26・旅の行程
タイトルが後半ちょびっとだけ…………
タイトル考えるのが難しくなってきました。
ではどうぞ。
「ちょっと聞いてんの!あんたに言ってんだけど!早く退いてよ‼」
「俺達は疲れてんだ!っておい!聞いてんのか⁉」
どうやら彼女と仲間らしい男は僕に言っているとみていいかな?
後ろではまだ女が喚いていて、男が怒鳴っている。そろそろ語彙がなくなってきている。
アミーナは邪神の眷属に出くわしたみたいな恐怖にひきつった顔で瑠華を見ていた。
わぁ、なんか以前の旅でよく見たかけたなぁこの顔。そんな瞳で見つめられると…………………………クセになっちゃう?
そんなアホなことを瑠華が考えてると、しびれを切らしたのか男の方が肩を後ろから掴む。
瑠華は本当に小さくため息を吐き、肩を掴まれた手首を掴み身体を反転させながら足払いをかける。重い音を出して床にうつ伏せに倒れた男の頭を踏みつけると、グシャっと気持ち悪い音が辺りに響く。
次いでぽかんとしている女の首を鷲掴みし、足がつくかつかないかギリギリのところまで持ち上げる。
「動かない方がいいと思うよ?」
女の斜め後方にいた剣士風の男が、腰の剣に手を伸ばそうとするのを見て声をかける。
剣士風の男はどうするか迷うように瞳を揺らし、仲間が先だと判断したようで姿勢を正し軽く頭を下げた。
「仲間が失礼をした。どうか許して頂きたい」
「……あんたさっき止めようとしなかっただろ?」
「え?」
「さっきこいつらが僕に絡んできた時、あんたため息吐いてたけど止めようとしなかった。つまりこいつらはこんなことをよくやっているんだろう?」
「そ、それは…………」
剣士風の男が口ごもる。
この男は先程僕に女が文句を言ってる時、またかという感じでため息を吐いていた。それも癇に障った。
女は苦しそうに喘ぎ、瑠華の手を外そうともがく。
「ならばこういう状況も自業自得だろ?今までどうだったかは知らないけど、僕は大人しく従う気はない。そして許す気もない。お前達で三度目、不運だったと諦めるんだな」
瑠華の言葉に剣士風の男は顔を歪める。
僕としてはこれ以上どうこうするつもりはないけれど、脅しておこう。本当に常習犯っぽかったので。
「…………貴方には不快な思いをさせて本当にすまない。これからは俺が二人を止める。有り金を全部持っていっていいからどうか二人を許してもらえないだろうか?」
先程より深く頭を下げる。彼の後ろにいる更に仲間らしい二人も(ずっと武器を手に瑠華を睨んでいた)姿勢を正し頭を下げた。
瑠華はもう一度ため息を吐いて、肩越しに受付に視線をやりアミーナを見る。彼女は怯えた目で呆然と瑠華を見ていた。
こういうことに慣れてないんだろうかと若干呆れつつ、瑠華は彼女に声をかける。
「アミーナさん、処理は終わってますか?」
「………………………………はっ、はい‼大丈夫です‼」
アミーナが差し出したギルドカードとお金を受け取る。
首を掴んでいた女は既に意識もなく失禁していた。スッと手を離すと自らがつくった水溜まりに崩れ落ちる。
そのまま誰にも声をかけず、誰からも声をかけられずにギルドを出る。
宿に行き受付の男性から鍵を受け取り部屋に行く。部屋に入って鍵を掛けると、フードからマリアとムツキが飛び出してベッドに乗る。そして不機嫌そうに鳴いた。
「不愉快だわ」
「きゅう、きゅう」
「二人とも、僕の為に我慢してくれてありがとうね」
ベッドに座り、マリアとムツキを宥めるように撫でていく。
実はギルドでのやり取りの間、二頭から飛びかからんばかりの殺気が放たれていた。でもあの場で出ると瑠華が困ると理解していたから我慢していたのだ。
その時、影からテトが出てきた。
「やれやれ、主は本当によく絡まれるな。やはり呪われてるんじゃないのか?」
「……………それは言わないでほしい………」
【カイン】の一人旅の時から本当によく絡まれていた。
【カイン】だった時も今も身長は180前後あり、御しやすそうには見えないと思うんだけど。
一度絡んで襲ってきた男を血の海に沈めてから理由を聞いてみたら、綺麗な顔した優男だからいいと思ったと言っていた。
もう一度地獄を見せてやった。
一つの街のギルドで絡まれた時、過剰に返り討ちにしてやると避けられるようになるが別の街に行くと、また絡まれる。その繰り返しだった。
今日のように一日に二度絡まれることもあった。その時は過剰どころか心をへし折る感じで対処してやった。
クラン《紫紺の太陽》を創り有名になってくるとそういうことは少なくなったが、逆に腕試し的な奴が増えた。何故だろうか?
僕はもううんざりしていたのでクランのメンバーに押しつけたり、押しつけたり、押しつけたりしていた。
だって本当にうざくて面倒だったんだもの………
勇者と旅に出てからは絡まれることがまた増えた。というか以前より増えたように思う。
勇者は優しそうな可愛らしい顔をしているから、御しやすいと見えるらしい。
“勇者”という肩書きを隠していたせいでもあるだろう。
勇者は気は弱くはないので、絡んで手が出る奴は反撃していた。口だけなら笑って受け流していたけれど。
勇者の反撃は甘かったので、瑠華が追加で二度と襲ってこないよう地に沈めていた。
まぁ、それはそれとして疲れたので風呂に入ろう。
従魔達に適当にアイテムボックスから食事を出し風呂に向かう。
さっぱりして風呂から上がると、従魔達は食事を終えて各々ベッドで寝そべりまったりしていた。
瑠華もベッドに座り、今までとこれからの目的を話す。
「…………………という感じで僕は異世界から召喚されて、セラに逢って頼まれごとをされたから、これからまた旅をすることになったんだよ」
「成る程。今度は死ぬなんてことはなさそうだな。主が生きることを望んでいれば」
…………なんか嫌みを言われてしまった。ちょっと悲しい………
「………………最初はヴァルザ火山に行くからサピセスの街、ヤカサルの村経由で行こうと思う。サピセスの街はここから馬車で十日程か、途中に小さな村はあるけど寄らなくていいかな?必要なものはあるし」
今日調べた地図を頭に浮かべながら旅の行程を考える。
ヴァルザ火山、サランヴィーネの港街、コヴェーレン峡谷、ララフィウェートの魔窟、ウォレッテの街を地図の上から見ると、ここから一番近いのはサランヴィーネになるが、先にヴァルザ火山に行く。
他三つの場所は大陸が違うので、海を渡る必要がある。サランヴィーネから船が出ているのでダンジョンと一石二鳥になる。
位置的に少し戻る感じになってしまうが、こればかりは仕方ない。
「ふむ、分かった。直ぐに出るのか?」
「ああ、この街にいても気分が悪くなるだけだから」
テトが苦笑し、マリアとムツキがうんうん頷いている。
抱き着いて頬ずりしたい。
最初の目的地も確認し、明日早朝に出発することにしたので少し早いが寝ることにする。
年寄りみたいな規則正しい生活だなんて思っちゃいけないな、きっと。
従魔達と一緒に寝ても十分な広さがあるベッドに入り、眼鏡を外して夜の祈りを捧げてから横になる。
もっふもふに囲まれて気持ちよく眠ることが出来ました。
読んでいただいてありがとうございました。




