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第三章 11 おしっこちびりそう!!

 急に口を塞がれ、困惑している紘に対して乃子が、彼の耳元で囁くように言う。

「(紘! このバカ! バカ野郎っ! まぬけィ!)」

「(ぶはあっ! な、何だよ!? いきなり口を塞いでバカ呼ばわりとか!?)」

「(それはスマソ。でも、あんたは異世界に行きたくないの?)」

「(は? 異世界? そら行ってみたいさ。まさにライトノベルのような話だしな)」

「(だったら上手く瑠兎を誤魔化して、あたしたちが行くようにするわよ)」

「(ああ、さっきのはそういうことか。僕たちにしか行けないことにするんだな?)」

「(そうよ。理解できたわね? それじゃあ、ミッションスタート)」

「(了解、ハニー)」

『あ、やっぱりこの二人、いいコンビですわー』

 紘と乃子は顔を見合わせて頷き合うと、揃って瑠兎に向かい合った。

「そうなんです岡野さん。乃子の力は僕たちにしか効果がなくてですね……」

「だから必然的に、あたしたちが行かなければならないんですよ。異世界に」

「乃子の力がもっと効果的なら良かったんですけどねぇ」

「あたしの力が弱いばっかりに……。瑠兎さんを異世界に行かせてあげられないなんて」

「ですから代わりに僕たちが、その異世界に行ってきますね」

「…………君たちぃ」

 お? 上手くいったか? あたしたちの渾身の演技に騙されたかしら?


「……君たちぃ。それぇ、ホントは嘘だろぉ?」


 ダメだったあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――ッ!!

 しかもバレたああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――ッ!!

「う、うひょ!? いやいや!? 嘘じゃないですよ!?」

「そうです岡野さん! 本当なんです!」

『諦めの悪い人たちだなぁ。もうこれは無理ですよー。敗訴です』

 やだやだやだあああああああぁぁぁぁぁぁ!! 行きたいのおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!

 異世界いいいいいぃぃぃぃぃ!! 異世界行きたいんでしゅうううううううぅぅぅぅぅぅ!!

『うわぁ……。さすがにそれは……。ねぇ?』

 ドン引きしないでよ! メインヒロインの幼児喋りよ!? レアでしょ!?


「……まあでもぉ、行かせてあげてもいいよぉ」


 …………えっ?

「ほ、本当ですか!?」

「やったあああああああぁぁぁぁぁぁ――――――っ!!」

 メインヒロイン・広院乃子、渾身のガッツポーズ。

 やった異世界冒険記よ! テンション上がってきたぁ!! おしっこちびりそう!!

『おしっこはギャグで言っているんですか? それともマジ的なやつですか?』

 ぎ、ギャグに決まってるでしょ!? そこまであたしは変人じゃないわよ!?

『マジでやったら人気ナンバーワンになれますよ! 男たちのナンバーワンに!』

 やらないわよ! というか、やれないわよ! 一般向けライトノベルなんだから!

 乃子と紘の興奮・歓喜・叫び芸が沈静化してくると、瑠兎は理由を付け足すために口を開いた。彼女のその顔が若干戸惑い気味なのは、たぶん気のせいに決まっている。

「……ワタシが困っているわけではないからねぇ。それに誰がやってもぉ、大して変わりはないからぁ。でも一つだけ言っておくよぉ」

 瑠兎はそこで一度言葉を切り、呼吸をして数瞬間を置いてから再び言葉を続けた。

「……その異世界でどんなことがあってもぉ、ワタシは責任を取れないからねぇ?」

 これがもし普通の物語なら、しっかりと心に刻んで気を引き締めているところだ。だが、中身のないギャグ作品であるこの物語では、まったく引き締める必要がない。

「大丈夫です瑠兎さん。あたしたちは何があっても平気なようになってますから」

 乃子はニヤケ顔とドヤ顔を足して、5で割ったような顔をしながらそう言う。

「……ふうん。それじゃあぁ、今すぐいくかいぃ?」

「「はい! もちろん!」」


「……用意はいいかいぃ? 転移門を開くよぉ」

 机と椅子を部室の隅にどかし、瑠兎と乃子と紘の三人は部室の中央に立っていた。

 現在瑠兎の手には、異世界転移用の魔術書が握られている。しかし、それはよくある魔術書のイメージ――古臭くて大きく、分厚い――というものからは、大きくかけ離れていた。

「本当にそれが魔術書なの? 現代の文庫本にしか見えないんだけど」

 そうなのだ。瑠兎が転移用の魔術書と言って手に持ったそれは、どこからどうみてもこの現代世界の文庫本にしか見えなかったのである。

「……技術は進化しているということさぁ。それは魔術の世界でも同じぃ。今は魔術書もぉ、文庫本サイズの時代なんだよぉ。魔術なんて昔のことだから進化していないとかぁ、魔術書だから現在の技術が適応できないとかぁ、そんなことはないのさぁ」

 瑠兎はペラペラと本をめくりながら、続けるように言った。

「……そりゃあ昔の魔術書はぁ、それこそ古ぼけていて分厚かったさぁ。だけど全ての技術が進化するようにぃ、魔術も人知れず進化してきたんだよぉ。前に言ったっけぇ? あなたたちが知らないだけだってぇ」

「そうね、あたしたちが知らなかっただけだわ」

「……それじゃあぁ、現代魔術書の力を見せちゃうよぉ」

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