(5-22)道の駅1
窓の外の景色が少しずつ流れていく。
忠史は助手席からナビを眺めながら、ふと口を開いた。
「そういえばオレ……岡山県民だけど真庭って行ったことないかも」
「そうなの?」
美樹が笑う。
「県北って意外と行かないもんね」
「うん」
忠史もうなずく。
「真庭市って岡山でも北の方というか上の方だよね。鳥取との県境……蒜山高原くらいしか知らない」
浩子はハンドルを握ったまま笑った。
「そうそう。蒜山までは行かないんだけどね」
ナビをちらりと見る。
「市街地を抜けて、そこから山の方へずっと入っていくみたい」
そう言ったものの、その声には少しだけ不安が混じっていた。
初めて訪れる土地。
しかも、ただ山を見に行くだけではない。
黒い玉が導く場所。
それがどんなところなのか浩子にも想像がつかなかった。
車は県北へ向かって順調に進み、一時間ほど走った頃だった。
「あ、道の駅! 入るね」
浩子はそのまま駐車場へ車を入れる。
「ちょっとトイレ休憩させて」
車を降りながら笑う。
「せっかくだし、お昼もここで食べちゃおうか」
一時期、年末年始に営業している店が増えたけれど、最近は元に戻って元日に休業する店も少なくない。この先、山へ入れば食事ができる場所があるとは限らない。
「賛成!」
美樹が真っ先に返事をした。
樹も嬉しそうに飛び跳ねる。
「おなかすいた!」
道の駅は思った以上に賑わっていた。
家族連れやツーリング途中らしい人たちが行き交い、売店には地元産の野菜や山菜、加工品、お土産が所狭しと並んでいる。正月らしい活気が漂っていた。
「見て見て」
美樹が売店を指差す。
「蒜山やきそば!」
「こっちはジャージー牛乳のソフトクリームだって」
「え? この寒いのにアイス?」
忠史が笑う。
「寒い時に食べるアイスがおいしいんじゃん」
「若いねぇ」
浩子が笑った。
施設の一角には自由に使えるフリースペースがあり、そこで食事ができるようになっていた。
忠史は温かい山菜そば。
浩子も同じくそば。
美樹は蒜山やきそば。
樹は「ぼくもやきそば!」と嬉しそうに頬張っていた。
湯気の立つ料理に体が温まる。
自然と会話も弾んだ。
「そういえば、いっちゃんって何年生なの?」
美樹が樹を見る。
「二年生」
元気よく答える。
「学校は楽しい? お友達はいる?」
浩子も興味津々だった。
山奥の村で暮らす子ども。どんな学校へ通っているのか二人には想像もつかなかった。




