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(24)ピザを食べながら2

 忠史は思わず身を乗り出した。


 端が掴めた!


 その言葉が頭の中で反響する。

 もしそれが本当なら――。

 もうピザどころではなかった。


 次の言葉を待つように忠史はじっと仁を見ていたが、その様子を見て富美代がくすっと笑った。


「あなた、もう話が止まらないから忠史くんがピザを食べる暇がないじゃない」


 仁は「あっ」と声を上げた。


「ごめんごめん」


 少し照れくさそうに笑う。


「なんかつい夢中になっちゃって」


 ピザの箱を忠史の方へ押し出す。


「うん、先にちゃんと食べよう」


「そのあとまたソファに戻ってゆっくり話そうか」


 富美代もにこやかに言う。


「遠慮しないでたくさん食べてね。学生さんなんだから」


 忠史は少し苦笑した。


「ありがとうございます」


 ピザを一切れ手に取りながら言う。


「なんか……話がすごすぎて……ちょっと頭が追いつかないというか」


 翼が笑う。


「だよねー」


 詩も真似して言う。


「だよねー」


 仁は肩をすくめた。


「まあ普通は信じられないよね」


 そう言いながらチキンをつまむ。


「でも、これが奥村の“普通”なんだよ」


 その時、仁がふと思い出したように凛を見る。


「そういえばさ」


 ニヤッとした顔になる。


「凛は渉のお嫁さんになりたいんだよな」


 一瞬、空気が止まる。


「ちょっと!」


 凛が真っ赤になって声を上げた。


「いまそんな話ししなくていいでしょ!」


 翼がすぐにからかう。


「あ! 言ってた!」


 詩も楽しそうに言う。


「りんちゃん、けっこんするの?」


「もう、やめて!」


 凛は顔を隠すようにピザを持つ。

 仁は楽しそうに笑っている。


「いやいや、小さい頃から言ってたじゃないか」


 凛はむっとする。


「もういいって!」


 富美代が笑いながら助け舟を出す。


「渉さん、優しいものね。子どもたちともよく遊んでくれるし」


 翼がうなずく。


「うん、この前も木のブランコ作ってくれた」


 詩も言う。


「うたにお魚とってくれた!」


 忠史は思わず笑った。


「まあ、渉ももう三十超えてるからね」


 ピザをもう一切れ取りながら仁が続ける。


「そろそろそういう話があってもいい年なんだけど」


 少し首をかしげる。


「どうも、そういう相手がいるのかいないのかよく分からないんだよな」


 富美代が言う。


「奥村にいる時間も多いし出会いも少ないでしょうし」


 仁はそこでふと忠史を見る。


「そういえば忠史くんはどうなの?」


 忠史が顔を上げる。


「彼女とかいるの?」


 忠史は少し慌てて手を振る。


「あ、いえ、全然……」


 少し笑う。


「欲しくないわけじゃないんですけど……まあ、特に焦ってもいないというか」


 富美代が優しく言った。


「そうよね。大学生なんだから」


 コップにお茶を注ぎながら続ける。


「出会いもたくさんあるでしょうし、いろんな人と出会っていろんな経験ができる時期よね」


 仁も同意する。


「そうそう。社会人になると意外と世界が狭くなるから」


 少し冗談っぽく言う。


「学生のうちに楽しんでおくのがいいよ」


 忠史は少し照れながら笑った。


「はい」


 そう言いながらピザをもう一口食べる。

 さっきまで重かった空気が少し柔らいでいた。


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