第三章 13 メロンとキウイ
――それなりに広い屋上を、一通り歩き回ったのち。
「……これだよな?」
「……これよね?」
屋上の床の一角に、アーチ状の取っ手が付いている鉄板のようなものを見つけた。大きさは人が一人通れる程度で、おおよそ五十センチ四方だった。よほどの人物でなければ、誰もが通れるくらいだろう。
「引っ張るぞ」
男である紘が(もちろん体は女の子だが)、率先して鉄板の取っ手に手を掛ける。そして一番ぎっくり腰が起きそうな中腰になって、鉄板を引っ張り上げるように力を込めた。
――が。
鉄板は持ち上がらず、しかもガチャン、と明らかに鍵が掛かっているような音が聞こえた。
「あ、ダメだわこれ」
「あちゃあ……」
これでまたふりだしに戻ってしまった。降りる方法を別に見つけるか、さもなくば権限でどうにかするしかない。あたし的には、権限というチートは本当に困った時の最終手段なので、できればどうにかこうにか別の方法を探したいのだが。
……しかし、今回ばかりはそうも言っていられないかもしれない。
(……権限で空でも飛ぼうかしら)
前にも言ったかもしれないが、一応権限ですでにギャグ補正はかけてあるため、このまま下に飛び降りても死ぬことはない。たぶん相当に不快なショックを受けるか、地面に人型の穴が開くかのどちらかになることは確定であるが。
「うーん、どうする乃子?」
「そうねぇ……」
乃子と紘が次の策を考えようと、首を捻ろうとしたその時――。
「あら? どちら様?」
いきなり背後から声を掛けられた。
「――えっ!?」
「――へっ!?」
乃子と紘は息が合ったかのように同時に驚いた声を上げ、そして同時に背後へ振り返った。
やや離れた位置に、いつの間にか女の子が立っていた。
しかも一人ではなく二人。見た目からして、年齢はあたしたちと同じくらいだろうか。十代のどこかといった感じである。右の人物は比較的身長があり、お姉さんといった風貌をしている。対して左の人物は、乃子よりも背が低く、まだ大分幼さが残っている顔立ちをしていた。
「こんな屋上にいるなんて、珍しい方たちですこと」
右の人物がそう言って、こちらに近づいてくる。
「えーっ、そんな奴らほっておいて早く帰ろうよー」
その彼女の行動に対して左の人物が、眉を曲げながら不満そうな声を発した。
突然現れた二人は、とても現代にありそうなごく普通の服装をしていた。どうやらこの世界は、それなりに現代的なようである。これなら制服でも困ることはないだろう。
しかし彼女たちは、現代には似つかわしくないものをその手に持っていた。
それは――。
「なぜこんな場所にいるのですか?」
右のお姉さん然とした人物が、乃子と紘に優しく尋ねる。手にそれを持ったまま。
それは、人を殺めるために存在する凶悪な物体。
――武器だった。
「メロンはもうくたくたなのにー。ねぇキウイー。帰ろうよー」
我がままな子供のように、左の人物が再度不満そうに言う。彼女が持っている武器は、黒い細身の直剣らしきものだった。それを一本ずつ、二刀流として両手に持っている。
「もう少しだけ待ってメロン。すぐに終わりますから」
そう返答する右の人物が持っているのは、しっかりとした鍔と柄がついた刀と、魔法使いが持っていそうな長めの杖のようなものだった。右手に刀を、左手に杖を持っている。そのカラーリングは、両方とも白を基調にしていた。
ま、まさかの!? まさかの武器持ち美少女だあああぁぁぁ!!
………………ふ、ふぅ。
なぜ現代的な世界で武器を持っているのかは、とりあえずあとで判明させるとして、今の二人の会話で一つ重要なことが分かった。
武器という凶悪なものを持った来訪者の二人は、どうやらメロンとキウイという名前らしい。会話から考えて、右のお姉さんのような人物がキウイで、左の小さい人物がメロンなようである。間違いなくジューシーな果物だが、おそらくニックネームか、もしくはコードネームだろう。だが、名前が分かったのは大きい。
「お二人とも、なぜこんな場所にいるのですか?」
キウイが改めて乃子と紘にそう訊いた。私たちの秘密を知ってしまいましたね、死んでください――という展開にならないことを祈りつつ、乃子が一応当たり障りのないように答える。
「あたしたちは、魔術書に魔力をチャージするできる人を探しに来たんです。それで違う世界からやってきたんですが、転移した先がここだったんです」
「なるほどね。そして、魔術師を探しに来たと。彼が持っているのがそれかしら?」
「はい、そうです」
ん?
あれ? 今、彼って……?




