43・ヴァルザ火山 その一
銀色に変わった世界で、一人佇む瑠華。
寒っ‼心が‼
はぁ、最近沸点が低いなぁ。【カイン】の時も地球でも、もっと落ち着いてたと思うんだけどな。
急に異世界に来て情緒不安定なのかな?まだ?
フッ、そんな繊細な神経、前世からしてねぇし。
と自らノリ突っ込みをしていたら、後ろから気配が近づいてきた。テト、リト、シンの三人だ。
「また、随分派手にやったな」
「相変わらず主は、キレると危ない人よね」
「良かった。これがルカさんの“普通”だったら、付き合いを考えなおそうかと思いました」
三人の会話が聞こえたけど、スルーさせてもらった。
あとシン、君は結構いい度胸しているね?
それは口に出していいことではないよ?
「シン、ヒカエルから鱗を剥がしてくれ。ムリなら捨て置いて構わないよ」
「………………ここに商人の敵がいる…………」
シンは小さく呟き、リトとともに走っていった。瑠華はテトと伴い、離れた場所で座り込んでいる五人の冒険者達に歩み寄る。
「……………助けてくれてありがとう。本当に助かった」
「死ぬかと思った」
「体調が万全ならあんなカエルなんかに遅れをとらなかったのに」
「異常種と連続で遭遇するなんて、ついてない」
彼等は口々に何か言っていたが(一人は疲れ過ぎて話しすらできないらしい)、彼等のことなんかどうでもいい。
けれど気になることを聞いた。
「あのカエルの前に異常種を見たんですか?」
「ああ、レッドビーの異常種だよ。この先の林で遭遇したんだ。そちらは倒したんだが、夜も大分遅くなってしまって日が上るまで林で身を隠していたんだ。村に帰る時にあのカエルに出会ってしまったんだよ」
カエルだけに?
「本当に助かったよ。ありがとう」
「いえ、こちらとしても情報助かりました。異常種については懸念してたんです。しかしお仲間はあのままで?」
「…………仕方あるまい。連れて帰りたいが…………」
今いる場所からは遠い所に、一人倒れていた。身体は丸焦げでここから見ても死んでいるのが分かるほどだ。今は氷に埋まっているが。
彼等は動けるようになったら、ヤカサルの村に帰るそうだ。
彼等と別れ、カエルの鱗剥がしを手伝おうと一番面倒くさそうなデカガエルの死体に向かう。
「これもシンに押し付けていいかな?」
「デカガエルだけでもやってやれ」
確かにあのデカさだと、鱗も大きいだろう。しかも今は氷に埋まっているし。
瑠華はアイテムボックスから焔の魔石を取り出し、地面に叩きつけて割る。すると高温の炎が立ち上ぼりみるみる氷を溶かしていく。
「思うんだが、主は魔法が使えるのだから魔法でやったらどうだ?」
「面倒い」
「……………」
氷は数分で溶け、デカガエルの巨体が目の前に現れる。
「デっカ‼カエルデっカ‼やっぱりデカいよ!」
「間近で見ると凄い迫力だなぁ」
改めて見た異常さについ突っ込んでしまった。
このデカガエルの体の色をハッキリ見た時、唐突に閃いた。これがなんであんな名前なのか。
「そうか、分かった!このカエル、キャタピーエンペラーの要素が進化で表れたのか!」
キャタピーエンペラーとは、芋虫種の最終進化体の一つとして知られている魔物で、主に古い森や人があまり立ち寄らない高原などで目撃されている。
ここ“地大陸”でも存在が確認されていたはず。
体は進化したてで三メートル、成長すれば八メートルにはなるだろう。そして体の色は濃い緑。
このデカガエルも顔と体の全面は赤紫なのに、背中が赤紫緑が混ざった気色悪い色をしていた。
体のデカさ、色、そして名前。間違いない!
確認の為に「完全解析」で見てみたら、しっかり書いてあった。いつも必要な所しか見ないから、分からなかった。
「確かに言われてみれば、そうだな。また面倒くさい進化をしたもんだ」
話しながら鱗を剥がす。普通のヒカエルの鱗が数センチなのに、デカガエルは一メートル程もある。
ギルドに報告したら騒がれそうか。言わなきゃ分からないかな?いや、あの冒険者達がいるからダメだ。
遠くで休んでる冒険者達を見て、諦める。
仕方ない。売っぱらったら直ぐに街を出ればいいか。
周りに転がっているヒカエルは、剥がすのが面倒だったのでテトに頼んで集めてもらい、アイテムボックスに入れる。
その作業が終わると、シンが近づいてきた。
「ルカさん、こちらは終わりました。ここら辺にいたヒカエルは?」
「面倒だから、アイテムボックスに入れたよ」
シンがデカガエルに対して、気持ち悪そうにして見ないようにしていた。苦手なのかもしれない。
「じゃあ、行きますか?あの冒険者達はどうするんですか?」
「別にどうもしないよ。彼等も冒険者だ。自分達のことは自分達でやるでしょ。僕達はこのままヴァルザ火山に行くよ」
シンが頷いたので、テトとリトにそれぞれ跨がり林を目指して駆ける。
林に入り飛び移れる場所に向かって進んでいく。その間にも魔物の気配がしたり、横合いから飛び掛かってくるものもいたが、全て素通りした。
テト達の速さにはついてこれまい。
漸く飛び移れる場所に着き、テトから降りる。後ろにいたシンを振り返ると、リトに乗ったまま口を抑えていた。
「……………大丈夫か?」
「大丈夫じゃありません。うぅっ……」
どうやら速すぎて酔ったみたい。
瑠華は最初から平気だったが、常人には堪える。
速さ的には車の五十キロ程度だが、魔物を避けるために左右に避けたり木の枝から枝に飛び移ったり、只でさえ林は殆ど人も通らない獣道のような道で整備もされてないから、平地を走っても揺れるのだ。
これで酔うなというほうが酷だろう。
「少し休むか?」
「少しだけお願いします」
仕方なく、体感的に十分ほど休む。その間魔物が集まってきそうなので、魔物が嫌う匂いの果実を林に向かって投げておいた。
少しくらいならあれでいい。
アイテムボックスに入っていた果汁の飲み物を出し、全員に配る。
「でも本当にここにヴァルザ火山に行ける場所があったんですね。村で聞いた時は半信半疑だったんですけど。まぁ、普通の方法じゃ飛び移れないでしょうけど」
「風魔法か、僕のように従魔使いなら行けなくはないだろうけどね」
「良かったです。ルカさんに逢えて。ヴァルザ火山の入り口にいた騎士が、入れてくれなかった時はどうしようかと………」
シンは地面に座り、その隣にぺたんと体を伏せて休んでいるリトを撫でる。
「入り口に行ったのか?」
「はい、入れてほしいって頼んだんですが、追い返されてしまいました」
「……………入り口の騎士が不機嫌そうだったのは君のせいか?」
やれやれ、まぁ僕が行っても止められただろうし、結果は変わらなかっただろうから別にいいが。
その後シンの体調が落ち着くのを見計らって、出発する。といってもまたテトとリトに乗るので、今度は少しゆっくりめに走るようにする。
その前に十メートル以上の谷間を飛び越えるわけだけど。
「シン、怖かったら目をつむってリトにしがみついてなよ」
「そうします!」
「大丈夫よ。落としたりしないから」
シンは怖さから青ざめて震えていたので、リトが優しく落ち着かせるように言った。
「じゃあ、テトお願い」
「任せろ」
テトが力強く踏み込み跳躍して、ヴァルザ火山の側面にある細い道に着地する。
後ろを振り返りリトを見て頷くと、リトが駆け出して跳躍し瑠華達の横に着地する。
「シン、もういいよ」
「はぁ、怖かった…………」
リトにしがみついていた身体をお越し、谷間を見る。直ぐに怖くなって首を振り顔を反らす。
「さて、行きますか」
「はい」
とりあえずは火山の火口を目指すことにする。
読んでいただいてありがとうございました。
タイトル詐欺みたいになっています。すみません…………




