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#02巨獣襲来

二人がシェルターから出て目にしたもの、それは街へと押し寄せる巨大な多脚兵器の大群だった。

だが、街並みを見たカイトには他にも疑問が湧いていた。

「文明が衰退している!?千年の間に何があったんだ…」

街は外壁に囲まれ、石材や木材で構成された家屋や建物が並んでいる。

「まるで中世ヨーロッパやファンタジーの世界じゃないか!」

『データ照合完了しました』

ソフィアが冷静に告げる。

『多脚型自律兵器:コードネーム“レギオン”。本来は拠点防衛が目的でしたが現在は…』

「貴方がおっしゃっていたのは…」

「あれよ!最近になって現れた…大蜘蛛の大群!カイト、名前は呼び捨てでいいわ。私もそうするから」

街を守備する兵士たちが高台から弓を放つ。

だが、堅牢な装甲に1本たりとも刺さらない。

外壁を破壊し、待ち構えていた兵士たちの攻撃をものともせず街を蹂躙していくレギオンたち。

その光景を見てリアナは膝をつく。

「今回も駄目なの…?」

「あいつらを倒す方法はないんですか!?」

「ない…今の私たちには、奴らが過ぎ去るまで耐えるしか…」

悲痛な現実。平穏な日常が、突然現れた兵器に脅かされている。

カイトは自らの無力を痛感した。

「どうすれば…何かできることは…」

気づくと、リアナの方に1体のレギオンが迫っていた。

「危ないッ!」

考えるより先に身体が動いていた。

リアナの前に躍り出たカイトはレギオンの前に立ちふさがる。レギオンの兇刃が彼を襲う。

カイトは死を覚悟した。

けれども、それは訪れなかった。

『間に合いました!』

ソフィアの声。

衝突音がして、レギオンは跳ね飛ばされる。

突然の出来事に理解が追いつかなかった。

それは、ショベルカーのような重機に見えた。

ソフィアの声はその機械から聞こえる。

「ソフィアか!?」

『これは、Humanoid Vehicle:庚型こうがた多目的運用仕様・通称デクストロスです。撃退に活用してください。』

デクストロスのハッチが開く。

その様子を見ていたリアナが呟く。

「伝承に伝え聞く武器、巨人の鉄戦車タンクジーガス…我らの祖先は鉄の巨人を従えていたというのは、本当だったのね!」

コックピットに搭乗したカイトの記憶がフラッシュバックする。

「千年前にやりこんだVRゲームにそっくりじゃないか!」

『はい。あれは、惑星開拓をシミュレーションする役割もありましたから。その中にはH Vヒューマノイドビークルの操縦訓練も含まれています。』

「知らなかった…」

『当然です。知らなかったも何も、説明書を読まれなかったのですから。』

「悪かったよ…」

画面に索敵データが表示される。

すでに何体ものレギオンが街を闊歩していた。

「このままじゃ街が持たない……ソフィア!武装は?」

『 戦闘用の武装はありません。ですが工具なら、右腕換装式アームユニットが1基。現在装着されているのは“油圧式カッティングユニット”です。』

イトの脳裏に閃光が走る。

「油圧カッター!?解体作業用の!」

『 はい。惑星表面の地殻や建築資材を切断するための工具ですが……』

「ゲームじゃよく使ってた……」

彼は過去の経験を思い出した。攻略サイトにも載っていなかった隠し技・実は油圧ポンプにはリミッターが掛かっていて、レバーを限界まで引けばより硬度の高いものも切断可能だ。

「これなら!」

アクセルペダルを踏み込むと、巨大なキャタピラで加速。視界の中央には獲物となるレギオン・その接合部を捉える。

レバーを限界まで引いて刃を閉じると鈍い金属音と共に火花が散り、真っ二つに切断された。

他のレギオンたちが一斉にこちらへ向かってくる。

『対象の優先目標変更を確認』

「わかってる!」

もはやちまちまと切断している余裕はない。

使えるものはすべて利用して戦うしか手立てはなかった。

左腕のマニュピレータで手刀を繰り出し、レギオンの腹部を貫く。

キャタピラのついた足で蹴りつける。

柔道のように掴んで投げ飛ばす。

旧人類のハイテクマシンらしからぬ戦闘スタイル。

重機としての利用を考慮されたデクストロスのパワーゲインだからこそ行える芸当だった。

近接戦闘が不利だと学習したのか、レギオンたちは背中の光弾砲を発射し始めた。

『脅威レベルの上昇により発砲が許可されたようです!』

キャタピラを旋回させ、光弾を回避する。

「今まではナメプだったって言うのか!?」

『行動パターン分析…生物の殺傷を最小限に抑えて行動していたようです』

被弾面積を減らすために重機モードに変形、建物の影に隠れる。

「遠距離戦はこちらが不利だ!」

先程倒したレギオンの光弾砲が目についた。

「これを使うか!」

レギオンから光弾砲を剥ぎ取ると、バックパックのコネクタに接続する。

この時代の兵器はモジュール化とコネクタのユニバーサル規格化が進んでおり、接続するだけで簡単に使用できる仕組みだ。

『ドライバインストール完了…モード選択』

「掃射モードだ。」

カイトはスピーカーを起動し、周りに呼びかける。

「皆さん、退避してください!」

それを聞いたリアナも続けて呼びかける。

「皆、カイトの支持に従って!」

それまで戦闘していた兵士たちはレギオンから離れ、物陰に隠れた。

『チャージ完了。いつでも発射可能です。』

砲口をレギオンに向け、カイトがトリガーを引くと

光弾が機関銃の如く速射される。

一瞬にして残りのレギオンは撃破された。

光弾砲から煙があがる。

『砲身がオーバーヒートしています!機体エネルギーの残量も残りわずかです!』

「強制パージだ!」

バックパックから勢いよく外れたそれは、地面に落下した。

「粗悪品か…」

人類の末裔が、旧人類の兵器に初めて勝利した瞬間だった。

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