を白銀の世界に変えた。
「よっしゃあああ‼これぞ魔法の真骨頂‼」
思わずガッツポーズで叫んでしまった。
「……………ルカさんが壊れた?…………」
「フム、熱さで頭の中がふやけておかしな精神状態になっただけだろう。氷の塊でもぶつけてやれば正気に戻るさ、きっと」
うっさいですよ、外野。
ちなみに氷の塊をぶつけたら痛みで正気に戻るだろうけど、そのまま天に召されそうだね。
「魔女っ子はこうも言っていた…………」
「………………なんて?」
シンが一応聞いてくれた。
優しい子だね。
「押して駄目なら更なる魔力のごり押しだと!」
「とりあえず最初から最後まで非常識ということですね。分かりました」
諦めたような疲れたようなタメ息を吐き、シンが会話を終わらせた。
「兎に角これでもう大丈夫だね。早速取りに行っちゃおうっとハックショイ!」
瑠華の魔法により、部屋全体が凍っていた。先程までの蒸せ返るような熱さはないけれど、今度は寒すぎて凍死しそうだ。
瑠華は大量の汗をかいていたので余計に。
マリアとムツキがシンのローブのフードから出て、瑠華の両肩に乗り暖めるように体を擦り付ける。
もふもふふわふわしていて暖かくて気持ちいい。
「ありがとうね、マリア、ムツキ」
瑠華もお返しにすりすり撫で撫でする。お返しなのに瑠華の方が癒されてしまう。
三人がいちゃこらしている間に、シンはリトを伴い炎晶石の所まで氷の道を慎重に歩いていく。
「シン、転ぶなよ~」
「はい、大丈夫です」
シンの後をゆっくり歩きながら追いつつ、少しの希望を込めて言ってみたけれど、シンには含んだ意味まで伝わらなかったみたいだ。
残念………
「シン、そういう時は転ばないと」
「えっ、なんでですか?」
転ばぬように下を見ながら歩くシンは、振り返らずに聞き返す。
「その方が面白いだろ?絵的に」
「何を言ってるのかさっぱり分かりませんね!」
漸く炎晶石の所まで転ばずにたどり着き、シンは瑠華に向き直る。
「なんですか、絵的にって。まだルカさんが面白いからって言われた方が納得できます」
「勿論そういう意味もあったけど、あえて言わなかっただけだよ?」
「………………これどうしましょう?完全に氷に埋まってしまってますね」
「砕けばいいだろ?」
シンが見事なスルースキルを発揮した。ちっ。
テトはいつも通りに取り合わずに、えいっと前足を降り下ろし炎晶石と紅晶石を根本付近から割った。
それをシンが慎重に壊れないようにそっと持ち上げる。
「やっと………やっと手に入れた…………」
感極まったように抱き締めて涙を流す。
「これでまた……………」
暫くそのままでいさせてやりたいが、限界が近い。
「シン、君はこれからどうする?僕的にはこのまま同行した方がいいとは思うけど、早く地上に戻りたいならリトと戻ってもいいよ?」
「……………………いえ、このまま一緒に行かせて下さい。足手まといで微力な力しかありませんが、最後まで共に行きます」
シンの言葉に瑠華は優しく笑い頭を撫でる。
「君は足手まといなんかじゃないよ、大丈夫」
「…………ありがとうございます……………」
シンは少しだけ頬を染め、嬉しそうにはにかみながらお礼を言った。瑠華は静かに頭を撫で続けた。
「さて、じゃあ行きますか!」
「はい!」
氷に包まれた炎晶石と紅晶石をシンから受け取り、アイテムボックスに入れる。
後はこのダンジョンを破壊するだけだ。
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