#08活路開く陽光
勝機を見出したカイトは、人型形態に変形し一目散にTGの腹へと向かう。
「多少のダメージは厭わない!こっちは腹を穿てば決着なんだからな!」
『戦闘中に喋ると舌を噛みますよ?』
光線の雨をくぐり抜け、脚による踏撃も避けきった。
だが、カイトの視野は狭くなっていた。回避した光線がUターンして向かって来ていることに気付かないほどに。
警告音がコックピットに鳴り響く。
「なん…だと!?」
絶対絶命。光線がコックピットを貫いたかのように思われた。爆炎が上がり、煙が晴れるとそこには…
「シエラ!?」
シエラのHV "サニー"が大型ネジ用マイナスドライバーを研磨し製作したレイピアを携えて立っていた。
「なんで来たんだ!」
「私には"聞こえた"んです!貴方の危機が!」
「シエラ…君は俺なんかを…」
『感動してる場合じゃないです。攻撃が来ます!』
追撃が発され、4本の光線が地面を抉る。
「散開するぞ!」
それぞれネストの瓦礫の背後に隠れ、TGの視界から外れることに成功した。
「奴の弱点は腹部だ!俺が囮になるから、君がその内に攻撃しろ!」
「でも…それだとカイトさんが…」
「適材適所だ!戦闘スキルは君の方が上のはず…時間がない!やるぞ!」
「…はいっ!」
カイトの機体がTGの前へと踊り出る。
「俺が相手だ!」
4本の光線が収束して螺旋状になり、カイト目掛けて迫る。
「ドリルにはこういう使い方もある!」
ドリルを構え光線に向かっていくデクストロス。
ドリルと光線の正面衝突。
激しい火花が散る。
ドリルが赤熱化し、ディスプレイのいたる所でdangerの表示が点滅している。
TGの8つのセンサーは、デクストロスに釘付けになっていた。背後に迫るシエラに気づかない程に。
「今だ!」
光線を発射すれば必ず排熱が発生しハッチが展開することは、先程の戦闘で判明していた。加えて今、TGはデクストロスのみに注目している。この状況こそが彼の狙いだったのだ。
シエラのレイピアが唸る。
「必殺ッ!ホーネットスティンガーッ!!」
展開したハッチの中にあるファンを貫き、背中を内側から突き破ったサニーが天高く飛翔する。
穴から亀裂が広がり、TGの巨体は爆発を伴って崩壊していく。
陽の光に照らされたシエラの機体は、咲き誇る花のようだった。
カイトは額の汗を拭う。
「ありがとう、シエラ。君のおかげだよ…」
シエラは涙目になりながら訴えた。
「カイトさんはもっと自分の命を大切にすべきです!死ぬ可能性だってあったんですよ!」
「いやこいつには、もしもの時の為の脱出ポッドがあってだな…」
「そういう問題ではありません!」
「まぁともかく、残骸を回収して街に帰ろう…」
「帰ったらリアナ様に言いつけますからね!」
デクストロスが、破壊されたTGの頭部に触れようとした時、通信にノイズが走る。
「なんだ!?」
くぐもった声がカイトに問う。
「人類がなぜカナン129に居る?」
「誰だ!どこに居る!?」
「庭園の管理者たる我々に反逆し、雑草の側に与するのか?」
「ソフィア!逆探知だ!」
「詮索は身を滅ぼすぞ…"カイト"」
「なぜ名前を!?」
通信は一方的に途切れ、答えは返ってこなかった。
『発信者の特定はできませんでした…ですが、電波はこの惑星の外から発せられていたようです。』
「まさか…」
「カイトさん!?」
シエラの声で、我に返るカイト。
「さっきの声、聞こえなかったか?」
「声?なんのことです?」
「いや、いいんだ…」
デクストロスの左手が、TGの頭部を掴んで掲げる。
「戦利品もゲットしたし、早く帰ろう。」
カイトは空を見上げた。
その視線は、カナン129の衛星・セレネに向けられていた。




