第二章 9 今後の展開を決める
こんばんにちは皆様。広院乃子です。いかがお過ごしでしょうか。
もちろんこの物語を読んでいることでしょう。
――さて。えーっと……。
たびたび冥狐とあたしが会話をしているシーンがあるじゃない?
あの時、あまりにも長く他の人が動いてなかったり、会話がストップしたりしている場合があるでしょ? まるで時間が止まったみたいに。
そういう時は、本当に時間を止めて会話をしているのよね。
まあだから何だっていう話なんだけど。とりあえず、疑問に思ってた人のために一応言っておこうと思ってね。
最後の授業が終わり、掃除の時間も終わった完全な放課後。
乃子と紘は約束通り、レミアたちの秘密基地へと再び足を運んでいた。放課後の喧噪を耳に入れながら、特に何をするでもなくただ廊下を歩いていく。
(そろそろ悪魔を登場させようと思うんだけど、どんなタイミングがいいかしらね?)
『レミアちゃんの積もる話が一段落した時か、それとも話をする前にいきなりかの、そのどちらかがテンプレではありますね。意外さを狙うなら、それらを外すのもアリですけど』
(中途半端な瞬間に襲来させても、テンプレを外してただ意外なだけで、特に面白いとは言えないのよね。やっぱりテンプレというか、セオリー通りに行くとしましょうか)
乃子は数秒ほど考えを巡らし、どちらにするか決定する。
(安定を取って、話を聞いてからにしましょうか。そもそも悪魔退治の方法を、あたしたちはまだ知らないのよね。たぶんこのあとの話がそれについての話なんだろうけど)
『悪魔退治の方法も、自分たちで決めちゃえばよかったじゃないですか。何でレミアちゃんに任せた、というか、ランダムにしちゃったんですか?』
(いや、そっちの方がカオスで面白い設定になりそうだったし。自分で考えると、自分の価値観やら常識に囚われて、安牌で普通な設定しかできないから)
『確かに、ギャグ路線のこの物語で普通すぎるのは良くないですね。だったらむしろ、意味分かんないくらいおかしい方が良いとは思います』
(それに、自分で考えると勝手が分かってしまってつまらないのよね。自分の知らないものに初めて触れる方が、やっぱり楽しいじゃない?)
『それは同感です』
冥狐とそんなような会話をしているうちに、秘密基地の前までたどり着いた。
あの爆発事故からまだ時間がそれほど経っていないため、未だ修理されていない真っ黒なチョコ扉を無理矢理こじ開けて中に入る。誤解しないように言っておくが、基地に入る扉はここしかないのかというと、実はそうでない。反対側に普通の扉はちゃんと存在するのだが、何となくあちら側の扉は使いたくないだけなのである。あたしが。
なぜかと訊かれれば、はっきりとは答えられない。ただ、何となく、心の中であちらの扉は使いたくないという感情があるのであった。
――一応付け加えておくと、これは伏線でも何でもないからね? 深読みしても何もありませんよ? というかこの物語自体に、伏線なんて高度なものは存在しないんだけどね。
単純にあたしがそうしたかったからだけです。
教室の中に入ると、そこにまだレミアの姿はなかった。優理香と夏希の二人はすでにいた。というより、この二人はここの学校の生徒というわけではないので、基地から出ること自体があまりないのだろう。
優理香と夏希は、初めて会った昼休みの時のようにテーブルに座って、それぞれの時間を過ごしていた。対照的な性格の二人は、時間の過ごし方もそれぞれ異なり、優理香は静かに読書をし、夏希は携帯型ゲーム機で遊んでいた。
とりあえずテーブル近くに歩み寄り、乃子は夏希に話しかけた。
「レミアはまだ来てないのかしら?」
夏希は手の中の携帯型ゲーム機から視線をそらさずに答える。
「そうみたいだな。職員室にでも呼び出しくらってるんじゃねーの?」
「ふうん、あんたたちも知らないのね」
「ああ」
夏希は頷くと、テーブルの上にあった器に盛られたお菓子に手を伸ばした。器の中から上質そうなクッキーを一枚摘み上げると、それをひょいっと口に放り込む。
「ん、昼休みに言った、お前のために用意したお菓子だぞ」
夏希は言いながら、もぐもぐと口を動かしつつゲームを続ける。
「あたしのために用意したのに、何であんたが食べてるのよ」
「固いこと言うなよ。少しくらいいいだろ?」
「あと三つだけだったら許してあげるわ。それ以上はダメだから」
言いながら、乃子は夏希の隣の椅子に腰を下ろす。どうでもいいのだが、あたしと夏希のやり取りを、優理香が眺めていることに今になって気がついた。
乃子が気づいたことに気づいた優理香が、視線を本に戻して読書を再開する。特に意味のある表情はしておらず、何を思っているのかを読み取ることはできそうになかった。




