27・魔法を使ってみよう
頭につけているネックレスをペンダントにして名前を書き加えました。
ちょくちょく見直して書き加えたり消したりしてますが、細かい部分なので気にしなくて大丈夫かと。
ではどうぞ。
暖かな感触に包まれたまま目を覚ます。
テトを抱き枕にし顔にマリア、首の後ろにムツキと幸せ空間が広がっていた。
目の前のマリアにグリグリと額を擦り付ける。するとマリアも起きて頬を嘗める。ざらっとした舌の感触にくすぐったくて笑ってしまう。
「おはよう、マリア、ムツキ、テト」
挨拶をすると鳴き声の答えが返ってきた。
欠伸をしながら上半身を起こす。朝の祈りを捧げて眼鏡をかけてから、ベッドから降りて洗面所に向かい顔を洗う。
昨日も洗面所の鏡を見て気づいていたけど、やはり左目が黄金色だった。
魔眼の色。全ての魔眼が黄金色ではないけれど。
これは隠した方がいいんだろうな、やっぱり。この世界の住人で僕以外に黄金色の瞳なんて見たことないし。凄い目立ちそう。
人前では〔隠したいモノ〕のペンダントは外せないな。
皆で朝食を食べて、身支度を整えようと服を手にしてふと止まる。そういえば昨日は服に生活魔法の『清潔』をかけるのを忘れていた。
アイテムボックスから『清潔』の魔石を出そうとしてもう一度止まる。
今はもう自分で魔法を使えるんだったと思い出し、瑠華が魔力を練ろうとしたところで後ろから声がかかった。
「どうしたんだ?服を掲げてボーとして」
服を掲げたまま後ろを振り返れば、従魔達が不思議そうに見つめていた。
「う~ん、服に『清潔』をかけようと思ってさ。魔石じゃなくて自分で魔法を使えることを思い出したとこ」
「そういえば主はもう魔法を使えるんだったな」
昨日話をした時に魔法を使えることも話しておいたけど、忘れそうになるよね。【カイン】の時は魔法は使えないのが当たり前だったし、地球では魔法の概念がそもそもない。
瑠華は苦笑をし、服をベッドの上に広げる。その前に立ち目を閉じる。
身体の中に流れる力を意識して集中し感じる。
【カイン】の時に呼吸をするように使っていた“気”を感じ、それとは別の力が身体に満ちているのを感じる。
―――これが魔力。
今改めて自覚した魔力の力強さに笑みが溢れる。
生活魔法『清潔』の呪文は頭に入っている。
一つ深呼吸し目を開ける。魔力を意識して服を綺麗にするイメージを頭に浮かべて、左手を前に出す。
『不浄なるものを消し去り清らかな風を纏え、清潔』
身体から何かが抜ける感覚がして、魔法が発動する。
服が淡い光に覆われ、さっきよりは綺麗になったような気がしないでもない。見た目的にほとんど変わらないので正直、魔法がきちんと作用したのか分からない。
いや、魔力が抜けた感じはしたし、服は魔法特有の光に包まれたからちゃんと発動はしたはずだけど。
「…………………発動した、よな?」
「大丈夫じゃないか?さっきよりは綺麗になったと思うぞ?………………………気分的に」
「………………………ステータスオープン」
凄く不安だったので瑠華はステータスを確認してみる。
ステータスには確かに変化があった。
ただし全く嬉しくない変化が見えてその場で崩れ落ち頭を抱える。従魔達が心配そうに声をかけてくれた。
僕の心に癒しを‼
職業 見習い冒険者(嘲笑)
更に酷くなってるんですけど⁉セラ‼今度逢ったとき一発殴っていいかな⁉いいよね‼創造神だからって手加減しないよ⁉
嘲笑って辞書で見たことある?あざけって笑うんだよ?あざけるって相手をバカにしてるんだよ?
こんちきしょう――‼
はぁ、なんでステータス見ただけでこんなに精神を攻撃されなきゃいけないんだ…………
気を取り直してステータスを見ていく。職業の他にスキルと称号に変化があった。
スキル 魔技
称号 『魔法初心者』
スキルの“魔技”の部分に触れてみる。
“魔技”とは魔法に関するスキルの総称である。この部分に触れると習得している魔法に関するスキルを見ることができる。
これは他の“剣技”や“戦闘技”も同じだ。
スキル 魔技 生活魔法極 魔力制御極
おお、なんかやっと魔法を使えたんだって実感が湧いた。
今初めて魔法を使ったのに、生活魔法と魔力制御が「極」になってるのは、魔力を扱う時に重要とされるステータスの“知性”がSSSだからなんだろうな。
どんなに魔力が高くても“知性”が低いと上手く魔法を制御できなくて、暴走してしまう。
称号の『魔法初心者』はそのままか。この称号は魔法を使い続け上手く制御出来るようになると上がっていく。確か上級者になると補正か能力がついたはず。
まぁ、先は長そうだけど。
取り敢えず魔法はきちんと発動したようなので、瑠華は服と装備を身に付けて準備を完了させる。
フードを目深に被ると、ムツキはフードの中にマリアは右肩にテトは影に入る。
部屋を出て受付に行くと、従業員の男性が居たので鍵を渡して宿屋を出る。
サピセスの街は入ってきた門とは反対側なのでそちらを目指す。街はまだ起き出したばかりだから、通りを歩いている人はまばらだ。
門は既に開けられていて兵士が左右に立っていた。
「通行証の提示をお願いします」
通行証代わりの身分証になるギルドカードを見せる。ついでに昨日貰っていた仮の身分証も渡す。返す必要はないはずだけど、持っていても仕方ないので渡しておく。
兵士はギルドカードをチラッと見て返した。
ここの兵士はこんなんばっかか?
どうでもいいことなので捨て置こうと、ギルドカードを受け取り門を出る。門から少し離れた所でテトを呼んで、背中に跨がる。
「じゃあテト、先ずは目的地はサピセスの街だ。急がず焦らずけれど時間は短縮、目指せ五日で!」
「………………無茶を言うな………………」
「信じてるよ~~、テト=クラーラ!」
盛大なため息を吐き、テトが走り出す。テト的に駆け足、でも馬より速い速度で走る。
風が気持ちよく流れていく。
読んでいただいてありがとうございました。




