44・ヴァルザ火山 その二
瑠華達が今いる場所は、火山の側面にある人が二人横に並べる位の道である。
この道は火口へは行けるが、入り口には通じてない。その手前で行き止まりになっている。
瑠華が降りたった場所は、その行き止まりから少し歩いた位置だ。
入り口から火口迄の道は、火山の中と外をくねくねしているが一本道になっている。
瑠華達がいる道と入り口からの道は、火口の手前で合流している。
更にヴァルザ火山には入り口がもう一つある。ルッシャート王国側の入り口だ。
元々ヴァルザ火山はトシュッゲル王国の領土だったが、戦争で敗戦し一時期ルッシャートに領土を奪われていた。
十数年後に奪い返すが、その間にルッシャート側に無理矢理入り口を作り、道を掘り進めて作り行き止まりの道に合流させた。
こうして複雑に三つの道は繋がっている。
「テト、リト、この先に進む前にこれを首から掛けてね。じゃないと辛いと思うから」
「もう既に辛い」
「……………確かに」
氷属性で氷山で生まれ育った二頭には、火山は辛い。本当は連れて来ないのが一番なんだろうけど、テトはともかくリトはシンの守役なので居てほしい。
瑠華のフードに入っているマリアとムツキは、〔穏やかな風〕のローブの「快適機能」のおかげで大丈夫。
瑠華がアイテムボックスから取り出したのは、雫型の宝石がついたネックレス。雫型の宝石は“万年雪の雫”で、絶対零度の凍気を放っている。
そのままでは周囲全てを凍らせてしまうので、装備者のみに効果が発揮されるように装備品として加工した魔道具だ。
ただ一つだけ、問題がある。“万年雪の雫”を装備した状態のテトとリトには、乗れなくなるのだ。
乗ると効果が及んでしまう。
だからここからは歩いて行くしかない。
前を瑠華とテトで行き魔物を蹴散らす、シンは自分をリトはシンと自分を守ってもらう。
テトとリトの首に“万年雪の雫”を掛けてから、火口に向けて歩き出す。
道中も魔物が何度も襲ってきた。ここは流石に避けるわけにはいかないから、瑠華が〔細雪〕でテトが自慢の爪で応戦し斬り捨てていく。
時おり上からや後ろから、シンとリトの方に魔物がいってしまう場合も、リトが爪で引き裂きシンが魔法でサポートする。
そうして蒸し暑い道を歩いていく。
勿論、シンの目的の物である炎晶石も忘れてはいない。
しかし精霊石は元々数が少ないから、そう簡単に見つからない。あるとすれば入り口方面より火口近くの方が見つかりやすい。
魔物と戦いつつ道の隅々まで見ていく。六人(人間二、従魔四)もいるので見落とすということもないだろう。
「そういえば、ルカさんはヴァルザ火山に来たことあるんですよね?」
「うん、一度ね。火属性の素材集めと火の精霊に逢いにね」
「やっぱりルカさんて精霊が見えるんですね」
「やっぱり?」
「はい、ルカさんなら精霊とか見えそうだったので。幻獣を従魔にしてるくらいだし。ルカさんみたいな非常識な人なら、あり得そうですから」
全く誉められてる気がしない。というか、誉めてないのか。
ちなみにテト達従魔の紹介は、今朝食事時に済ませている。
魔物を従魔にすることはよくあることだけど、幻獣が人に付き従うことはとても珍しい。
だからシンも、幻獣であるムツキを紹介した時は本当に驚いていた。
幻獣が付き従うくらいだから、精霊が見えても不思議じゃないってことらしい。
成る程。
「ルカさんはどうしてヴァルザ火山に来たんですか?」
「探し物をしに、ね」
「探し物、ですか?」
「そ」
ヴァルザ火山の中と外を出たり入ったりしながら進んでいく。もうすぐ火口付近に差し掛かっても、炎晶石は見つからない。
「おかしいな、これだけ火の魔素が充満してたら、炎晶石が出来ててもおかしくないのに」
「……………そう、ですね…………」
シンが何かを堪えるように小さく呟いた。あれだけ必死に求めていたんだ。見つからないことが悔しいのかもしれない。焦っているようにも見える。
その後も見つからなく、とうとう火口まで来てしまった。
「ルカさん、あれ何ですか?」
シンは火口にぽっかり口を開いているソレを見て、驚愕の表情で聞いてきた。
「何に見える?」
シンはアレを知っているのだろう。分かっていても聞かずにはいられなかった。
それほどにソレの存在は異質だから。
「…………………ダンジョンの入り口…………」
ダンジョンの入り口。
地面からぽっかりと、人が訪れるのを待つように開いた洞窟の穴がそこにはあった。
その時―――――
『人間がここまで来るとは珍しい……………』
厳かな声が、瑠華の頭の中に直接響いた。
読んでいただいてありがとうございました。
今回は少し短いですが、ここで切らせて頂きました。




