第三章 14 一発ツモドラ2役満
「な、何で僕が男だって分かったんです!? 見た目はどう見ても女の子なのに!?」
やはりそのことに気づいた紘が、驚いた声を発した。それを聞いたキウイが、ふふふと微笑んでから言った。
「だってあなたからは、男性の魔力を感じますもの」
「男性の魔力……。えっ、というか、僕にも魔力があるのか?」
「? ありますけど?」
キウイが首を傾げる。まるで何を当たり前なことを、と言っているかのようであった。
「(ちょっと乃子! いやハニー!)」
恒例のひそひそタイムである。
「(何?)」
「(説明)」
「(ただ単に魔力を無効化するだけじゃ面白くないから、体をこっちの世界の人と同じ仕様にしてみました)」
「(そういうことは事前に言っといて! てっきり無効化してるだけだと思ってたから!)」
「(しゅまん)」
「(可愛いから許す)」
『す、すごい一体感を感じる……』
ひそひそタイム終了。
「魔力を感じ取れるということは、キウイさんはその手の人なんですか?」
紘がストレートにそう訊いた。
「そうよ。私は魔術師なの」
メインターゲットを発見しました。クエストを完了します。
いや、実際は魔力を注いでもらうまでクエストクリアとはならないが、このクエストは条件に合う人物を見つけるのがほとんどだと言っていい。それがまさかの、一発ツモドラ2役満をしてしまうなんて。奇跡的な出会いである。
「すみませんが、魔力をチャージしてもらえないでしょうか?」
そして予想通りに、紘がすっぱりとキウイに向かってそう言った。ここに来た目的としては何一つ間違ってはいないのだが、目的を達成するということはつまり、元の世界への帰還をしなければならないのですぞ? 分かっているのかね? 紘君?
あんたも異世界に行ってみたいって言ってたじゃない! あれは嘘だったの!? それとも、来ただけですでにもう満足してしまったのかしら!?
まずい、このままでは即ミッションクリアになってしまう。あたしはもっとこの世界を楽しみたいのに! だ・の・じ・み・だ・い・の・に!! (血涙)
「うーん、そうしてあげてもいいけど、何か見返りが欲しいわね……」
おっ?
「……残念ながらお金はないです」
「分かってるわ、お金は求めないから安心して。そうねえ……」
おっおっおっ?
「……そうだわ。明日、大きな仕事があるの。そのお手伝いをしてくれないかしら?」
「そんなことでいいならぜひ!」
やったああああぁぁぁぁ! まだまだつづくんじゃああああぁぁぁぁ!!
「そんな奴らどうせ素人でしょー? 使えるのー?」
キウイと乃子たちが謎の労使契約を結んだのを見たメロンが、何かを案ずるかのようにそう言った。メロンはいつの間にか座り込み、床にあぐらをかいていた。
「私が一晩で鍛えます」
「足手まといにはしないでよー?」
「はいはい。……では、帰りましょうか」
「えっ、帰るって……?」紘が疑問そうに言う。
「当然、私たちのアジトです。もちろん、あなたたちも行くのですよ?」
キウイがそう言うと同時に、左手の杖を構える。そして天にかざすようにその杖を振り上げると、乃子たちを含め、その場にいる四人全員が柔らかな光に包まれた。
次の瞬間、一瞬浮遊感がしたかと思うと、四人はどこかに転送された。
(はっ? ここは? ホットココア?)
視界が鮮明になり、気がつくと乃子たち四人はどこかの建物の中にいた。
そこはまるで会社のオフィスのような所で、書棚やデスク、パイプ椅子などが置かれていた。中央には二つのソファーが向かい合うように置かれ、その間には趣のある背の低いテーブルが鎮座している。本当に小規模な会社か、またはよくある探偵事務所のような空間であった。
しかし、その空間はお世辞にも小綺麗であるとはいえず、むしろ長年放置されていた場所のような、そんな感じの薄汚い所だった。
「汚くてごめんなさい。普段こんな場所に人を招くことはないものですから」
彼女たちも汚いことは自覚しているのか、キウイが申し訳なさそうにそう言った。
「ああ疲れたー。メロンもう動けないー」
呟きながら、メロンがソファーにふらふらと倒れ込む。それから彼女は手に持っていた二本の黒い直剣を、ソファーの外へぞんざいに放り捨てた。主の手を離れた二本の剣たちは、可哀想に音を立てて床に転がった。
「こらメロン! 武器はぞんざいに扱わないでって、いつも言ってるでしょう!」
「メンテはちゃんとしてるでしょー。いいじゃーん」
「無駄なメンテナンスが必要にならないように言ってるんです、私は」
「…………」
キウイの注意も聞かず、メロンは眠りについてしまったようである。小さく、すぴーすぴー、という音が聞こえてきている。というか、寝るのめっちゃ早いわね。




