第三章 15 これは叫ばずにはいられないッ!!
「ごめんなさい二人とも。武器は私たちにとっては、商売道具なものですから」
キウイが再び乃子と紘に対し、申し訳なさそうに言う。
「別に構わないわよ。それよりもキウイさん……」
乃子はそう言いながら、キウイの持っている武器に視線を落とした。あつらえのしっかりとした刀と、片手用にしては長めの杖である。出会ってから今に至るまで、キウイはずっと両手にその武器を握ったままだった。
「……いつまで持ってるの、その鉄の相棒たちを」
「ああごめんなさい、抜き身で怖いですよね。すぐしまいますから」
「しまうって、鞘なんて持ってな――」
乃子が言いかけたその時、キウイの持っている杖に驚くべきことが起こった。
なんと杖が、変形を始めたのである。
上部にあった扇のような装飾は綺麗に重なるように畳まれ、杖の棒の部分は一瞬にして内部の空間を広げながら拡大し、そして広く拡大した棒は刀に合うようにその身を曲げる。
その一連の変形が二秒もかからずに完了し、左手にあった杖は、瞬く間にその姿を機械的な鞘へと変貌させた。
そしてその鞘となったものに、キウイは慣れた手つきで刀を納める。
「よし、っと」
「か、か、か、か、か」
「かか、かかか、かっ」
「? 二人とも、どうしま――」
「かっこいいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ―――――――――っ!!」
「かっけえええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ―――――――――っ!!」
これは叫ばずにはいられないッ!!
「な、何ですか!?」
いきなり大声を上げて、目をキラキラさせる二人の異世界人に、キウイも困惑を隠せない。
「変形武器とか格好良すぎぃ! これだけでこの世界に来てよかったと思えるわ!」
「マジで僕もそう思うよ。感動して涙出てきそうなんだけど」
そんなものを見てしまったら、メロンの武器の方にも興味が行ってしまうのは必定。制服姿の異世界人二人は、床に放り捨てられた黒い細身の直剣の所へ引き寄せられていった。
「キウイさん! これにも何かギミックがあるの!?」
さすがに許可も取らず手に取るのはいけないと思ったので、乃子は剣のそばでキウイにそう尋ねる。メロンの剣もよく見れば、柄の所に拳銃のトリガーのようなものが付いている。
「もちろんありますよ」
キウイはそう言葉を返し、乃子たちのもとへ近づく。それから彼女は、メロンの黒い直剣の一本を右手で拾い上げた。そして乃子と紘によく見えるように、剣を握った右手を体の正面に突き出してから言った。
「メロンの剣はですね、こうなるのですよ」
言うと同時に、キウイがメロンの直剣のギミックを発動させる。
すると次の瞬間、何と剣の刀身が三か所も一斉に折れ曲がり、そして折れ曲がった刀身たちが柄の上で上手くかみ合うように重なると、それはまるで弾丸を放つ銃身のようになった。
柄の所に付いていたトリガーは、まさしくこの銃形態時の引き金だったのである。メロンの黒い直剣は、まさかの剣から正反対の武器である銃に変形するギミックが搭載されていた。
キウイが細身の黒い直剣から、黒い拳銃にチェンジした武器を構えながら言う。
「すごいことに、メロンの剣は銃にもなるのです」
それを見た乃子と紘は、目のキラキラが止まらない。それはガラスケースに入った心から欲しいと思っている玩具を見るような、純粋で憧れしかない子供のような眼差しであった。
そんな二人を置いて、キウイは銃になったメロンの武器を、彼女が眠るソファーの前のテーブルに静かに置いた。それからもう一本の剣も手に取ると、それも銃に変形させ、同じくテーブルの上に静かに置いた。
「……さて、明日まで時間がありませんね」
剣銃からそっと手を放し、本題に入るかのようにキウイが呟いた。
「お二人には早速ですが、私たちの仕事のお手伝いのために準備をしていただきます」
「…………はへぇ~」
「…………ぽけぇ~」
「――あれ!? 二人とも!? どうしたんですか!?」
あまりの格好良さと、それらを見れた幸福感とで、乃子と紘の二人の魂は完全に体から抜けてしまっていた。キウイが二人の魂を元に戻し、次の行動を起こせたのは、やや時間が経ってからだった。
「ここです」
キウイに徒歩で案内されたのは、彼女たちのアジトがあるビルのそばにある地下駐車場だった。転移ができるのに、なぜ歩きなのかというと、あれは魔力の消費が激しいかららしい(さらに人数が乃子たちの分余計に多いため、消費量がさらにドンッとなっているようである)。いつ何が起こるか分からないので、節約できるところはなるべく節約するのだという。
「いきなりですが、少し待っててください」
キウイはそう言って、左手の鞘から刀を抜く。それから中身が抜かれた空の鞘を、今度は逆に杖へと変形させた。変形の時に少し聞こえてくる硬質な音が、やはり最高に気持ちいい。
「あるもの取ってきますので」
そして杖を使い、彼女たちのアジトへ転移した時と同じ魔術で、キウイはどこかへとテレポートしていった。身に纏った光と同時に、その姿が煙のように掻き消える。




