#10王の都
カイトとリアナは箱馬車を接続したデクストロスで王都へと向かっていた。
リアナがぼやく。
「まさかこんなことになるなんて…」
数日前議会が開かれ、リアナはそこでカイトの行った都市改造について問い詰められてしまった。
法律では破壊された街の復興は現状復帰までしか許可されておらず、勝手に街灯を建てたこと・中継装置を設置したことは、法に触れる行為だった。
「先走ったのは俺ですから、リアナさんが悔やむことじゃないですよ」
「どんな裁きが待っているのか…気が気じゃないわ…」
二人は完全に落ち込んでいた。
王都の門の前に着くと、門番が驚いた。
「何だあれは!伝説の鉄戦車か!?」
あちゃーという表情のカイト。
「待ってください!俺達は怪しい者ではありません!」
兵士を呼ぼうとする門番たちを制止し、2人は箱馬車から降りた。
「東の地の領主リアナと、技師のカイトです。王国議会の命令で参上しました。」
「これは、貴方方の物ですか?」
「驚かせてしまい、すいません…」
「これは王都内に入れるわけにはいきませんね…」
2人は門の外に機体を残し、王都の門をくぐった。
「罰として、鉄戦車は没収とする。」
下された判断は厳格なものだった。
「また、作物献上の量を倍にする」
「そんな…民が飢えてしまいます!」
「それも貴殿が法を守れば免れたのだ。己の不始末を恥じるがよい。」
2人は議会の決定を甘んじて受け入れるしかなかった。
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方その頃、シエラに選ばれた二人がドックに集まっていた。
カイトは留守を任せたシエラに、新たなドライバーの
選定を依頼していた。先日のような非常事態に、2人だけでは対応できない。そう思い知らされた。
「生産済み予備パーツは2機分…少なくとも後2人は必要だ。任せたよ、シエラ」
選抜されたのは、サイモンとルークだ。
サイモンは近接戦闘を得意とする戦士、ルークは弓使いで遠距離戦を得意とする。
二人ともシエラの幼馴染だ。
「二人とも、宜しくお願いします。」
「ああ。よろしく頼むぜ、先輩!」
サイモンが答える。
「先輩?」
「鉄戦車乗りとしては先輩だろ?」
「よそよそしいから、いつも通りでいいですよ。」
「そうか、じゃあよろしくなシエラ。」
「はい。」
「ルークもな!」
サイモンはルークの肩を掴んで引き寄せた。
「いちいち暑苦しいんだお前は…」
「まぁいいじゃねーか!これからチームなんだし!」
こうして、HVによる部隊・鉄戦車隊が結成された。
「おお…!俺を真似て動くのか!」
サイモンはキャプチャ装置を付けてDX-Mを動かして見せる。
「これなら素人の俺達も、簡単に動かせそうだぜ!」
上半身の動きはキャプチャ装置で操縦するが、下半身の動きはペダルによる操縦が用いられている。その訓練を兼ねて、三人は街の外壁をパトロールすることにした。
「あんまりスピード出したらダメですよ?」
先行するサイモンに声を掛ける。
「外壁の外には生き物なんていねーんだから、大丈夫だろ」
後方のルークが言う
「どうやら、そうでもないらしい」
レーダーにこそ反応がないが、彼女らの超感覚は確かにその存在を捉えていた。
「そこだ!」
ルークの正確無比な射撃。
左肩の長射程光弾砲が展開し放たれた鋭利な光弾は、隠れた敵に命中した。
カモフラージュが解け徐々に姿を表すそれは、二脚型の無人兵器。その機体色は、先日現れたHVと同じ漆黒だ。
「大蜘蛛に似てるけど…」
先程撃破した1体に加え、2体がこちらの様子を伺うように赤いセンサーをひからせている。
「強くはないですが、素早い敵です。注意してください!」
「いきなり実戦かよ!テンション上がるなぁ!」
サイモンのDM-Xは装備した、森林伐採用の斧を構える。振りかぶったそれは、さっきまで敵のいた場所を切り裂く。
「すばしっこいやつは苦手だぜ…」
だが、逃げた先にはシエラが待ち構えていた。
レイピアが風を切り唸る。
紫電一閃。
その胴への一撃は、敵機の装甲を貫通するには十分だった。
機能を停止しセンサーが光を失うのを見届けたシエラは、サイモンへ呼びかける。
「あと1体…そっちに行きましたよ!」
「おう!」
彼の方に逃げた最後の1体を、戦斧の刃が待ち構える。二脚の跳躍は、その刃を回避したかに思えた。
「見切ってるぜ!」
斧を振る軌道、それは跳躍した脚を狙っていたのだ。
脚の付け根を横薙ぎに断つ。
火花が散り、胴と脚がなき別れだ。
切断された機体は地面に散らばった。
「これで全部だな!」
サイモンは、勝ち誇った様子だ。
ルークが問う。
「カイトさんやリアナ様に報告すべきだろうか…」
シエラは答えた。
「敵の情報が得られるかもしれません…残骸は回収しておきましょう」
城壁の近く、林の中に潜む人影…彼女らはそれに気づかなかった。
「エサは撒いた…かかるかどうかは懸けだがな…」
黒衣の人物は、誰に聞かせるでもなく呟いた。




